ちょぴん先生の数学部屋

数学の楽しさを、現役メーカーエンジニアが伝授するぞ!

平成の東大理系後期数学 -2000年-

このシリーズでは、東京大学の後期の数学の問題を解いていきます。

 

8回目の今回は2000年です。

 

第1問

 

多項式に関する証明問題です。

 

(1) P1(x)=ax+b, P2(x)=ax^2+bx+cとして、(C)を満たすように係数を決めていきます。この時点で、Pk(x)はn^kのΣ公式と同じ形になることが分かりますね。

 

(2) Pk(x)=Σai×x^iと係数を決めて(C)の条件に代入して、係数比較をしてあげると、aiたちが芋づる式に全部決まっていくことが分かります。

 

(3) 条件からQk(x) =[x(x-1)・・・(x-k+1)]/k!と書けることが分かります。

(2)と同じように、Pk(x)=ΣcjQj(x)と置いたときにcjたちが芋づる式に求まることを言えばよいのですが、今回は係数比較ではなく、xに1,2,3・・・と整数値を代入した式からそれが言えます。

 

<筆者の解答>

 

第2問

 

回転体の体積の極限を計算する問題です。

 

(1)Vnは定石どおりに積分の形で書けますが、積分を最後まで解き切ってVnを直接nの式で書き下すのは事実上不可能です。なので、積分を計算するための式変形を途中で切り上げて、はさみうちの定理を使用することを考えます。

 

変形を続けていくとVnは、nによらない定数+「t^2l×costの0~4nπでの積分÷n^(2l+1)」の形になるので、後者が0になりそうだなとアタリをつけて、はさみうちの定理を使ってこれが0に収束することを示していきます。

 

上記の積分を不等式評価をしていく手掛かりは三角関数の部分で、0≦|cost|≦1という評価をすれば積分の中身をただのt^2lにできます。

 

ところが、直でこの評価をして積分を計算をしてしまうと、n^(2l+1)が出てきて、分母のn^(2l+1)と相殺されて0に収束しない定数になってしまいます。これははさみうちを使うには不都合な形です。

なので、一度部分積分することで、tの指数を1個下げて2l-1にする必要があります。こうすれば、分母にnが生き残って無事0に収束する形にできます。

 

(2) (1)に比べても難易度が格段に上がっています。

そもそもf(x)=x^l×sin(nx)のグラフはx軸をまたいでうねうねと波打つ曲線になっているので、y軸回転の回転体の体積を計算しようと思ったら「グラフの上下」「グラフの増加部分と減少部分」できちんと場合分けしないといけないわけです。

 

k個目の山を回転してできる立体の体積をvkとして、vkを合計したものがWnとなります。なので、上記の場合分けに注意しつつvkを計算することが第1歩になります。

 

最終的には、vk= 第1項(kのl+1次式÷n^(l+2) )+第2項 (θ^l×cosθの(k-1)π~kπの積分÷n^(l+2) )

の形にできます。(第2項の積分は、(1)と同じ理由で、分母の指数よりも2つ少なくしています)

 

こうして合計したWkの極限は、第1項については区分求積法で有限値に収束し、第2項は(1)と同じようなはさみうちの定理で0に収束すると分かります。

 

<筆者の解答>

 

第3問

 

確率・期待値の問題です。

 

(1)一巡して7枚置かれるとき、1枚置いた人が3人、2枚置いた人が2人いることが分かるので、配分の仕方を含めて確率計算をします。最大値は微分で求めればOKです。

 

(2) 一見すると(1)と同じ意味じゃないかと誤解しがちですが、違いがあります。

 

事前に6枚置かれていれば、5番の人が何枚置こうが必ず彼は「7枚目のコイン」を置くことになります。つまり、(1)とは違って一巡した後に「8枚置かれている」場合があるのです。

 

この点にさえ気を付ければ、(1)と同様に確率計算できます。Rを最大にするpの値が複雑なので、Rの最大値そのものは要求されていませんね。

 

(3)一巡目と二巡目の両方で1枚ずつ置く人、一巡目で1枚二巡目で2枚置く人、一巡目で2枚二巡目で1枚置く人の三パターンがあるので、その内訳に応じて確率を計算して、定義通りに期待値を計算していくことになります。

 

期待値Eは2つのΣを使った式で書けるのですが、公式として綺麗に計算することが残念ながら出来なさそうです。しかしここで諦めるのはもったいない。高々5通り程度の計算しかないのですから、綺麗に解けなければ力ずくで解けばいいのです。ということで、私はΣの中身を力ずくで計算しました。

 

すると驚くほど綺麗ですっきりした最終結果が得られます。

かなり規則的でもあったので、たぶんシグマの段階で綺麗に計算できたんだと思いますね・・・

 

<筆者の解答>