このシリーズでは、平成の東大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。
東大の数学の問題は、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。
(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )
いよいよ最終回、1989年の問題です。
第1問
三次関数とその逆関数との交点についての問題です。
考えることとしては、2つを連立することですが、例えばy= の式に、もう一方のx=の式を代入してみると、yの9次式になって処理が幾分か大変になります。
ここで、2つの式を足したり引いたりすると、3次式が維持されたまま共通因数がバッサバッサと消せるのでだいぶ楽になります。
これでα+βとαβの値がそれぞれkの式で書けるので、αとβが正の実数になる条件を求めましょう。
<筆者の解答>
第2問
放物線と円の絡んだ面積の問題です。
最初に、「準線」とか「焦点」という言葉に馴染みのない人のために説明しておきましょう。放物線はそもそも、「とある点からの距離と、とある直線からの距離とが等しい点の描く軌跡」と定義されます。ここに出てくる「とある点」のことを「焦点」、「とある直線」のことを「準線」と呼びます。
この定義に基づいて、放物線の式をまず求めましょう。あとは、問題文に従って色々計算していくと、T(a)とS(a)が計算できます。
ただし、S(a)については、扇形の面積なので、頂角θを新しく定義しないといけません。
θは、(高校範囲では)cos,sinの形でないとaでうまく描けないので、逆にaをθで表現してTもSもθの式で書くとよいです。
a→∞の時にθ→0になるので、極限が計算できます。使うのは、sinθ/θ→1です。
<筆者の解答>
第3問
複素数にfを次々に作用させる状況を考える問題です。
(1)は、z=x-1+iy (y>0) と置いて式変形すれば簡単に分かります。
(2)は、(1)より、fn(z)はすべてHに含まれるので、w=f5(z)と置いてしまえば、実質、
f5(w)=wが恒等式になるqの条件を求める問題になります。
f5(w)を頑張って計算しましょう。。。そして係数比較です。
<筆者の解答>
第4問
分数で書かれた巨大な数の整数部分を考える問題です。
まずは与式を整数部分と小数部分に分けたいです。分子と分母を観察すると、m=10^10と置いてみると、m^21 + 3^21 は因数分解することで、m+3で割り切れることが分かります。
よって、分子に無理やり3^21を足すことで、整数部分を作ることができます。分母が残った部分は、分子と分母を比較することで、-2より大きく-1より小さいことが分かりますので、
考えるべき整数部分は、(m^21 + 3^21)/ (m+3) -2 だと分かります。
桁数については、これが10^200から、100桁以下の数を引き算しているので200桁とわかり、
一の位はmod10を考えることで計算できます。
<筆者の解答>
第5問
曲線をy軸回転させた立体の体積を計算する問題です。
y=f(x)のグラフは、極大値を1つだけ持つ山型の関数になりますので、y軸回転を考えるときは、極大になる点を境に2つに分ける必要があります。
置換積分、部分積分を使っていくと、問題文の積分の形が証明できます。
これは、「バウムクーヘン積分」と呼ばれる形で、本問のように端点で値が0になる山形の関数であれば、どんな関数に対しても一般的に成立します。
この積分の残りの計算は、X=πx^2と置換するとうまくいきます。
<筆者の解答>
第6問
2色の玉で数珠を作る時の白玉が連続する個数について考察する確率の問題です。
(筆者注:不等式は、右辺については等号を含みません。。。)
まず数珠を作るということで回転対称性があるので、赤玉1個を固定してしまいましょう。あとは、赤2個白n個を一直線に並べる問題に帰着できます。
基本は白がたくさん並ぶのですが、途中に赤玉2個が割り込むことになるので、白の列が、「分割されない」「2分割される」「3分割される」の3つの場合に分かれます。
最後の方にしれっと書いてある不等式によって、「分割されない」「2分割される」の2つは、白が必ずk+1個以上並ぶので不適だと分かります。
よって、「3分割される」場合だけ考えればよいです。
白n個が、a個、b個、c個の三つに分割された時の、a,b,cの組み合わせを数えます。
満たすべき条件は、3つともが1以上k以下、そしてa+b+c=nです。
aとbが決まればcは自動的に決まるので、cを消してab平面に書き、条件を満たすエリアの格子点を数えましょう。
これができれば、この(a,b,c)の組数を、「赤2個白n個を並べる場合の数」で割り算すれば、確率が求まります。
<筆者の解答>