私立最難関の一角、慶應義塾大学の医学部の問題を取り上げます。今回は2007年の問題です。
第1問
小問集合です。
(1)2次曲線の回転を考える問題です。この2次曲線上の点(x,y)が原点の周りに30°回転することで(X, Y)に移るとしたとき、回転行列を使って(x,y)を(X, Y)の式で表現して元の式に代入してあげましょう。
(2) 四角形の面積の最大値を考える問題です。余弦定理を使って∠B,Dの三角比を使えば面積Sをtの式で表現できるのですが、これの微分がやたらに汚くなります。明らかに正になる部分は省略しつつ、S'の符号を調べる本質部分だけ計算することを心がけましょう。あと、そもそも四角形が1<x<3のときしか成立しないことにも注意です。
(3)絶対値付き2次関数と接線とで囲まれた面積を計算する問題です。Cを実際に図に起こしてみると、lがCと3点で交わる条件が視覚的に分かり、それが接線になることだと分かります。ここからkを求めることができます。
最後の面積計算は、図形的に工夫して計算しないと泥沼にはまってしまいます。
<筆者の解答>
第2問
確率の問題ですが、集合の言葉で書かれているのでうまく解読する必要があります。
(1) i回後に、①にいる確率と①以外にいる確率を考えて漸化式を立てます。
(2) An ={1,2}となるのは玉が①と②を往復するとき、An = {3,4}となるのは玉が③と④を往復するときです。
(3)題意は、(お)が玉が一度も④に行かないとき、(か)がスタート以外では玉が①に行かないときです。
(4) (き)については、(お)から、An = {1,2}になる確率、An = {1,3}になる確率、An = {2,3}になる確率を引き算すればいいですし(Anの要素数は最低2つです)、(く)については、(か)から、An = {2,3}になる確率、An = {2,4}になる確率、An = {3,4}になる確率を引き算すればいいです。ここまでの考察から、①だけが特別扱いでAnに1があるかないかで確率が2分されることがわかると思います。
(5) 題意は、An = {1,2,3}かAn = {1,2,3,4}のどっちかになることです。前者は(4)で計算しているので、後者を計算しましょう。これは、全体から、「ちょうど3個玉が訪れる確率」と「ちょうど2個玉が訪れる確率」を引き算すればよいです。(4)までの結果を総動員しましょう。
(6) 題意は、Anに3と4の両方が含まれる確率です。(5)までの結果を使って計算しましょう。
<筆者の解答>
第3問
積分で書かれた関数の最小値を求める問題です。
(1) 問題文の通りに置換積分をします。
(2)絶対値を外すために、g(y)の0≦y≦1での取りうる値を調べる必要があります。この結果を使ってaの値で場合分けして絶対値を外して積分の計算を進めます。
(3) a≦0とa≧1でのf(a)の振る舞いは簡単に分かるので、実質0<a<1での増減を調べれば十分です。頑張ってf'(a)を計算しましょう。
<筆者の解答>
第4問
三角形の面積の総和を考える問題です。正直(3)まで出来れば十分で、(4)は捨てて全く問題ありません。というのも(4)は発想が難しい上に(3)までと同等以上のボリュームがあるからです。
(1) ベクトルを使った面積公式を使って計算しましょう。
(2)極限を取る場合は区分求積法を使って積分の形に変えることができます。
(3)この時点で計算が大分きつくなります。とはいえ(3)はまだごり押しで何とかなります。S1とSをそれぞれtで微分しましょう。
(4)は前述のとおり完全な捨て問です。これを本番で解けた受験生がいるとは到底思えないのですが。。
SnはΣの式で書かれているので微分してもうまく因数分解できず正負をうまく調べられません。よって、極小値を与えるtをピンポイントで調べるのは無謀です。
ここで試しにSnをtで2回微分すると、これが正の値を取ることが分かり、Snの1回微分が単調増加することが分かります。このとき極小値を持つには、t=(お)のときSn'<0, t=(お)+a/2nのときSn'>0であればよいわけなので、t=(お), t=(お)+a/2nのそれぞれのときSn'の正負がどうなるかを調べることに集中します。
とはいえ、これを調べるためにSn'の値を計算するのが非常に難しいです。正直思いつかないとまず無理だとは思うのですが、積分の問題で時々出てくる「対称性を利用して簡単な形に変える(ヨビノリさんの動画でKing Propertyと呼ばれている奴)」手法を、Σ計算に適用します。King Property を積分ではなくΣの計算に使うのは生まれて初めての経験でした。。。よしんばこれを思いついたとしても計算自体が長く大変です。
<筆者の解答>