ちょぴん先生の数学部屋

数学の楽しさを、現役メーカーエンジニアが伝授するぞ!

平成の京府医大数学 -2005年-

このシリーズでは、京都府立医科大学の数学の問題を解いていきます。

 

18回目の今回は2005年です。

(手書きでの問題文を提供して下さったせがわさん、ありがとうございます!)

第1問

複素数の和に関する問題です。

 

zk=cos(2kπ/N)+isin(2kπ/N)とすると、問題文の条件をクリアできる定義になります。

 

(1)ド・モアブルの定理を使うと、等比数列の和にできます。これについては公比が1かそうでないかで結果が変わってくるので、場合分けする必要があります。

 

(2)zk - zk-1を極形式の形に計算しておくと見通しが良いです。そのためには三角関数の和積の公式を利用するとよいでしょう。

 

すると、同様に等比数列の和に帰着できますので、公比が1か否かで場合分けして検討していきます。結果、pがNで割り切れないときは和が0で、pがNの倍数の時だけ和が0でない値となります。

 

極限については、前者は0になるのが自明なので実質後者だけ考えることになりますが、pを固定した状態でNだけ無限大に飛ばして考えることにしました。

(pがNの倍数なのだからpも無限大に飛びそうなものなのですが、あくまでpは定数という体で進めています。もしpも同時に無限大に飛ばすとするとかなり厄介な極限計算になりそうです。その意味で、ちょっと不親切な問題のような気もします)

 

(3) (2)よりかはシンプルな式になります。お馴染みのsinx/x→0の形の極限ですが、pの値による場合分けが実は発生します。ほとんどの場合0に収束する関数が、p=1のときだけ一定値になるためです。

 

p=1のときは、正∞角形=半径1の円の周長なので、納得の結果ですね。

 

<筆者の解答>

 

第2問

合成関数の増減に関する問題で、かなり面倒な難問です。

 

(1) F(γ)=g(γ)+3(γ-3)として、F(γ)の増減を調べていきます。F'(γ)の符号の確認が地味に面倒です。

 

(2)f'(x)を計算すると、「合成関数の微分」の知識からf'(x)=g( h(x) )×h'(x)となります。なので、g( h(x) )とh'(x)の両方の符号を調べる必要があります。後者については簡単ですが、問題は前者です。

 

いきなり、g( h(x) )の状態で調べるのは大変なので、g(γ)の符号を調べてから、γ=h(x)のグラフを使ってγの世界からxの世界へ翻訳してあげます。

 

あとは、h'(x)の符号と合わせてf(x)の増減を一つの表にまとめるとよいでしょう。

 

(3) (2)の増減表から、最大値と最小値の候補が分かります。

 

最大値については極大値すべてがG(3)で揃っているのでG(3)自体が最大値になり非常に簡単です。

 

最小値については、候補がG(0), G(8/3), G(10/3), G(6)の4つもあるので、この中でさらに最小のものを見つけないといけません。

 

ここでそもそもG(γ)はg(γ)の原始関数、つまり積分してできる関数でした。

積分と言えば面積です。なので、積分定数をG(0)=0となるように決めてあげると、G(γ)は、「y=g(x)のグラフと直線x=0,x=γ,x軸で囲まれた部分の『符号付き』面積」と解釈できます。『符号付き』の意味は、x軸より下の部分の面積はマイナスとしてカウントするということです。

 

この読み替えをすることで、G(0), G(8/3), G(10/3), G(6)の大小は、面積の大小で言い換えられることになるので、G(0)<G(8/3)とG(6)<G(10/3)がy=g(x)のグラフから明らかに分かります。この時点で、最小値の候補がG(0)とG(6)に絞れました。

 

あとは、この2つの大小関係を調べるのですが、ここで長らく放置されていた(1)の不等式が活躍します。

G(6)がg(x)の0≦x≦6での積分値になるのですが、この積分の中身のg(x)を(1)で考えた-3(x-3)に取り換えて考えられるというわけです。すると取り換えた後の積分値が0になるので、G(6)>0=G(0)が言えて、G(0)が最小値だと確定できました。

 

(1)で証明した結果が、最後の最後の局面になってようやく生きてくるという伏線回収がなかなかに爽快ですね。

 

<筆者の解答>

 

第3問

立体の体積と表面積を計算する問題です。

 

平面z=t (-b≦t≦b)で切ったKの断面を考えていくのですが、Kはxy平面に対して対称な形状なので、0≦t≦bだけ考えればOKです。

 

(1)断面の面積を調べていくのですが、a≧2√3bの条件から断面には正三角形の穴が空くことに注意します。

 

断面積をtの式で計算して、素直にtで積分すれば体積が求まります。

 

(2)同様に断面の周長を調べて積分するのですが、表面積についてはtで積分してはいけません!!表面積を計算するには、「Kの表面に沿って」積分しないといけないのです。

 

高校の範囲では立体の表面積はほとんど扱わないので、受験生に初見でこれに気付けというのは無茶でしょう。その意味では表面積の計算方法を知ってる受験生なら解ける、知らなければ解けないという知識問題の様相を呈しています。(※表面積の一般的な計算方法は、大学1年で勉強します)

 

ただ、表面積が「幅の十分短い帯の輪っかを足し上げたもの」というイメージがあれば、帯の幅がdtではなく、表面に沿った微小長さじゃないといけない、という直感は働くかもしれません。同じ高さでも、まっすぐに立っている平面と斜めに立ってる平面とでは、当然面積が異なるわけで。

 

さて、今回のKの表面は球面です。なので「半径bの円周上に沿って積分」というのが「Kの表面に沿って」の意味になります。

 

半径bの円周上に「R軸」を定義してあげると、t=bsinθとなるθを使ってR=bθと表現できるので、上記で求めた周長を、「Rで」積分すると表面積が求まります。

 

<筆者の解答>