ちょぴん先生の数学部屋

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ヨビノリさんからの挑戦状 ~数学夏祭り~ 感想・総括

ヨビノリさんの企画「数学夏祭り」が10問全て終わりました。。。10問が10問とも、実に多種多様な問題でした。 ということで振り返ってみます。

 第1問

こちらは、大学入試でもありがちな整数問題に少し毛を生やしたような問題で、解き応えのある問題でした。最後の掛け算の意義はともかく、p,q,rの組を求めていく作業は、整数問題の極意が色々詰まっていました!

 

第2問

オイラー線を題材にした図形問題で、個人的に一番厳しかった問題でした。

垂心と外心のベクトル表示、さらには外分という、余り使い慣れていない知識を使う必要がある上に、チマチマと比を計算しないといけなくて、きつかったです。

とはいえ、これを座標や初等幾何で解くことはまず不可能だと思ったので、垂心や外心を一色単に扱えるベクトルを使わざるを得なかったんですよね。。ヨビノリさん曰く、「点H, O, L, DがG, O, L, Dの順に並ぶように作った」のだそうですが、そんなことに気付く余裕は全くありませんでしたね。。

 

第3問

チェビシェフ多項式を使ったcosの積を求めさせる問題でした。いい意味で頭を使う良問だったと思います。と同時に、三角関数の類題経験がかなりものをいう問題とも言えます。

cosの単品の値は計算できなくとも、和とか積なら計算できる、こんな場面では大抵複素数か、チェビシェフ多項式の出番です。

解いてて閃いた時、解き終わった時の達成感・満足度が一番高かった問題でした。

 

第4問

ゴールドバッハ予想を背景にした確率の問題でした。大学入試で登場する素数は、大抵は問題を解きやすくするヒーローのような存在(第1問がまさにそれ)ですが、この問題に限っては、こんなに素数を嫌いになったことはない!というレベルで悪魔な一面を見せてくれました。

とにかく、素数がいかに不規則で厄介なものかということを嫌というほど味わわされました。。それゆえに総当たりで数え上げるしかない。。気が遠くなるような作業でした。

 

第5問

stchopin.hatenablog.com

Σの公式を題材にした極限の問題で、こちらは京大の特色入試でしれっと出題されてもおかしくないレベル感の、ある意味よくある難問という印象でした。類題慣れしていれば、攻略はさほど難しくありませんでした。

とはいえ、Σの公式を導出できるか、極限を調べるにはどれくらいの精度までanの式が分かっている必要があるかという感覚は、経験を積んでいないと厳しいものがありますね。

 

第6問

stchopin.hatenablog.com

データから相関係数を算出する問題で、正直今回の10問の中では一番の悪問ですね。

なぜなら、データを打ち込みさえすればexcelで簡単に計算できてしまう代物だからです。実際、解く時間のほとんどがデータの打ち込みにかかった時間でしたし、データをミスなく打ち込む注意力ばかりが必要で徒に神経をすり減らすだけでしたので。こういった企画には不向きな問題だと思いました。

 

第7問

受験生にはあまり馴染みがない「傍心」にまつわる問題で、三角形という図形の奥深さを再認識した問題です。

図形問題ならではの、「閃けば万事OK、閃かなければ詰み」を地で行くような問題で、久々に図形問題の面白さを味わえました。。(第2問?あれはボリュームが多すぎて面白さよりも辛さの方が勝っていましたのでノーカンで)

 

第8問

測定誤差について考える問題で、統計学ってこう使うんだ・・」と再認識した問題です。大学数学必須な問題の1つでした。

私自身は、一応大学1年の時に「統計」の授業を受講していたのですが、当時単位はとれたもののあまり内容を理解できておらず、使わない知識は忘れるんですよね。「t分布」とか「カイ2乗分布」みたいな変な名前だけは印象に残っていたんですがね笑

でも、ヨビノリさんの分かりやすい解説動画のおかげで当時以上に理解が深まりました。本当にこの問題については、ヨビノリさまさまでした。。ヨビノリさんが人気を集めている理由がよく分かりました。

 

第9問

積分を計算する問題で、第8問に引き続き、大学数学必須の問題です。

こちらは、記事でも述べたとおり物理との関係が非常に深い分野です。線積分以外にも、大学では「面積分」「grad(勾配)」「div(発散)」「rot(回転)」といったベクトルと微分積分を組み合わせた概念をいくつも習いますが、これらは「ベクトル解析」と言われる分野で、いずれもニュートン力学電磁気学マクスウェル方程式)といった物理を学ぶ上で必要不可欠な知識です。

という感じで非常に重要な概念なのですが、いざ実際に具体例で計算しようとすると手が動かないんですよね。。大学の授業あるあるだとは思いますが、授業で理論ばかりやるので、実際に問題演習する場面が極端に減るんですよね。。今回は、そんなむず痒さを抱えながらの挑戦でした。。

 

実際にやってみると、計算が非常に大変で、皆さんが出してくる計算結果も十人十色なんですよね。。積分の概念を分かっていたとしても、正答するのが非常に難しい問題でした。

 

第10問(最終問題)

素数定理を題材にした、不等式証明の問題で、こちらは受験数学でも役立つノウハウが盛りだくさんな良問でした。

1つ文句があるとすれば、証明する不等式がもっと意味のある内容であってほしかった点ですかね。π(x)とLi(x)の差がもっと小さく評価できる式であれば、素数定理をしみじみと感じられたろう、、と思いました。

 

 

 

 

<総括>

細かな文句はいくつかあるものの、全体を通して非常に楽しく数学の問題を満喫させていただきました!!統計学」「ベクトル解析」みたいな遠い過去の遺物を思い出せたのもこうした企画があってこそ。

ぜひ、同じような企画の第2弾をやってほしいです!!その時は、喜んでまた挑戦したいと思います!!

 

このような企画を立てて楽しませてくれたヨビノリさん、本当にありがとうございました!!