皆さま、こんにちは。
去年に続いて緊急事態宣言下でのGWとなってしまい、ステイホームを行っている方が多いと思います。
そんな中、このブログでお馴染みの京大藤井教授が、こんな動画をyoutubeで投稿しています。
中身は、いかに今回の緊急事態宣言が無意味だったかを算数を使って解説するというものです。
既にご覧になってしまった方もいらっしゃるとは思いますが、結論から言いましょう。
この動画の内容は、デマです。絶対に信じてはいけません!!
なぜデマだと言えるのか?今回の記事ではそれについて解説していきます。
この動画の内容はツッコミどころ満載なのですが、全てを突っ込むと本筋から離れてしまうので、最も重要かつ深刻なデマに絞ってお話していきます。
一言で言うと、「収束」の定義が誤っている、という点です。
藤井氏の動画は、全てこの誤った「収束」の定義を前提に議論が進み、「緊急事態宣言は不要だった」という結論を導いていますので、その結論は正しくない、デマだと断定できる。と言う事になります。
以下、この「収束」の定義について迫っていきます。
1. 正しい「収束」の定義
疫学の世界では「新規感染者数が、継続的に減少していく」という意味で使われます。
例えば、次のグラフ1,2のような推移が、疫学的に「収束している」推移になります。
<グラフ1>
<グラフ2>
ここで、次のセクションの準備のために「増加率」という概念を導入します。具体的には、
増加率=(今日の新規感染者数)÷(前日の新規感染者数)で計算され、この値が、
・1より大きい→感染が増えている
・1より小さい→感染が減っている
となります。上記のグラフ1,2について、増加率のグラフを描かせると、下のようになります。
<グラフ1:増加率>
<グラフ2:増加率>
増加率に直すと、新規感染者が単調に減少に減少しているグラフ1は「単調増加」に、ピークアウトを描くグラフ2は、「上がって下がり又上がる」という振る舞いになり、元の感染者数のグラフとは全く異なる形になります。
ですが、左のグラフが減少しているとき、右のグラフは必ず1未満になっています。
よって、増加率を使って収束しているか否かを見ようと思ったら、「増加率が継続的に1未満になっているか否か」で判定することになります。増加率の増減は関係ありません。
以上が、正しい「収束」の定義となります。
2. 藤井式「収束」の定義
次に、冒頭の動画の中で藤井氏が説明している「収束」の定義に触れます。(※この定義は間違っています)
手っ取り早く、藤井氏の動画の画像をそのままキャプって載せます。
藤井氏の説明を噛み砕いて説明すると
・新規感染者数は、指数関数的に増えていくはずのものである
→実績値は、指数関数で想定されている値より小さい(=指数関数的増大でない)
→だから「収束している」
→これを見るには、「増加率の増減を見ればよい」
というもの。
つまり、藤井氏に言わせれば、「収束」とは「増加の仕方が指数関数的でなく、感染者の増加率が減少に転じて減少し続けること」という定義のようなのです。
明らかに、上述の正しい定義と大きく食い違っていますね。
3. 藤井式「収束」の問題点
藤井氏の定義は、大きく以下の2つになります。
①新規感染者数の増加率が、減少に転じること
②新規感染者数の増加が、指数関数的でなくなること
それぞれが、如何におかしなことを言っているのかを解説します。
①新規感染者数の増加率が、減少に転じること
これは、上のセッションで登場した増加率のグラフを見れば明らかだと思います。
<グラフ1>
例えばグラフ1では、藤井氏の定義だと増加率が増加し続けているので「収束していない」という判定になりますが、実際の新規感染者数は「0に向かって継続して減少し続けて」いますので、正しい定義では「収束」しています。
<グラフ2>
グラフ2では、増加率が横軸40の所で減少に転じているので、藤井氏の定義では「収束している」ことになりますが、左の新規感染者のグラフでは、横軸40の所では依然として急峻に増加しています。つまり正しい定義では「収束していない」のです。
さらに決定的なグラフをお見せしましょう。
<グラフ3>
グラフ3は、新規感染者がほぼ直線状に増加していて、とてもではありませんが正しい定義において「収束している」とは言えませんね。ところが、増加率の方を見ると「常に減少しています」ので、藤井氏の定義では「収束している」ことになってしまうのです。
そしてよく見ると、増加率は減少しつつも「1を下回っていない」ことに気が付きます。
