ちょぴん先生の数学部屋

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平成の東大理系数学 -1990年-

このシリーズでは、平成の東大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。

東大の数学の問題は、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。

(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )

 

30回目の今回は、1990年の問題です。

第1問

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ルートの逆数の級数の極限を求める問題です。

この年のセットで一番易しい問題で、逆に言えば、この問題以外は解き切るのが難しいです。。平成のセットではラスボス級の最凶セットです笑。

 

まず、この形を見て思い出したいのが、調和級数が発散することの証明方法ですね。Σ1/√kを積分を使って上下ではさむのでした。

 

anは、これを使うと、2(√(n+1) -1) <an< 2√n -1 が言えるので、anは発散します。

というか、Σn^(-a)は、aが1以下であれば発散し、aが1より大きければ収束します。

 

bnについても同様の不等式を使ってbn/anを上下ではさめば、はさみうちの定理が使えます。

 

<筆者の解答>

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第2問

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3次のチェビシェフ多項式の性質を調べる問題です。

(2)はそもそも発想が難しく、(1)は一見簡単そうに見えて、とんでもない計算量を要求される地雷問題となっています。

 

(1)は、条件(ⅰ)の処理は容易く、この時点で文字を2文字にできます。ところが、条件(ⅱ)の処理が、鬼畜なことになります。

 

条件(ⅱ)は、前提条件としてh'(x)=0が、-1<x<1に2つの実数解を持たないといけませんので、判別式・軸・端点に注目してその条件式を一通り揃えないといけません。

 

そのうえで、h'(x)=0の2解をα、βとしたときに、h(α)=1,h(β)=-1を考えないといけません。

解と係数の関係を使うとαとβの対称式ができるので、h(α)=1,h(β)=-1のほうも

h(α)+h(β) = 0 , h(α)*h(β)=-1 のように対称式にして、少しでも負担を減らしましょう。

 

また、h(α)を直接計算するのが大変なので、h'(α)=0を使って次数下げを行い負担を減らします。

 

これでもなお、係数の組の候補が複数出てきて、逐一、-1<x<1に2つの実数解を持つ条件に当てはまるかをチェックしないといけません。

 

とにかく計算量がとんでもないので本番では(1)をやりきって力尽きてしまうと思います。

 

最終的な答え、h(x) =4x^3-3xは、見覚えのある形をしています。これは、cosの3倍角の公式そのもので、「チェビシェフ多項式」と呼ばれています。

 

(2)は、そんなチェビシェフ多項式の応用例の証明です。

要は、「-1<x<1において、n次のチェビシェフ多項式より動きが大人しいn次関数は、|x|>1でも、チェビシェフ多項式より動きが大人しい」という事実を3次の場合で証明します。

 

h(x)のグラフを描いてみると、-1<x<1の中に極大値極小値がコンパクトに収まっている関数になっています。

 

そこに条件を満たすどんな3次関数を描いても、-1<x<1で3回交わることが分かります。3次関数同士が交わる回数は最高で3回なので、|x|が1以上のエリアでは交点を持たない、つまり|f(x)|と|h(x)|の上下関係は逆転しない、ということです。

|x|=1の時点で|f(x)|<|h(x)|なので、この上下関係が固定されます。

 

この交点の数に着目するという発想が難しいです。

 

<筆者の解答>

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第3問

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正八面体の断面に関する問題です。どっかでみたような(2008年の第3問)。

 

(1)は、どこまで書くかですが、断面が2種類の長さを持つ6角形になっていて、その2つの長さの和が一定になることを言えればよいと思います。

 

(2)は、とりあえず(1)で考えた断面を考えてみます(ダメかもしれませんが)。

この断面の縦幅と横幅を調べてみると、断面の位置によらず√3/2、1になることが分かります。図の形から、この断面をちょっとだけ斜めらせれば、縦横ともに1未満にでき、無事正方形の穴を通過できます。。

 

今回は、通過できるケースがあったのでよかったのですが、通過できるケースがない場合はあらゆる断面を考えないといけない事態となります。

初見ではどっちか分からないので、どっちで行かないといけないかが分からず難しいです。

 

<筆者の解答>

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第4問

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点列の作る三角形にまつわる面積の極限です。

 

(1)は、直接ごり押しで解くこともできますが、行列の形から、回転行列を連想してその形に書いておくのが、(2)を見据えると有効です。

 

(2) (1)の結果から、Mは、原点の周りに60°回転させ長さを半分にする効果を持つ表列だと分かります。

 

これを用いて、実際にP0, P1,P2,・・・と書いていくと、△PkPk+1Pk+2はすべて相似比1/2の相似な三角形であることがわかり、これらの和集合は、(答案の図を見てほしいのですが)新しくはみ出す三角形の面積Tkを、最初の三角形に次々に足すことで作られることが分かります。

 

T1をなんとか計算すると、Tkは初項がT1、公比が1/4の等比数列になるので、求める面積が収束することが分かります。

 

<筆者の解答>

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第5問

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円に外接し、楕円に内接する平行四辺形の存在条件を求める問題です。

 

まず、考えやすい円に外接する平行四辺形を考えると、これは図形的な性質により菱形になり、対角線が直交することが分かります。

 

この菱形の頂点の1つを楕円上にのっけたとき、残りの頂点が楕円上にあるか否かを調べてあげればよいです。

 

<筆者の解答>

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第6問

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サイコロの出た目によって小数を作り、それが特定の実数αより小さい確率の極限を考える問題です。非常に難しいです。

 

(1)は41/333 = 0.123123123123・・・・となるので、p1(α), p2(α),・・・を片っ端から書いていきます。

すると、3個おきに、pn+3 = 1/27 +pn/216 と書けることが分かるので、この漸化式を解けば求まります。

 

(2)は、正直私自身、自信がありません。

 

αが0.1・・のときはpはほぼ0で、αが0.6・・・のときはpはほぼ1になるので、pが1/2になるのは、αがちょうど中間ぐらいの0.3とか0.4近辺にありそうだと目星をつけて、ここ周辺を調べます。

 

境目が0.3666・・と0.4111・・になることは何となくわかるのですが、その証明がふわっとしていますし、この間で極限が1/2から外れる場合の有無も言えていないので、完璧な論証からは程遠いです。。。すみません。

 

<筆者の解答>

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