ちょぴん先生の数学部屋

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平成の東大理系数学 -2010年-

このシリーズでは、平成の東大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。

東大の数学の問題は、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。

(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )

 

10回目の今回は、2010年の問題です。

第1問

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柱体の体積の取りうる値を調べる問題です。一見簡単そうに見えますが、方針をしっかりと決めておかないと厳しい問題です。

 

(1)は、底面の形状さえ理解できれば、容易に計算できます。注目点は、回転軸から最も遠い点はどこか?です。

 

(2)は、a+b+c=1と関係式が1個決まっているので、文字を最低1つは消去することができます。さて、どれを消すべきか?

 

(1)の答えを観察すると、aとcは対称な関係で、bだけ仲間外れになっています。対称性はできるだけ崩したくないので、仲間外れのbに消えてもらうことにしましょう。

これで、体積をaとcの2文字で表現できました。

 

2文字で最大最小を考えるなら、予選決勝法が頭に浮かびます。ただ、さっきも言ったようにaとcは対称になっています。ここで「aを固定して・・」とやってしまうと、せっかくの対称性が崩れてしまいます。対称性を崩さずに予選決勝法に持ち込むにはどうすればよいか?

 

対称式でかかれた数を固定してしまえばよいわけです。つまり、変数が「a+c, acの2つだ」と捉えなおせば、対称性を維持したまま予選決勝法に持っていけるわけです。

 

そこで気になるのが、a+c, acの動く範囲です。a,b,cは全部辺の長さで、a+b+c=1が成り立っているのですから、0<a<1, 0<b<1, 0<c<1が分かり、これらを使ってあげると、0<a+c<1, 0<ac<1と範囲が求まりました。また、a,cが実数になる条件、(a-c)^2>0も忘れないようにしましょう。

 

これで準備が整ったので、予選決勝法です。

 

ここで一つ問題が。。どっちを先に固定したほうがよいか?

今、体積の式は、acの1次式、a+cの2次式で書かれています。基本的には大小を考えるのは1次関数の方が楽なので、2次式になっているa+cを固定して、1次式になっているacを先に動かしたほうがスッキリすると思います。

 

あとは、セオリー通りにやれば、体積の範囲が求まります。

 

途中、結構な選択肢があり、それを的確に選び続けないと計算が苦しくなってしまうという意味で、やや難しい問題でした。

 

<筆者の解答>

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第2問

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不等式評価の問題です。不等式証明の常ですが、発想力が若干要求されます。

 

(1)は、中辺の積分を計算するとlogが出てくるため、分子式との大小が少し調べにくくなってしまいます。よって(1)では積分計算はやめておきましょう。とはいえ、そのままでも如何ともしがたいので、積分の中身を少し改造してみましょう。

 

先ほどlogが出てくるのがイヤだと言いました。逆にlogが出てこないように改造してしまえば、という発想に立つと、積分の分母に注目すると、積分範囲が0<x<1なのでk<k+x<k+1となっています。この評価を使えば分母からxが消えてくれて、なおかつ分母がk,k+1となるから、証明したい式とも近く好都合ですね。そしてxが分子にしかない形になるので、その積分は単なる多項式です。この方針でやると、無事うまく証明できます。

 

別解としては、「積分=面積」という基本に立ち返って、図形的に証明するやり方があります。接線を考えるという点が少しテクニカルですが、これで面積の大小という形で、視覚的に証明ができます。

 

(2)は、(1)の結果を使います。

証明したい式にlogが含まれているので、(1)の式で満を持して、積分の計算を実行します。その後同値変形をしていくと、(1)の式を、(2)の式に近しい形までもっていくことができ、あとは(1)の式をΣしてあげれば、証明完了!・・・とはなりません。

 

中辺と右辺に関しては完璧に一致するので、惜しいところまではいきます。左辺が一致しないので、もう一工夫が必要になります。

 

今左辺は、バーゼル問題みたく1/k^2のΣになっています。ここで、分母を少しだけいじって全体を小さくできればいいわけで、1/k(k+1)としてみてはどうでしょうか?右辺と類似したものになるので、ここまでできれば、証明完了です。

この(2)は、対数関数を調和級数で近似しようという問題で、n=1かつm➡∞で考えるのが普通です。差の極限が1/4から1/2の間に収まるので、収束することがわかります。この収束値は、「オイラー=マスケローニ定数」と呼ばれていますが、この値は、未だに無理数なのかすら分かっていない未知の数になっています。

