ちょぴん先生の数学部屋

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平成の東工大数学 2005年

理系数学の最難関の一角、東京工業大学の2005年の問題を取り上げます。

第1問

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積分値の漸化式、および不等式証明の問題です。

 

(1) logxがあるので、1=(x)'を無理やり作って部分積分を実行します。

 

(2) 1≦x≦eでは、logx≧0なので、(logx)^n≧0です。よって、an≧0はすぐに分かります。

ここでan=0となるのは(logx)^nが恒久的に0になる場合だけですが、それは起こりえません。以上からan>0と分かるわけです。an>an+1については、(1)の漸化式を使えばすぐに分かります。

 

(3)これは発想力が必要な問題です。偶数番目だけ気にしているので、anとan-2の漸化式を作りたくなります。しかし、(1)でan-1を消してもきれいな漸化式にならないので先に進まなさそうです。かといって、与式を帰納法で示そうと思ってもうまくいきません。

詰んだ・・となってしまいそうです。

ここで注目すべきは、与式が「不等式」なことです。ということは、anとan-2を単純な不等式で関係づけられれば、、、と考えるわけです。

このときに(2)の結果が役立ちます。(1)の結果でan-1をanに置き換えてあげると、定数項を含まない、anとan-2の単純な不等式を作ることができます。あとは、この関係を繰り返し使ったうえで、a2の値を計算すればお終いです。

 

<筆者の解答>

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第2問

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2次式、4次式の係数の期待値を計算する確率の問題です。

今、確率変数mの期待値をE(m)とします。

 

(1)解と係数の関係を使うと、s= -(α+β), t=αβと書けるので、s,tの値を全てリストアップして力づくでE(s), E(t)を計算しました。。

 

(2) a,b,c,dをs,tの式で書くと、a=2s, b=s^2+2t, c=2st, d=t^2 と求まります。

ここから、E(a) = 2E(s), E(b)= E(s^2) +2E(t), E(c)=2E(st), E(d) = E(t^2)となるので、

実質E(s^2), E(t^2), E(st)を計算する問題に帰着します。

効率的な計算方法を思いつかなかったので、これらも力づくで計算しました。。 電卓必須ですね()。

 

もっと効率的な計算方法があれば、コメントください。

 

[追記]

力づくでやらずとも、Σ計算を行えばはるかに楽なことが分かったので、答案を追記します。

 

<筆者の解答>

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追記:別解

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第3問

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円盤の通過領域の体積を計算する問題です。

 

条件(a)(b)を満たす円盤Dを図に描いてあげると、通過領域のイメージがわいてきます。Dの法線ベクトルがy方向なので、通過領域をy軸に垂直な平面で切った断面を考えるとよいです。平面y=tで切った時の断面積を考えましょう。ただ、この断面積は(※高校範囲では)tだけの式では書けないので、角度θを補助的に準備する必要があります。

 

あとは、断面積をtで積分すればよく、θの積分に変換して計算しましょう。

 

※大学数学まで広げれば、sinやcosの逆関数arcsin, arccosを使ってtだけの式で書くことができます。

 

<筆者の解答>

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第4問

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点の存在範囲と、それを使った線形計画法の問題です。

 

(1) x^2 + y^2 ≦1をx+yとxyの式に書き換えるのはすぐに思いつくと思います。しかし、それだけでは足りません。ちゃんとxとyが実数になる条件を満たさないといけません。すなわち(x-y)^2≧0を満たす必要があるのです。このことを見落としがちなので要注意です。

 

(2)いわゆる線形計画法の問題です。

k=xy+m(x+y) = ms+tと文字で置くと、この式がst平面での直線と見なせてkはそのt切片と見なせるわけです。よって、この直線と(1)の領域が交わりを持つようなkの条件を求める問題に帰着します。

 

kが最大になるのは、mの値によらず直線が(√2, 1/2)を通るときなのですが、kが最小になるタイミングはmの値による場合分けが発生します。

 

mの値が十分小さい(直線が寝ている)ときは、(1)の領域の下側の境界線と接するときkは最小になり、mの値が十分大きい時(直線が立っている)ときは、直線が(-√2, 1/2)を通るときkは最小になります。

(1)の図から、その境界になるmの値を求めましょう。

 

<筆者の解答>

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