ちょぴん先生の数学部屋

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平成の東大理系数学 -1992年-

このシリーズでは、平成の東大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。

東大の数学の問題は、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。

(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )

 

28回目の今回は、1992年の問題です。

第1問

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対数関数に囲まれた面積と、その中を折れ線で繋いでできる四角形の面積の比較をする問題です。

 

(1)は、とりあえずS1とS2をaとbの式で書いてしまいましょう。そして、S1-S2をbで微分して最小化しましょう。

 

(2)は、式はごちゃごちゃしてますが、分子分母をalogaで割ってしまえば簡単に計算できます。

最終的に極限をとるとS1=S2になるということですね。。。

 

<筆者の解答>

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第2問

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辺の上に格子点が乗った三角形の性質に関する問題です。

 

頂点が格子点になっているあらゆる三角形は、平行移動することで頂点の一つを原点に持っていくことができますので、本問ではAをOとしても一般性を失いません。

 

さて、三角形の一辺が格子点を通るためには、辺の傾きが有理数a/b(aとbは互いに素な整数)になっていないといけなくて、原点の次にやってくる格子点は、このとき(b,a)となります。

 

よって、辺上の格子点が奇数個になるときBの座標はmを整数として、(2mb, 2ma)と書くことができ、このとき両端を除いて2m-1個の格子点が辺上にあります。

 

(1)(2)ともにこの事実を使うことで証明できます。

 

<筆者の解答>

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第3問

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同一球面上にある4点が作る四面体の内接球半径についての不等式評価の問題です。

 

まずP, Q, R, Sが同一球面上にあることから、aとbの間の関係式が出ます。

 

次に、四面体の体積と表面積から、内接球の半径rがaとbの式で書けます。

 

このあと、不等式評価をするのですが、カギになるのはabの取りうる値です。先にa^2+b^2=3という関係式を出しているので、これを使ってabの範囲を出しましょう。

 

色々方法はあります。円と双曲線が接する条件でも行けますし、a=√3cosθ, b=√3sinθとパラメータ表示して求める方法もあります。

 

最後に、相加相乗平均の関係も使用します。

 

<筆者の解答>

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第4問

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円柱に横から穴を空けたときの展開図を考える問題です。

「展開図!?」とビビること必至の問題ですね。。展開図を作図させる問題は他に例がないと思います。当然新種の出題なので、難問となります。

 

とりあえず、円柱の切り取り線を調べたいわけですから、平面z=tで切って断面を調べてみましょう。zを選ぶ理由は、x軸平行な円柱Aとy軸平行な楕円柱B(Bの底面は、実は楕円になっています)の両方を一度に考察できるからです。

 

これで断面となる4つの点のパラメータ表示は

x=(√3t±√(1-t^2) )/2, y=±√(1-t^2) , z=t と求まるわけですが、ここからどうするか?

 

ここで、x軸で切った断面を考えるんですよ。

今回はx軸平行の直線で切って展開図を作るので、x断面の円弧が展開図の横軸になります。よって、展開図はθx平面になります。

 

tとθの関係はt=sinθ (0<θ<2π) となるので、xの式に代入すると、

x= sin (θ+π/6), x= sin (θ-π/6) という2本の曲線ができます。これこそが、展開図の形状そのものとなります。

 

<筆者の解答>

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第5問

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曲線上を動く点が特定の速度の条件をみたすときに、点の座標と時刻の関係を調べる問題です。

 

(1)は誘導に従って、Pの速さをxの式で表現すると、xとtの微分方程式ができるのでそれを解きます。t=0のときx=1が初期条件です。

 

(2)は (1)での考察から、1 : f'(x) = 8 :15 となるので、これを満たすxが求まり、(1)の式からtが芋づる式に求まる格好です。※問題文の曲線をy= f(x)としています。

 

<筆者の解答>

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第6問

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いわゆるじゃんけんグリコという遊びを題材にした確率の問題です。

(グーで勝てば「グリコ」と言いながら3歩進む、チョキで勝てば「チョコレート」と言いながら5歩進む、パーで勝てば「パイナップル」と言いながら6歩進む、アレです。チョキの時に6歩進む流儀もあるみたいですが。。)

 

じゃんけんグリコの歩数でAが勝つために、じゃんけんの手をどのように出せばよいかを考える問題です。

Aがグーを出す確率をp, チョキを出す確率をq、パーを出す確率をrとします。

 

とりあえず歩数の差の期待値を出したいので、Aがグーチョキパーそれぞれで勝つ/負ける確率を列挙すればよいでしょう。

 

p+q+r=1となるので、rを消去してしたうえで0<p<1, 0<q<1, 0<p+q<1のすべてを満たす必要があります。

 

(1)の時は、上の条件の下でEを最大化するので、「領域と直線の交わり」を考える線形計画法です。

 

(2)については、a+b+c=1よりcを消去してあげると、

E= 〇+△*a +□*b と書けます。〇、△、□は、すべてpとqの式です。

 

ここですべてのa,bでE>0となるので、a=b=0のとき、a=1,b=0のとき、a=0,b=1のときすべてでE>0となっていないといけません。

つまり、〇>0, 〇+△>0, 〇+□>0 です。

 

図を描くと分かりますが、これらをすべて満たすp,qは一組しかありません。逆に、この1組を代入すれば、E=0となって条件を満たします。よって、このp,qの組が必要十分条件です。

 

答えに関するコメントですが、(1)(2)いずれの場合も、一番歩数の稼げるパーよりも、少し劣っていてもチョキを多めに出したほうが有利になるという結果になっているのが興味深いですね。

 

要は、パーは勝てば6歩リードになり負ければ5歩ビハインドになるハイリスクハイリターンな1手なのに対し、チョキは勝てば5歩リードし、負けても3歩しかビハインドにならないので、全体を通してみると安牌な1手なのかもしれませんね。

 

<筆者の解答>

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