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平成の阪大理系数学 -2019年-

大京大に引き続き、他の旧帝大の問題も取り上げていきます。この記事では、大阪大学の2019年の問題を取り上げます。

 第1問

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ガウス関数積分の極限を考える問題です。

 

積分の中身に登場している関数はガウス関数と呼ばれる統計学の分野で元も重要な関数になります。この関数は、一般に不定積分を求めることができないので、積分値は、この問題のように不等式で近似して数値的に求めることになります。

 

(1)は、f(x)を微分した結果が負になることが言えればよいです。

 

(2)については、左側は(1)を利用して、右側はt>aのとき積分の中身が、上からe^(-a^2/2)で押さえられることを利用します。

 

(3)は、変数変換によって(2)の不等式が使えるように式変形しましょう。最終的にははさみうちです。

 

<筆者の解答>

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第2問

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複素数の漸化式と確率との融合問題です。総当たりで調べる必要のある面倒な問題です。

 

まずは、与えられた漸化式を解くのが第一歩でしょう。と言いますかその過程で得られる関係式、

zn+1 -zn =(-w)^n が重要となります。このことからznは基本的には階差数列ですが、w=-1の時だけは例外扱いとなります。このことに注意です。

 

(1)の場合は、上の関係式を使って考えれば、z1~z7の作る図形は各辺が長さを変えずに-60°ずつ回転していきますので、正6角形をつくることが分かります。

 

(2)の場合は、同様にznの作る図形は正方形を描くので、4周期でznの値が変わります。

 

(3)は、非常に面倒ですが、すべてのa,bについてznの周期を総当たりで調べてしまいましょう。このとき、w= -1の場合のみ周期がないことに注意です。

 

こうしてみると、z0 = 0になることに注意すれば、z63 = 0になるのは、周期が63の約数、つまり、3,7,9になっている場合となります。

 

周期7はOKで14はNGなどが多発するので、分母が○○になれば・・などとショートカットを試みると却って打ち漏らしが出やすいです。よって、面倒でも総当たりを実行する方が、結局一番ミスがないです。

 

<筆者の解答>

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第3問

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点の通過領域を求め、その回転体の体積を求める問題です。一見簡単そうに見えて、場合分けが発生し面倒な問題です。

 

(1)は、(2)を先にやった方がダブりがなく良いと思います。

 

(2)は、s^2+t^2 ≦6 を満たすことはもちろんですが、sとtが実数となる条件も追加で必要となります。つまり、(s-t)^2≧0 が必要になります。これによってAを描いてあげると、(1)の(2, √2)はAに入ってないことが分かります。

 

(3)は、Aをx軸で回転させればよいだけ、、、なのですが、問題はAがx軸を跨いでいることです。軸を跨いでいる部分では、軸の上の部分と、下の部分のどっちが大きいかを考えないといけないのです。これによる場合分けを考えないといけないところが、この問題の面倒くささです。

 

<筆者の解答>

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第4問

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分数の下に、分母を足して、、分子を足して、、とできる樹形図を考える問題です。一見して何をすればよいかがわからない本セット最難問です。

 

(1)は、樹形図を下から上にたどっていくと、ユークリッドの互除法を全く同じ操作をしていることに気づきます。ユークリッドの互除法を繰り返して最終的に1にたどり着くので、分子と分母が互いに素、つまり登場する分数は全部既約分数であることが分かります。

 

(2),(3)はともに背理法です。つまり、(2)では登場しない分数がある、(3)ではダブっている分数があると仮定して矛盾を導きます。

 

矛盾の導き方が知っていないと難しいところで、登場しない/ダブル分数のうち、(分子)+(分母)が最小になるものをp/qだと仮定し、(分子)+(分母)がもっと小さい登場しない/ダブる分数が作れてしまうことで矛盾を導きます。こんな背理法数学オリンピックレベルでないとそうそう登場しないテクニックですね。。

 

(4)は、とりあえず19/44に到達するルートを書き出してみると、11段目にあることがすぐに分かります。問題は左から何番目にあるかですが、これは、何段下がると裾野に何列分数が出現するかを順に考えることになります。

 

<筆者の解答>

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第5問

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共通部分を同じくする球面の半径を求める問題です。

 

共通部分Cの式を直接x,y,zで表現することは難しい(座標軸に対して斜めっている円なので)ので、2つの球面の中心を通る平面で切って、図形的に処理する方が良いでしょう。最低限、Cの中心の座標と半径だけは調べておきましょう。これにより、求める球面の中心がどういった条件を満たす直線に乗っているべきかが分かります。

 

(1)は球面のCによる断面が中心を通る時ですね。

(2)は、三平方の定理を使えば、球面の中心と、Cの中心との距離が分かります。

 

<筆者の解答>

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