ちょぴん先生の数学部屋

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21世紀の慶応医学部数学 2005年

私立最難関の一角、慶應義塾大学の医学部の問題を取り上げます。今回は2005年の問題です。

第1問

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小問集合です。

 

(1)2つの円の共通接線に関する問題です。共通接線lをx=my+kとおいて、円の中心との距離と半径が等しいという条件を使ってk,mを求めます。ここでlの式をあえてx=の形で書くことで、点と直線との距離を計算する式を簡単にすることができます(円の中心が2つともy=0なので、mが消えてうれしい形になります)。

さらに、lが(2,a)を通るという条件からaをk,mの式で書くことができるので、aの値が決まります。

 

(2) 積分の計算問題です。

一見するとお手上げな積分に見えますが、sinxにかかっている関数に注目してみましょう。よく見ると、2/x^3が、1/xを2回微分した関数になっていることに気が付きます。

sinxは2回微分すると-sinxになることも相まって、部分積分をうまく使うとうまくいきそうだと気づきます。∫sinx/x dxを2回部分積分してみましょう。

ここで求まった不定積分を使って、積分の中身の符号に注意して定積分を計算しましょう。

 

<筆者の解答>

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第2問

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慶応医学部お得意の、複雑な設定の確率の問題です。

 

(1)

・状態P:1個入りの箱が3つ

・状態Q:3個入りの箱が1つ

・状態R:1個入りの箱が1つ、2個入りの箱が1つ

と名前を付けて各状態の移りあい方を調べます。各々について、移動しない玉、移動する玉を区別して丹念に調べないといけなくて大変です。

 

(2) (1)の結果を使って漸化式を立てて解きます。誘導に従ってpn+qnの漸化式を先に作るとうまくいきます。

pnの漸化式については、定数項の部分に「等比数列+定数」という厄介な形が来ます。このタイプは、pnの一般形を先に作って、係数比較で係数を決めていくという方針で解きます。

 

<筆者の解答>

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第3問

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図形の証明問題と、まさかの「作図」です!私自身初見で度肝を抜かれましたし、当の受験生が一番パニックになったに違いありません。。大学入試の問題で「作図」が問われるのは極めて稀です。(1)がわからずとも(2)以降は問題なく解けますので、後回しで解ければよかったと思います。

 

(1)作図なんて中学以来やってないという人がほとんどだと思います。作図でできる基本的な図形はせいぜい「垂直2等分線」「60°の角度」「角の2等分線」くらいのものなので、これらを組み合わせて作図していきます。

 

方針を述べておくと、大きく以下の2つです。

1. Q,Sは線分PRの垂直2等分線上にある →垂直2等分線を作図する

2. 30°を作らないといけない →60°を作ってから角の2等分線を作図する

これらの作業を分解して言語化したのが答案の内容になります。

 

(2)(3)正三角形に関する証明問題です。方針は「座標を使って方程式を作る」「ベクトルを使う」「初等幾何を使う」など様々考えられますが、答案のように「複素数平面を使う」のが一番楽だと思います。理由は、複素数の掛け算を使えば、長さと角度を同時に思い通りに変えることができるからです。

 

A(-1), B(1), C(z=x+iy), D(α), E(β), F(γ)とおいて、菱形の条件からα~γをzの式で計算することを目指します。

 

<筆者の解答>

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第4問

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関数の近似に関する問題です。

 

(1) f(x)-f0(x)の増減を考えてあげればよいでしょう。

 

(2)数学的帰納法で証明します。

 

(3) (2)にx=1, n=5を代入すると、0≦ √e - f5(1) ≦ (√e -1)/ 3840 が得られるので、

(√e -1)/ 3840 < 0.001であれば、小数第3位まで一致します。e=2.71・・は既知としてよいでしょう。

 

<筆者の解答>

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