 

<筆者の解答>

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第3問

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ボールを中の個数に応じて次々に行き来させる設定の確率の問題です。

この問題は(1)こそが山場で、(2)(3)は(1)さえできてしまえば簡単に解けます。

 

(1)は、問題文が嫌らしいですね、「yをうまく選んで」って何それ?ですよね。

 

とにもかくにも、まずは一回(#)の操作をやってみましょう。

 

すると、xが15以下の時は、裏が出てしまうと詰み。xが16以上の時は、表がでればいきなりゴールです。それ以外の場合は、Lのなかにはボールが一定の個数残るという状況です。

 

さて、問題文が言わんとしていることは何か?

 

Pm(x)は、Lにx個ある状態から、m回操作するとゴールの状態になっている確率です。一方、Pm-1(y)は、Lにy個ある状態から、m-1回操作するとゴールの状態になっている確率です。

 

ここで、もともとm回操作をする前提なのですから、一回(#)をやった状態を初期状態とみなせば、あとm-1回操作すればよいですよね。そうです。yを、Lにx個の状態から一回(#)をやったあとのLのボールの個数にしてしまえばよいのです。

 

ここまで考えることができれば、求めたい関係式の出来上がりです。この発想が要求される(1)は、十分難問です。

 

(2)(3)は、(1)の式を使えばそれぞれ2項間漸化式が出来上がるので、それを解くだけです。

 

<筆者の解答>

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第4問

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曲線が絡んだ面積計算の問題です。なかなか面白い問題です。

 

(1)は、要は「△OPHの面積はPの選び方によらず一定」ということを言えればいいです。底辺×高さ÷2で、△OPH=y|x-y|/2と書けるので、あとは代入してひたすら計算するだけです。

 

(2)は、Cとy=xのグラフを、位置関係を意識して描いてみると光明が見えてきます。面積を計算したい図形は、積分するには面倒な形状をしていますので、面積が同じ別の図形を見つけたいところです。ここで、(1)が生きてきます。(1)を使うことで、より積分に適した形状に変化させることができるわけです。

 

y軸に沿って積分という少し慣れない形で、Cの逆関数を出す必要はありますが、これでかなり楽に面積を計算することができます。

 

<筆者の解答>

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第5問

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円周上を一定速度でぐるぐる回る点たちが直角二等辺三角形を作る条件を求める問題です。

 

まず、円に内接する直角三角形を考えているので、円周角の定理からPRが直径になっていることが必要です。これにプラスして、直角二等辺三角形になるので、図形的な考察からOQとPRが直交していればOKです。

 

考えやすいように座標を組んで、速度の情報を使ってP,Q,Rの座標をm,tで表しておきましょう。そのうえで、上で検討した2条件をm,tの条件式に落とし込んでしまえば、

あとは、個別に虱潰しに調べてしまえば、お終いです。

 

<筆者の解答>

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第6問

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四面体の断面積を考察する問題です。ベクトルの知識、相似など平面幾何の知識を総動員しないと解き進めることができません。

 

(1)は、基本的な空間ベクトルの問題です。あるベクトルが平面に垂直な時、そのベクトルは、平面を作る2本の(1次独立な)ベクトルそれぞれと直交するという事実を使います。

 

(2)がこの問題の山場です。

まずtが小さい時を考えると、断面は三角形になります。ところが、Cを通り過ぎてしまうほどにtが大きくなると、断面は4角形(もっといえば台形)になってしまいます。

この2つで大きく場合分けしないといけなさそうです。

 

すると境目が知りたくなります。ここで(1)の答えを使うわけです。一般にPが直線AB上にある条件は、「OP=sOA+tOBと書いたとき、s+t=1になること」でした。これを使ってあげると、断面がちょうどC(H)を通過するtの値が分かります。

 

その後の面積計算は、Cを通る時の断面三角形の面積を基準に、相似比をバンバン使って求めていくことになります。中学生の頃の勘を思い出せ!!という感じです。

 

発想自体は要りませんが、この相似比を何度も使う面積計算が時間泥棒になります。

 

(3)は、(2)さえできてしまえば、単純な2次関数の最大化ですので簡単です。

 

<筆者の解答>

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