ちょぴん先生の数学部屋

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21世紀の慶応医学部数学 2006年

私立最難関の一角、慶應義塾大学の医学部の問題を取り上げます。今回は2006年の問題です。

第1問

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小問集合です。

 

(1)楕円に関する問題です。まず、焦点の座標は平行移動する前の状態を考えてあげればよいでしょう。2つの直線と接する条件は、連立してできる2本の2次方程式が両方とも重解を持つ条件を考えればよいです。

 

(2)3次方程式の解の配置に関する問題です。

(2-1)3次関数の増減を調べて・・という解法はあまりよくないです。cの値ごとに形状自体が変わり、極値の位置も変わってしまってしまい解の値の取りうる値の範囲が調べにくくなってしまいます。ここはc=の式に直して、分数関数のグラフとy=cとの交点を考える方がはるかに楽です。

 

(2-2) 3次方程式の実数解が1つだけの時、残りの2つは共役な複素数になるのでx=α±iβと置けます。これに対して解と係数の関係を使って考えましょう。

 

<筆者の解答>

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第2問

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複数の玉を同時に動かす複雑な設定の確率の問題です。

 

・状態P:玉が1個だけある頂点が3つある

・状態Q:白玉が2つ、黒玉が1つある頂点が1つずつある

・状態R:白玉が1つ、黒玉が1つある頂点が1つずつある

 

と名前を付けて各状態の移りあい方を考えるのですが、複数の玉が同時に動くので考えにくいです。ここは「困難は分割せよ」ということで、黒玉の動きと白玉の動きを別々に考えて合成する、という方針で考えてみましょう。

 

(1)状態Pからの移り方を考えます。

 

(2)同じようにQ, Rからの移り方を考えます。結果pn, qn, rnの漸化式を立てることができます。すると、pn+qnは単純な等比数列になります。

 

(3) (2)の結果を使ってpnの一般項を求めます。定数項が等比数列になるタイプの漸化式です。問題文では偶奇の場合分けをしていますが、場合分けは正直不要だと思います。

rnについても同様です。

 

<筆者の解答>

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第3問

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関数の連続性と積分の極限を求める問題です。

 

(1)x=1/nでの連続性と定積分の条件からan, bnを求めることができます。あとの積分計算も典型的な計算です。三角関数が登場する極限の問題は、sinx/x→1が使えるように式変形することを考えましょう。

 

(2)は難問だと思います。誘導かと思わせて(1)は全く無関係という意地悪な問題です。

 

積分の中身にある√xが邪魔なので、まずはt=√xと置換します。これでもなおcosの中にt^2が入っているという厄介な形をしていますが、実は1回部分積分を実行できる形になっています。これで積分の中身をsin nt^2という少しは簡単な形にできました(とはいえ、残念なことにこれ以上は計算できません)。積分と関係ない部分の極限が0になることは一目瞭然なので、残った積分の値を評価します。

 

積分の値が0に収束することを言いたいので、絶対値をとった上でどんどん上から抑え込んでいって、その上限値が0に収束することを示していきます。

よく使うテクニックですが、「積分してから絶対値をとった値」よりも、「絶対値をとってから積分した値」の方が必ず大きくなります(積分=面積なので容易に想像ができます)。さらにsin nt^2は常に1以下という事実も使えば、積分の入った項は0に収束するような上限値で押さえることができます。あとは、はさみうちの定理を使うのみです。

 

積分を如何に簡単にするか、そしてそれをどう評価するか、という発想で試行錯誤が必要な難問でした。

 

<筆者の解答>

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第4問

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回転行列が対角化できないことを証明する問題です。

 

(1)これは、「ABの行列式 = Aの行列式×Bの行列式」という定理を知っていないと厳しいと思います(証明自体はさほど難しくありません)。

この定理を使うと、(#)の行列の行列式が1だと分かります。k+nという対角成分の和に興味があるので、ケーリーハミルトンの定理の使用を考えます。

ここからθの条件が求まるので、|k+n|の値についての情報を調べることができます。

 

(2) 

(2-1)ケーリーハミルトンの定理を適用すればよいでしょう。a~dが整数で|a+d|<2なので、a+d = -1, 0, 1の3つしかありえません。

 

(2-2)できないことの証明は背理法です。問題文の形にできると仮定して矛盾を示しましょう。いずれの場合もa+dの値に注目することがポイントです。

 

<筆者の解答>

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