このシリーズでは、東京大学の後期の数学の問題を解いていきます。
7回目の今回は2001年です。
第1問
数列の下限を調べる問題です。
左辺の数列をanとして差を計算してみると、anは単調減少することが分かります。ということはn→∞でのanの極限がどうなっているかアタリをつければよさそうです。
残念ながらanの極限は直接調べられないので、不等式評価ではさみうちの定理を使おう、という方針になります。
「調和級数が発散する」を示す問題と同じように、f(x)=x/√(x^2 -1)のΣを面積(積分)を使って挟むという方針で行きますが、面積評価の精度を若干上げておかないと、anの極限の「小数第1位=今回求めたいi」が決まりません。
精度を上げたければ、長方形を一部温存して積分する区間を短くするとうまくいきます。
<筆者の解答>
第2問
連続量の確率に関する問題です。
普段の確率の問題は、「〇〇通り」といった形で離散的な量を使って計算しました。しかし確率は、この問題のような「連続量」に対しても定義できます。連続量に対する確率は、「長さの比」「面積の比」などで計算することができるわけです。今回の問題の場合は「面積の比」を調べます。
※問題文の「ただし」以下の文章は表現が分かりにくい上に、別段使わなくても問題は解けるので、無視してしまってよいです。
(1)(2)はそれぞれ独立した設問になっています。
(1) h×hの正方形を1つ持ってきて、Cの中心が常にこの内部にあると仮定します。そのとき、ちょうどCが2つの直線と交わるようなCの中心の存在範囲を調べて、その面積を正方形の面積で割ったものがpとなります。
ただhの値によって状況が変わるので、場合分けが必要になる点に注意です。
(2) Cの中心の存在範囲を、3つの円の中心を結んだ正三角形の中に限定してしまえば周期性が良くなります。
半径√2+1の円と半径1の円が交わる条件は、中心間距離が√2(=半径の差)以上2+√2(=半径の和)以下となります。
ここから、Cが3つの円と交点を持つような、Cの中心の存在範囲が図示できます。あとはこの面積を求めることに終始しますが、これが中々面倒です。
私は座標を設定することで、1辺の長さや角度の関係を調べていきましたが、他にもきっとうまく計算できる方法があるとは思います。
<筆者の解答>
第3問
極限の計算問題ですが、問題文が分かりにくい事この上ない上に、考え方も難しい難問です。
まず前提条件を確認しておきます。
今回は最終的にk→∞の極限を調べたいので、kは十分大きな数だと思って考えてしまいます。
その心は、f(x)は実際には下に凸な放物線なのですが、xが十分大きい所では単調増加かつ必ず正の値を取ります。なので、そういう前提で考えてしまうことにします。
ここに限らずですが、今回の問題はかなり大雑把な議論をしていきます。
さて、f(x)は整数係数なので、f(k)もf(k+1)も自然数になります。それぞれの値をM,Nとすると、P(x)はk≦x≦k+1の間で(1,0)をスタート地点にCをN-M周することが分かります。
今回の問題文の意味するところは、xを時間だとし、xがk→k+1の1秒間動くときに、「P(x)はIの上に、合計Tk秒間いる」ということになります。
ということで、弧Iの始点を(cosθ, sinθ) (-π<θ≦π)、終点を(cos(θ+L), sin(θ+L) )に固定したとき、P(x)がI上にいるxの範囲を調べるのが、今回の問題の大目標です。大きくIがスタート地点を跨ぐか否かで場合分けが発生します。
さて、そうなると、角度の条件は最終的にf(x)の不等式で求まりますが、それをxの不等式に焼き直さないといけなくなるわけです。
ここで、この問題の2個目の大雑把要素が登場します。
2次関数f(x)=ax^2+bx+cは、xが十分大きなところでは1次以下の項bx+cはほとんど2次の項ax^2に比べて無視できるようになってきます。
なので、思い切って「f(x)~ax^2と近似できる」としてしまうわけです。
こうなればf(x)の条件を直でxの条件に焼き直せ、かつM~ak^2、N~a(k+1)^2と近似できてしまうわけで、大分見通しの良い式になります。
こうしてTkの近似式が求まるので、あとはk→∞の極限を取ってL/2πとなることを確かめれば終了です。
このような近似操作は、大学以降の物理では頻繁に使うのですが、高校生にはあまりなじみがない感覚だと思いますね。
<筆者の解答>