このシリーズでは、平成の一橋数学の後期入試の問題を1年ずつ遡って解いていきます。
一橋の後期は文系向けにも関わらず数Ⅲが出題範囲に含まれています。なので、どうしても数Ⅲの知識が不可避な問題については「※数Ⅲ必須」とコメントを付けておきます。数Ⅲやってないよ、という文系志望の方は、このコメントのない問題を中心に見ておけばよいと思います。
7回目の今回は2013年になります。
第1問
誘導付きの整数問題です。
(1)与式からy<xは自明ですし、x<y+z/2yについても、差を計算すれば確かめられます。
(2)z=8√(2y-1)とすれば、(1)の不等式が利用できます。ここからどう進めるかが腕の見せ所です。
y<x<y+aの形で「整数」xが存在するためには、aが1より大きくないといけません(aが1以下だと、整数xは、整数yより大きく、整数y+1より小さい、となっておかしなことになってしまいます)。
この事実を使うとyの候補を絞ることができ、さらに8√(2y-1)が整数なので、2y-1が奇数の平方数でないといけないことから、さらにyの候補を絞ることができます。
このようにyの候補を絞ったら、あとは虱潰しにxが整数になるかを調べましょう。
<筆者の解答>
第2問
点から円に2本接線を引く状況を考察する問題です。
(1)数式処理でP1, P2の座標を求めて・・とやろうとすると計算量が物凄いことになってしまいます。
ここは、P1, P2の座標を調べることなく図形の性質から直接lの式を調べることにします。
図を描いてみると、P1P2の中点Mは、線分OT上にあります(Tを(t, t^2/8 -2)としています)。相似を利用すると、OM×OT=1が常に成り立つことが分かります。
ここで、lは円の性質から、Mを通りOTに垂直になります。これを利用することでlの式を求めることができます。
(2)いきなり円の式を文字を置いて・・とやると、これまた計算量が大変なことになってしまいますので、こちらについては、最初に求める円の候補を探してしまいます。
候補の探し方としては、lの通過する領域を調べてしまうのが手っ取り早いです。lの通過領域を調べると、概ねある円の外側全域となりますので、その境界線になっている円が、求める円の筆頭候補になります。
あとは、その円とlが接していることを確かめればOKです。
<筆者の解答>
第3問
直角二等辺三角形を二等分する線分の通過領域を求める問題です。
P(p,0), Q(0,q)と座標を設定すると、面積の条件からpq=1/2が求まります。それを利用すると直線PQの式がpの式(qの式)で書けるため、p,qの取りうる値に注意すれば通過領域が調べられることになります。通過領域の調べ方として、本解答では逆像法、別解で順像法を紹介しています。
いきなり「線分」の通過領域を調べるのは難しいので、まずは「直線」の通過領域を調べて、それを△OABでくり抜いてしまえばよいでしょう。
<筆者の解答>
別解
第4問
確率の問題です。(1)と(2)は独立したシチュエーションでの確率計算になります。
(1)これに関しては、pnの漸化式を立てて解くのがよいでしょう。青が奇数の状況で青以外を引く、青が偶数の状況で青を引く、という推移から漸化式を立てることができます。
もし、これを2k-1回青が出る確率を求めて合計する、という方法で解こうとするとシグマ計算で行き詰まってしまいます。
(2)こちらに関しては打って変わって直接計算で確率を求めることができます。
n回の操作の結果3段上がるのは、(青、黄、赤)=(0,3,n-3), (1,1,n-2)の回数の配分に限られます。それぞれに関して確率を計算して合計すればよいでしょう。
<筆者の解答>
第5問(a)
3次関数の接線に関する問題です。
x=tにおける接線の式を求め、それが(a,1)を通る条件からtの3次方程式が求まります。それが2つの実数解を持つ条件を考えます。
方程式の左辺が極値を持っていて、その一方が0であればOKです。
<筆者の解答>
第5問(b) ※数Ⅲ必須
e^πとπ^eの大小比較の問題です。すごくシンプルでキャッチーな問題ですね。
そのままの形だと大小を調べにくいので、対数を取ってあげると、最終的に1/eとlogπ/πの大小を調べることに帰着できます。
あとはf(x)=logx/xの増減を調べてあげればOKです。
実際に電卓を叩くと、e^π=23.14・・, π^e=22.45・・となり、結構僅差なことが分かりますね。
<筆者の解答>