以上から分かることは、増加率の増減では、実際の新規感染者の増減をみることは出来ず、増加率が1より大きいか小さいかが決定的に重要だと言う事です。その意味で、藤井氏の定義は、感染者数の推移を正しく追えていないのです。
②新規感染者数の増加が、指数関数的でなくなること
もしこの定義が正しいなら、2次関数や3次関数で増加していたとしても「収束した」と言えることになってしまいます。
しかも、指数関数の中でも、「何倍ずつ増えていくか=公比」によって増え方が大きく変わるわけで、どの公比を使った指数関数を比較対象にするかによって収束判定が変わってしまうことになります。
図にまとめるとこんなイメージです。
赤と黄色が指数関数、緑と黄色が多項式関数になります。
もし、藤井氏が基準とする指数関数が赤(公比2)の場合、残りのグラフは全て「収束」していることになりますが、基準とする指数関数が黄色(公比1.5)の場合、緑は「収束している」けど、青は「収束してない」ことになります。
これは、基準とする指数関数の公比を恣意的に変えることによって、収束判定を操作できることを意味します。そして、藤井氏の見せている指数関数グラフの公比は明示されていませんし、なぜその値を採用しているのかもはっきりしません。
ここまで説明すれば、いかに藤井氏の「収束」の定義がメチャクチャかが理解できるはずです。
この説明を本物の専門家に見せれば「何コイツはバカな事を言ってんだ?」と一蹴されるでしょうし、専門家でなくとも、指数関数の知識があれば藤井氏の説明の違和感にはすぐに気が付けると思います。
明らかに、緊急事態宣言は無意味だという自説を納得させるために、数学に疎い文系の方を騙そうとしているとしか考えられないのです。
もし、この動画の内容を鵜呑みにして信じてしまえば、その人は自粛行動を緩和していく可能性が高く、その結果として感染の拡大は止まらず医療崩壊が加速、経済にも致命的なダメージを与えることに繋がる大惨事を引き起こしかねません。
これは、社会に対して大変害になる内容だと思いました。
以上の理由から、私はyoutubeに通報致しました。ご賛同いただける読者の方も是非、通報を行ってください。
あまりに酷いデマだらけの内容だったので、youtubeにその動画を通報させていただきました。 https://t.co/0X1iFjFX8w pic.twitter.com/rw63Ryb0yo
— チョピン (@chopin1989) 2021年4月29日
繰り返しになりますが、
この動画の内容は、デマです。絶対に信じてはいけません!!
一刻も早く収束させるため、ステイホームをみんなで頑張っていきましょう!!
[5/13追記]
藤井氏の主張がデマであることが実証されました。
藤井氏は上記の動画内で、「大阪は4/26には既にピークアウトした」と主張しておりました。
が、実際の推移がどうなったか。
下の東洋経済のデータをご覧ください。
青で囲った部分が、藤井氏のグラフの後に続く部分です。
実際には1週間程度下げ止まりが続き、5月に入ってからようやく減少傾向に転じています。
模式図で書くと、藤井氏のピークアウト予想はこんなにもお粗末な代物だったのです。
少しでも減少傾向になったからと言って「ピークアウトした」と即断即決してはいけないのです。
にも拘らず、当の藤井氏はこの反応です。
かねてから大阪のピークアウトはご説明さし上げて参りましたこの度ようやく尾身さんも一応、認められたようです。
— 藤井聡 (@SF_SatoshiFujii) 2021年5月13日
これはつまり重症者、死者数のピークアウトも進む事を示しています。政府・行政には、こうした事実を踏まえた対策検討を進めていただきたいと思います。https://t.co/1MQKJMDSe0
よくもまぁ、予測を外しておいてここまでドヤれますよね~と。
このツイートでは、「藤井氏がいつピークアウトすると予想していたか」が巧妙に伏せられており、いわゆるゴールポストずらしを行っています。
(※言及されている尾身先生は、5/12時点での情報を以て「一応はピークアウトするほうにいっている」と述べられており、「ピークアウトした」とすら言っていないことに注意。)
何かしら対策を打てば「いつかは必ずピークアウトする」のですから、ほとんどこれは詐欺的と言っていいツイートです。
皆さん、こんな誤魔化しをする学者が、冒頭の動画でしたり顔で解説されていたんですよ?これでもまだ信じますか?