ちょぴん先生の数学部屋

数学の楽しさを、現役メーカーエンジニアが伝授するぞ!

平成の京大理系数学 -2010年-

このシリーズでは、東大に引き続き、平成の京大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。

京大の数学の問題も、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。

(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )

 

10回目の今回は、2010年の問題です。

2007~2010年の問題は、甲セットと乙セットの2種類がありますが、より難易度が高く受験者人口が大半を占めていた乙セットを解きます。

第1問

f:id:stchopin:20210902092645p:plain



京大の大好きな四面体に絡む、辺と平面の直交性を調べる問題です。

 

使う道具は、もちろんベクトルです(問題文からして明らかですが、仮にこれがなくてもベクトルを使うのは通常の発想の範囲でしょう)。

 

与えられた直交の条件をベクトルで処理すると、AC=ADが分かります。

 

その上で、平面と辺の直交性をどう示すか?これを言うには、「平面を作っている2つの1次独立なベクトルそれぞれと、辺が直交する」を言えばよいです。

 

今回の場合は、AMベクトルとBMベクトルの両方が、CDベクトルと直交することを証明すればよいです。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200427100508p:plain

 

第2問

f:id:stchopin:20210902092703p:plain



座標平面上の角度を最大化する問題です。

 

パッと思いつく方法は、余弦定理を使ってcos∠APBをxの式で表現する方法でしょう。しかしこの方法で進めると、cos∠APBの式が「xの4次式/xの4次式」の形になってしまい、xで微分するのが非常に大変になってしまいます。

 

よって、図形の性質を使って解いていかないと厳しいです。

 

ここで角度を取り扱う有名な定理がありました。「円周角の定理」です。

今A,Bを通る円を作ってあげて、この円と直線y=xとの交点をPとして考えることができます。このとき∠APBは、円の半径が小さいほど大きな値となりますので、円と直線が接するときに半径最小、すなわち∠APBは最大となります。

このとき、Pは円と直線の接点になるので簡単に座標を計算でき、∠APBの最大値が求まります。

 

別解として、直線AP, BPの傾きをxで表現して、tanの加法定理で解く方法も上げておきます。こちらの方は、ある程度機械的に解くことが可能な解法です。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200427102827p:plain

f:id:stchopin:20200427100625p:plain

 

第3問

f:id:stchopin:20210902092726p:plain



三角関数に囲まれた面積に関する問題です。

 

素直にSとTを計算するだけです。その際、y=sinxとy=acosxの交わる点をx=θと文字で置いて進めましょう。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200427100649p:plain

 

第4問

f:id:stchopin:20210902092745p:plain



外接円半径が1の鋭角三角形の、各辺の長さを求める問題です。

 

BC=a, CA=b, AB=√3 となるようにA,B,Cを定義してあげます。

 

外接円の情報があるのですから、やることは1つです。正弦定理ですね。

 

正弦定理を使ってあげると∠C= 60°が分かりますし、角度の合計が180°なので、A+B=120°が分かります。

 

あとは、加法定理を用いてBを消去して、bを計算しましょう。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200427100715p:plain

 

第5問

f:id:stchopin:20210902092805p:plain



3^m -1が2で何回割り切れるかを考察する整数問題です。

 

問題を通じて使う考え方として、以下を押さえておきましょう。

mが偶数の時、m=2^l ×N (l:自然数、N: 奇数)の形にmを表現できて、lがmが2で割り切れる回数を表すことになります。

 

(1)は、数学的帰納法で示すことができます。

 

(2)は、(1)とは指数が異なっているので、(1)をどう生かすかが考えどころです。

今、m=2^l ×N (l:自然数、N: 奇数)とかけ、b^N- 1の因数分解の形を考えることで、(1)で考えた3^a - 1を出現させることができます。

 

因数分解してできるもう一つの因数は、奇数をN個足している形をしていて、Nが今回奇数なので、この数は最終的に奇数となります。

よって、こちらは2で割り切れる回数の議論には影響せず、3^m -1が2で割り切れる回数と、3^a -1 が2で割り切れる回数が一致することが分かります。

 

3^a -1 が2で割り切れる回数は(1)で証明した通り、l+2回ですので、3^m -1が2でm回割り切れるためには、mがl+2以下でないといけません。mはlの指数関数で書けているので、これを満たすl,mは相当限られることが分かります。

(l+2に比べて、2^l ×Nの方が遥かに早く大きくなる)

 

以上の考察から、mの候補が2か4に絞られます。

 

あとは、m=2とm=4の両方が、条件を満たすことを確認しましょう。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200427100742p:plain

 

第6問

f:id:stchopin:20210902092824p:plain



n個のボールを2n個の箱に振り分ける状況について、確率と極限を考える問題です。

 

この問題は、確率を計算する前半と、極限を計算する後半に大きく分かれます。

 

まず前半についてですが、これはあまり難しくありません。

n個のボールを2n個の箱に振り分ける方法は、1個のボールにつき入れ方が2n通りあるので、(2n)^n通りあります。

箱の中のボールの数がすべて1個以下になるような入れ方は、最初のボールの入れ方が2n通り、2個目の入れ方が2n-1通り、となるので、2nPn 通りとなります。

これにより、確率pnが計算できました。

 

次に、後半の極限計算ですが、一工夫が必要です。

pnの分子と分母が、両方ともn個の数字の掛け算になっているので、それぞれ振り分けてしまいましょう。これに対して対数をとるので、logの足し算の形になります。

 

すると、求める極限は区分求積法を使える形になりますので、最終的に積分を計算すれば終了です。

 

確率という1より小さい数に対して対数をとっているので、値は負になります。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200427100809p:plain