ちょぴん先生の数学部屋

数学の楽しさを、現役メーカーエンジニアが伝授するぞ!

平成の東大理系数学 -1993年-

このシリーズでは、平成の東大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。

東大の数学の問題は、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。

(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )

 

27回目の今回は、1993年の問題です。

第1問

f:id:stchopin:20210902085345p:plain



等面四面体の体積の極限を考える問題です。

 

等面四面体が、直方体から合同な三角錐を4つ切り取ることでできる立体、という事実を知っていると非常に楽ですが、知らないと、△ABCの面積を出す+Dと△ABCとの距離を出す、、とかなり大変な計算になります。

 

上記を知っていれば、直方体の各辺を求める、4つの合同な三角錐の体積を出す、という流れで解くことができます。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200417123528p:plain

 

第2問

f:id:stchopin:20210902085404p:plain



漸化式で与えられた数列が偶数、10の倍数になる必要十分条件を考える問題です。

 

(1)は、まず「nが3の倍数⇒anは偶数」の証明を行うとよいでしょう。漸化式を使った帰納法で容易に示せます。逆の「anが偶数⇒nは3の倍数」は、「nが3で割り切れない⇒anは奇数」と同じ意味なので、こちらを証明するのが楽だと思います。

 

(2)は、「(1)と同様の形式で」という文言の意味がよく分からなかったので、普通に、anが10の倍数となるnの必要十分条件を求めることにします・

 

まず、(1)よりnは最低限3の倍数になっていないといけません。ということで、漸化式を何度も使って、nが3の倍数になる項a3k だけを使った漸化式を作ってみましょう。a3k =bkと置きなおして、bkが5で割り切れる条件を求めてあげれば十分です。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200417123609p:plain

f:id:stchopin:20200417123631p:plain

 

第3問

f:id:stchopin:20210902085423p:plain



直線がl,mに引っかかってしまう場合を考慮したときに、PとQから等距離になるRの軌跡を求める問題です。これは10年に一度レベルの超ド級の難問です。(筆者自身解き切るのに2時間以上かかっています。。)

 

まず、lとmがいない理想的な環境を考えてみると、Rは、PとQの垂直2等分線を描くはずです。実際、Rがlやmから十分遠ければ、それが実現します。Rがl,mに近づいてくると、l,mの影響を受けて軌跡が歪んでしまうわけです。

 

というわけで、どの部分からl,mの影響を受け始めるかを考えるのが第1歩です。

l,mの影響を受け始めてから、この問題が牙をむき始めます。。。

 

まず、lとmのどちらから影響を受けて折れ線になってしまうのかを考えないといけませんが、図形的な考察から、片方しか折れ線にならない状況は題意を満たさないことが分かりますので、以降はd(P,R)とd(Q, R)の両方が折れ線になるとして進めます。

 

次は、例えばd(P,R)がlの上端の点と下端の点のどちらを経由すると最小になるのかを考えないといけません。

 

などなど考える要素が多すぎるため、非常に難しいです。。。これ本番で解けた受験生がいたのか不思議でしょうがないですね。。見るからに地雷臭がするので敬遠して白紙で出した人がほとんどだったかと。。。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200417123659p:plain

f:id:stchopin:20200417123733p:plain

f:id:stchopin:20200417123756p:plain

 

第4問

f:id:stchopin:20210902085446p:plain



積分の最小値を考える問題です。こちらは打って変わって易しい問題です。

 

この積分は、計算するとpとqの2次式になるので、平方完成で最小値が求まります。

注意すべき点は、nの偶奇によって計算結果が変わる点ですね。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200417123825p:plain

 

第5問

f:id:stchopin:20210902085505p:plain



文字列の伝言ゲームを題材にした確率の問題です。

 

設定から確率漸化式で進めるのが適切ですが、5文字の並び32通りそれぞれの確率をだそうとするのは大変です。

 

この問題は、各文字は全部独立に決まっているので、文字ごとに確率を置いてしまうとよいでしょう。最後にそれらを掛け算すればいいので。

 

あとは、よくある確率漸化式の問題となります。

 

ここで、最終的な結果(無限回書き写したときに、文字列が最初のものと一致する確率)は、(p^3*q^2)/(p+q)^5となりますが、p=qとすると、pとqの値によらず1/32になります。いくら注意深くてほとんど誤植をしない人(p=q=0.1%とか)であってもです。

 

どんなに注意しても最初と最後が一致する確率は1/32 = 3%ちょっと。いかに伝言ゲームというのがあてにならないかがよくわかりますね笑

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200417123854p:plain

 

第6問

f:id:stchopin:20210902085543p:plain



パラメータ表示された点の軌跡と速度を考える問題です。

 

(1)は、誘導通りにxとyをtで微分して速度ベクトルを出しましょう。「速さ」の方は、計算すると、最終的にcostの3次関数を考える問題に帰着します。

 

(2)は、四の五の言う前にPの軌跡を描いてしまえば一目瞭然なので、軌跡の形を求めましょう。注目すべきtの値が多くて大所帯の増減表になりますが、最終的に、Pの軌跡は、右側が頭、左側が尾ひれになる魚(クジラ?魚雷?)のような形になります。

 

ということで、Pが一周すると、尾びれの付け根の部分を3回通過します。t=π/2, π, 3π/2のときです。それぞれの速度ベクトルは、(1)に代入して図示すればよいです。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200417123924p:plain