私立最難関の一角、慶應義塾大学の医学部の問題を取り上げます。今回は2017年の問題です。
第1問
小問集合です。
(1)指数の入った不等式を解く問題です。これは、t= (1/2)^xとすればtの3次不等式に帰着できるので、簡単です。ただしt>0には注意しましょう。
(2) CをAかつBとなる自然数の集合とし、A, B, Cの総和をそれぞれSa,Sb,Scとすると、AまたはBとなる自然数の総和はSa + Sb - Scで計算できます。
Aを満たす自然数は5k+2, Bを満たす自然数は7m+1の形で書けるので、Sa, SbはΣ計算で簡単に求まります。
問題は、Scをどうやって調べるか、ひいてはAかつBとなる自然数の一般形がどうなるかを調べることなのですが、これは結局、5k+2 = 7m+1 つまり7m -5k =1となるm,kの条件を調べることに帰着します。整数問題で頻出する「1次不定方程式」という奴です。
こんなm,kの一つが(3,4)なので、これを利用するとCを満たす自然数が35L+22の形に書けることが分かります。
(3)統計データに関する問題です。
(ⅰ) xi-1 < x< xiが分かっているので、f(x)の絶対値を全て外すことができます。絶対値さえ外せれば微分は簡単にできます。
(ⅱ)中央値とは、文字通り「データの中で真ん中の値」のことです。
例えば、データが「2,3,7の3つ」なら平均値は(2+3+7)/3 =4ですが、中央値は3です。データが偶数個ある時は注意が必要で、例えば「1,2,3,4」の4つあったとすると真ん中の値が2,3と複数ありえてしまいうまく決まりません。そんな時は、「2と3の平均値」を中央値とするのがお約束です。
よって、今回の問題はnが奇数か偶数かで話が変わるので場合分けが必要です。
やることは、(ⅰ)で調べたf'(x)がどこで符号変化を調べることです。
<筆者の解答>
第2問
確率の問題です。あらかじめAとBの移り方を図に描いておくとよいでしょう。
(1) 移り方を調べておけばpnの漸化式は簡単に立つので、それを解きます。
(2) Bが何回目に起こるかで場合分けして考えます。このとき、Bがn回目(最後)に起こる時だけ特別扱いになることに注意が必要です。
(3) (2)と同じように、Bが何回目と何回目に起こるかで場合分けして調べます。
<筆者の解答>
第3問
点の軌跡と、通過領域の面積を求める問題です。
(1)
(あ)(い)について
RがPQの垂直2等分線にあるという条件から、RP=RQが分かります。よって、
OR+RP = OR+RQ =OQ =2となって、「焦点からの距離の和が一定になる」という楕円の定義をRは満たします。よって、S(a,b)はO, Pを焦点とする楕円になります。
長軸と短軸の長さはそのままだと考えにくいので、焦点をx軸上に対称に配置したS(a,b)と合同な楕円を別に考えるといいでしょう。
(う)~(お)について
極方程式は若干発想が必要ですが、△OPRで余弦定理を使うと求めることができます。このとき、S(1,1)上の点のy座標をθの関数で表現し、yの増減を調べれば(え)(お)が求まります。
(2) (1)と同じようにしてS(t,0)の極方程式を調べ、θを固定したときにrがどの範囲を動くかを考えます。
rをtで微分した式=0は、結局tの2次方程式となりますが、t^2の係数の正負がθによって変化するので、そこで場合分けが生じます。
こうしてrの取りうる値の範囲が分かるとS(t.0)の通過領域を図示できるので、あとは面積を計算するのみです。積分の計算は難しくありません。
<筆者の解答>
第4問
放物面でできたコップを傾けたときにあふれる水の量を考える問題で、これは難問です。
(1)
(あ)について
放物線z=x^2を傾けたときに、溜まり場がない状態(グラフが単調減少するとき)だと水が全てあふれてしまいます。よって、水が残る条件はたまり場ができることなので、z=x^2をθだけ回転してできる曲線が極小値を持つ条件を考えればよいことになります。回転行列を使って、回転後の放物線の式をθで表しましょう。
(い)~(え)について
S0をθだけ傾けた曲面と水面を含む平面との交わりを考えます。この交わりをいきなり考えるのは難しいので、x座標がsで固定された場所での水面の「長さ」を求めます。この長さをsで積分するとT(a)が分かります。あとは、T'(a)を計算すればよいでしょう。
(2) 結局(1)で求めたT(a)を積分すればよいわけです。が、水面が少し動いたときにパラメータがどのように変化するかを慎重に調べる必要があります。。
<筆者の解答>