ちょぴん先生の数学部屋

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令和の一橋後期数学 -2022年-

先日行われた、一橋大学の2022年度の後期日程の数学を解いていきます。

 

一橋の後期は文系向けにも関わらず数Ⅲが出題範囲に含まれています。なので、どうしても数Ⅲの知識が不可避な問題については「※数Ⅲ必須」とコメントを付けておきます。数Ⅲやってないよ、という文系志望の方は、このコメントのない問題を中心に見ておけばよいと思います。

 

 

第1問

 

logの絡んだ整数問題です。

 

まず、logの底に1は来てはいけないので、y≧2が必要です。

(もしlogの底が1だと、対数の値が決まらなくなってしまいます。1は何乗しても1なので)

 

その下でlogを解消すると、y( y^(x-1) -1) =6xとなります。ここからどう料理するか、かなりの悩みどころです。左辺は因数分解された形で、yが6xの約数でないといけないことは分かります。しかし未知数のxが混じっているせいで、この方向での検討は頓挫してしまいます。

 

しかし、逆を言えばxさえ解消できれば、yだけの積の形=数字にできるのでyの候補が絞れそうです。さて、どうやってxを解消するか。

 

ここで注目すべきは、yを固定するとy( y^(x-1) -1) =6xは「左辺が指数関数、右辺が1次関数」となっていることです。基本的に指数関数のほうが1次関数よりもはるかに大きくなるので、それが等しくなるようなxは相当なレアケースだと想像できます。

 

さらに左辺はxを固定すると「yの単調増加関数」なので、y=2とした値よりも基本的に大きくなります。つまり、y( y^(x-1) -1) =6xが成立するためには、最低でも2( 2^(x-1) -1) ≦6xをクリアしていないといけないことが分かります。

 

前述のように指数関数≦1次関数となるのはレアケースなので、2( 2^(x-1) -1) ≦6xとなるxは数えるほどしかありません。こうしてxを絞ることができるわけです。

 

xを絞ったら、その各候補についてy( y^(x-1) -1) =6xを満たすyがあるかどうかをチェックすればよいでしょう。xが定数になったので積の形からyを絞ることができるのですが、正直それをするまでもなくyを小さい順に代入していって6xとの大小を直接調べたほうが速いでしょう。

 

<筆者の解答>

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第2問

 

ベクトルの処理の問題です。

 

まずPはl上にあるという条件から、パラメータpを使ってOP=OA+pOBと表現できます。次にQ(X,Y,Z)とおくと、OP・CQ=0が任意のPで成り立つ条件からpの恒等式を作ることができて、Y,ZをXの式で表現できます。

 

|OQ|=√(X^2+Y^2+Z^2)となるので、あとは|OQ|をXだけの式で表して平方完成してあげれば最小値が求まることになります。

 

<筆者の解答>

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第3問

 

2変数関数の最大値を求める問題です。

 

x^-yとy^2 -xの大小関係を調べると、xとyの大小とx+y+1の符号に依存して決まってくることが分かります。

 

xとyの対称性から、min(x^-y, y^2 -x)=y-x^2になる場合に限定して考えて問題なく、そうなるx,yの領域と、放物線k=y-x^2とが交点を持つkの最大値を考える「線形計画法」の問題に帰着できます。

 

<筆者の解答>

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第4問

 

確率の問題です。

 

Anについてみていくと、実はxkykは1,0,-1の3種類しか値をとらないので、xkyk=1となる事象をA, xkyk=0となる事象をB, xkyk=-1となる事象をCとしたときに、各事象の起こる確率(a,b,c)と起こる回数(p,q,r)に注目すればよいと分かります。

 

上記のように文字を置くと、p+q+r=n, p-r=αという関係式が求まるので、(p,q,r)の組を限定することができます。

 

あとは、求まった各々の(p,q,r)について発生確率を計算すればよいことになります。

 

<筆者の解答>

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第5問(a)

 

例年通り第5問は選択問題となっています。

こちらの[Ⅰ]については、対称な2つの3次関数の囲む面積に関する問題で、なかなか難しい問題です。数Ⅲが解ける受験生ならばサービス問題に近い[Ⅱ]を解くことを強く推奨します。

 

(1)まず、C2の式をどうすればいいかが慣れてないと難しいところです。

 

結論からいうと、C1の式でx→2t-xと置き換えた式がC2の式になります。これは答案の図1で簡単に触れていますが、x=tから等距離の座標がどうなっているかを考えることから導けます。

 

ここからは定石通りにC1, C2を連立してできるxの3次方程式が3つの実数解をもつ条件を考えていくことになりますが、x=tが確定で解になっていることに注意できると見通しよく進みます。

 

(2) (1)の方程式のx=t以外の実数解をα,β (α<β)すると、α<t<βが成り立っていてかつ両方ともtから等距離にある値だと分かります。

 

これに注意しつつS(t)を積分で求めていきますが、このときも(x-t)の塊を作りながら計算するとミスが減らせます。いつもであれば解と係数の関係からα+βとαβを調べておくのですが、今回に限ってはα,βを直接tの式で解いてしまったほうが計算がスムーズに進みます。

 

最終的には実質2次関数の最大値を考える問題に帰着します。

 

<筆者の解答>

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第5問(b) ※数Ⅲ必須

 

第5問のもう一方[Ⅱ]は、ネイピア数eに関する不等式証明の問題で、数Ⅲが解ける受験生にとってはサービス問題と言ってもいいくらいに易しい問題です。

 

各辺にeを底とする対数をとってしまえば、log(1+x)<x<(1+x)log(1+x)と同値変形できるので、微分を使って各辺の差の増減を調べればお終いです。

 

余談ですが、この不等式に既視感があったのですが、東大の2016年の理系第1問によく似た問題が出題されていました。当然ながら東大のそれの方が難易度は若干上ですが。

平成の東大理系数学 -2016年- - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com)

 

数Ⅲが使えるか否かで難易度があまりにも異なっているため、ちょっと試験問題としてどうかという気がしますね。。。

 

<筆者の解答>

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