このシリーズでは、平成の一橋数学の後期入試の問題を1年ずつ遡って解いていきます。
一橋の後期は文系向けにも関わらず数Ⅲが出題範囲に含まれています。なので、どうしても数Ⅲの知識が不可避な問題については「※数Ⅲ必須」とコメントを付けておきます。数Ⅲやってないよ、という文系志望の方は、このコメントのない問題を中心に見ておけばよいと思います。
8回目の今回は2012年になります。
第1問
三角関数の方程式を考察する問題です。
logの中身の取りうる値を調べると、左については9/16以下、右については2以下となるので、左のlogの中身=1/2^m (m≧1), 右のlogの中身=1/2^n (n≧-1)と書くことができます。
左の式が2次式で比較的処理しやすいので、左に合致するようなcosθを先にmの式で書いて、右の条件を満たすか否かをチェックする方針がよいと思います。
とはいえ、要所要所で範囲を考えてm,nの候補を絞っていかないと、なかなか厳しい検討になります。
<筆者の解答>
第2問
特殊な数列と、その和を考察する問題です。
(1)これは実験してanの様子を見ないと流石に厳しいでしょう。実験をしてみると、数字kがk+1個続くことに気が付きます。その気付きを数学的帰納法で証明します。
(2) (1)の結果を使うと、途中までは0×1+1×2+2×3+・・・・となることが分かるので、この規則で求まる整数で2012に最も近い値を見つけてあげましょう。
<筆者の解答>
第3問
四面体の体積を考察する問題です。
(1)△ABCが正三角形になることを利用して、底面積と高さをθの式で書いてあげます。
(2) t=(sinθ/2)^2とすれば、3次関数の最大最小を処理する問題に帰着します。
<筆者の解答>
第4問
図形と絡めた確率の問題です。
(1) lとCが接する条件を処理するとb=2aとなるので、そうなる(a,b)の組み合わせの個数を調べます。
(2)lがCの外側にある条件を処理すると、a<b<2aとなるので、aの値を固定してbの個数を数え、最終的にaの固定を解いて総和を取りましょう。
<筆者の解答>
第5問(a)
放物線に含まれる円の半径の最大値を考える問題です。
半径の最大値を考えるので、放物線と円が接する状況を考えればよいです。放物線と円が接するとき、「原点でのみ接する」「原点以外の2点で接する」の大きく2パターンがあるので、それぞれについて考察していきます。
円全体がy≦1に収まっている条件も忘れずに加えましょう。
<筆者の解答>
第5問(b) ※数Ⅲ必須
(1) 差を取って微分し増減を調べる、という方針で良いでしょう。右側の証明が少し手間取るかもしれません。
(2) 積分の中にある指数の肩が「-x^2/2」と2乗の形になってしまっているので、そのままでは(1)が使えません。(1)が使えるようにx^2=tと置換してあげるとよいでしょう。
あとは(1)の不等式を使って全辺積分していくのですが、1/√tを0~1で積分するという、ちょっと気持ち悪い場面が登場します。(t=0で1/√tが発散してしまう)
この積分は高校範囲を逸脱した「広義積分」というものになります。とはいえ、t=0というイヤな部分を避けるために一旦ε~1で積分をして、最終的にε→0の極限を取ればOKです。今回の場合はちゃんと収束します。
余談ですが、(2)で調べている積分の中身は、「標準正規分布」という関数(厳密にはその√(2π)倍)で、平均が0, 標準偏差1の正規分布を表す関数に相当します。
積分範囲が標準偏差と同じ-1~1であり、この積分値(を√(2π)で割ったもの)は「1σ」とよく呼ばれます。
(2)の結果を使うと、1σが66%~71%とおよそ求まります。これは「平均値からのずれが標準偏差1つ分以内に入っているデータが、全体の66%~71%を占めている」という意味になります。
参考までに、この話題と関連が深い、過去の「ガウス関数」の記事のリンクを載せておきます。
ガウス積分 ~統計学で最も重要な積分~ - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com)
<筆者の解答>