ちょぴん先生の数学部屋

数学の楽しさを、現役メーカーエンジニアが伝授するぞ!

平成の京大理系数学 -2016年-

このシリーズでは、東大に引き続き、平成の京大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。

京大の数学の問題も、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。

(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )

 

4回目の今回は、2016年の問題です。

第1問

f:id:stchopin:20210902091258p:plain



sin,cosの関数の最大値の極限を求める問題です。

 

(1)は、θで微分して増減を調べることで求まります。

 

(2)は、(1)の形から、ネイピア数eが登場しそうです。ここで (1+1/f(n) )^f(n) →eとなるので、1+の分数の分母と、指数が一致するように辻褄を合わせていきます。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200422204153p:plain

 

第2問

f:id:stchopin:20210902091320p:plain



素数p,qの対称式が、素数となる条件を考察する問題です。個人的に、大学入試の中で最も美しい整数問題だと思っています。それでいて、良問です。

 

p,qの候補を絞り込んでいきたいので、まずはp,qの偶奇を考えてみましょう。

 

もしpとqの偶奇が同じだと、与式は4以上の偶数になってしまうので素数になりようがありません。ということで、pとqの偶奇は必ず不一致です。そして、偶数の素数は2だけなので、どちらかは2と確定してしまいます。どっちを2としても対称性から問題ありませんので、以後q=2とします。

 

さて、2^p+p^2になったので、これが素数となる条件を考えたいです。一見してはすぐに分からないので、小さい数で実験してみます。

p=3 →17 :素数

p=5 →57=3*19

p=7 →177 =3*59

p=11→2169 =3*723

となるので、どうやら素数になるのはp=3のときだけで、pが5以上だと3の倍数になっちゃいそうだと予想できます。

 

よって、pが5以上の素数の時は与式が3の倍数になることが言えれば、答えは17だけだということができます。

 

ここで、5以上の素数は、「3で割り切れない奇数」なので、「6で割った余りが1かー1」が成り立ちますので、これを使うと2^p+p^2が3の倍数となることを証明できます。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200422204220p:plain

 

第3問

f:id:stchopin:20210902091343p:plain



京大の大好きな四面体の問題で、一つの頂点から下した垂線が外心を通る時に正四面体になることを証明する問題です。

 

空間図形なので、ベクトルを使いたくなるのですが、ベクトルだと外心を表現するのが難しいです(できなくはないですが。。。)

 

よって、ここは「外心」の性質に立ち返って初等幾何(中学数学)だけを使って証明を試みます。

 

「外心」は、三角形の外接円の半径なので、△OABの外心をPとするとOP=AP=BPが言えます。ここで、今回の設定ではCPが△OABと垂直なので、3つの合同な直角三角形が出現します。これにより、CO=CA=CBを示せました。

 

残りの面についても同様の議論ができるので、結局6つの辺の長さが全部等しい、すなわち正四面体だと言えることになります。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200422204248p:plain

 

第4問

f:id:stchopin:20210902091404p:plain



回転体の体積を求める問題です。

 

平面y=z上の図形を回転させる、という点が見慣れないですが、やること自体はいつも通りです。

すなわち、平面y=tで断面を切り、それをy軸周りに回転して断面積を求め、その断面積をtで積分して体積を出す、という流れです。

 

余談ですが、xの式に登場している (e^y+ e^(-y) )/2は、カテナリーと呼ばれる関数で、ひもを両端を固定して弛ませたときにできる曲線の形になります。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200422204316p:plain

 

第5問

f:id:stchopin:20210902091426p:plain



6つの隣り合う点間の移動を考える、確率の問題です。

 

安直に考えるなら、6点すべてに対して確率を定義して漸化式を立てるという方針になりますが、6文字だとさすがに処理が大変です。

 

ここで、よくよく考えてみると、nが奇数の時、偶数の時に、動点がいられる点が特定の点に限られることが分かります。これに気づけば、x=0になる確率、x=1になる確率、x=2になる確率の、計3つの文字でまとめられることが分かります。

 

漸化式を解く際に、等比数列の漸化式+別の数列の形になるので、係数掛けを駆使して単純な階差数列に持ち込めるとよいです。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200422204346p:plain

 

第6問

f:id:stchopin:20210902091446p:plain



2つの条件を満たす複素数係数の2次式を求める問題です。

 

この問題のカギは、条件(イ)の解釈です。

f(x^3)をf(x)で割った商をQ(x)とし、f(x)=0の2つの解をα、βとすると、

f(x^3)=Q(x)(x-α)(x-β) となるので、f(α^3)=f(β^3)=0となります。

 

これが意味することは、α^3とβ^3もまた、f(x)=0の解になっているということです。ところがf(x)=0は2次方程式なので、解の個数は2個以下です。よって、α^3とβ^3は、α,βのどっちかと同じになっていないといけないのです。これが(イ)の解釈です。

 

この後、α=βとなっている場合とα≠βとなる場合で場合分けし、後者はさらにα^3=αかつβ^3=βとなる場合と、α^3=βかつβ^3=αとなる場合に分けられます。

 

それぞれの場合について、条件(ロ)を満たすかどうかを虱潰しで調べていくことになります。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200422204415p:plain