このシリーズでは、平成の京大理系数学の後期入試の問題を1年ずつ遡って解いていきます。
3回目の今回は2004年になります。
第1問
極限計算の問題です。
積分の部分をanとします。
まずは、anを求めるのが先決なので、fの中身4nx(1-x)がどのときに1よりも大きくなるかを考えましょう。2次不等式を解く形になります。
これが求まれば積分計算を実行してan、ひいてはn*anを計算することができます。
ただ、n*anの式をよく見てみると∞×0の形の不定形になっていて、このままでは極限の計算が出来ません。
なので、ここは「分子の有理化」をして極限が計算できる形に変形しましょう。
<筆者の解答>
第2問
複素数の存在範囲を求める問題です。
α=x+iyとして、問題文の不等式を変形していくとtの2次不等式に帰着します。
この不等式が実数の範囲で解を持てば、問題文の条件を満たします。
そうなるようなx,yの条件を、判別式を使って調べていきましょう。
<筆者の解答>
第3問
抽象的な写像に関する問題です。一見すると取っ付きにくいですが、思いついてしまえば非常に簡単です。
(*)は2つの任意のベクトルに関する性質ですが、よく考えるとベクトルの数を3つに増やしても全く同じ性質が成り立つことが分かります。
つまりf(a+b+c)=f(a)+f(b)+f(c)です。
ここでa=b=c=x/3とすれば、題意があっという間に示せてしまいます。
同じような議論をすれば、任意の有理数qについてf(qx)=qf(x)が成り立つことが示せます。
余談ですが、(*)のような性質を「線形性」といいます。
<筆者の解答>
第4問
図形問題です。
まずは状況を絵に描いてみましょう。
棒の高さをhとすると、△OAXが直角二等辺三角形なのでOA=hとなります。
よって、△OBXは、底辺がh+1、高さがhの直角三角形になるので、tan44°=h/(h+1)とtan44°を使ってhが表せます。
さらにtan44°は加法定理を使えばtan45°=1とtan1°で表せるので、最終的にhはtan1°だけの式で表すことができます。そこに問題文にある不等式を当てはめればOKです。
なるべく計算の手間が減るように、tan1°を一か所に集める工夫をするとよいです。
<筆者の解答>
第5問
自然数の組の個数を数える問題です。
この手の問題は、最初にある文字を固定し別の文字の個数を数える⇒固定した文字の固定を外して和を計算する、というのが定石です。
この問題の場合は最初にaとdを固定すると考えやすいでしょう。
aとdを固定した状態で(2)(3)からbとcの個数を数えて足し上げ、次にaの固定を外して足し算、最後にdの固定を外して足し算、という感じで進めることになります。
<筆者の解答>
第6問
極限の計算問題で、趣旨としては円の面積を近似的に計算しようという問題になります。
「ある図形の中に1×1の正方形を何個敷き詰められたかが、その図形のおよその面積を表現できてる」というある意味原始的な考え方です。
ということで正方形の個数N(n)を不等式で評価して、はさみうちの定理を使って極限を求める、という方針で解きます。
まずは対称性から、考えるエリアを第1象限だけに絞って考えるとよいです。ここで考えた正方形の個数を4倍すればN(n)になりますので。
N(n)を直接数えるのは難しいので、x座標をk-1<x≦k (k=1,2,・・,n)の範囲に絞って上に積みあがっている正方形の個数を数えて、最後にkについて足し上げるという方針で行きます。
このエリアに何個正方形を積めるかは、右上の点に注目すればよいと思います。
右上が後一個余計に積むと円をはみ出してしまう、というポイントを考えることで不等式を作ることができます。
最後のはさみうちの定理を使う場面では、区分求積法を使うことになります。
この問題の最終結果は、「半径nが十分大きければ、円に入っている1×1の正方形の個数N(n)はおよそπn^2に等しい」ということを意味します。πn^2は言うまでもなく半径nの円の面積ですので、円の面積の公式がπr^2となることの、一つの裏付けになっていますね。
<筆者の解答>