ちょぴん先生の数学部屋

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2022年度 名古屋大理系数学 解いてみました。

2022年も大学入試のシーズンがやってきました。

今回は、名古屋大学の理系数学に挑戦します。

 

 

<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)

1. 多項式の割り算 (30分)

2. 確率と整数の融合問題 (30分)

3. 複素平面上での正六角形の配置 (35分)

4. 定積分の極限・評価 (50分) ※(3)は解けていません→ヒントを頂いた結果解けました。

計145分

<体感難易度>

2<1<3<4

 

例年に比べると(名古屋大としては)易しめのセットだとは思いますが、第4問の(3)はおそらく難問で、私自身初見のノーヒント状態では解くことができませんでした。難しい第4問以外を押さえるのが勝ち筋になったかと思います。

 

<個別解説>

第1問

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多項式の割り算に関する問題です。

 

(1) x^3 =(x-a)^2Q(x)+px+qとおいて因数定理を使うのが基本です(※2次式で割っているので余りは1次以下ですね)。

 

単純にx=aを代入するだけでは条件式が1個しか出てこないので、上の関係式を一回xで微分してからx=aを代入するともう1つ条件が求まります。

 

(2) f(x)=0が重解を持つか持たないかで大きく場合分けが発生します。

 

重解を持つ場合は、(1)の結果を使うことでb,α, βが全て決まってしまいます。

 

重解を持たない場合は、因数定理で余りの条件式を2つ抽出し、解と係数の関係を使うことでβ, bをαの式で表現できます。bはαの3次式で求まるので、これをαの方程式と見なしたときのαの個数がそのままf(x)の個数になります。

 

<筆者の回答>

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第2問

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確率と整数の融合問題です。といいつつ、ほとんど条件を満たす(a,b,c)の組数を数えることに終始する整数問題の色彩が濃いです。

 

(1) cだけが仲間外れになっているので、cの値で場合分けして(a,b,c)の組数を調べるとよいでしょう。

 

(2) ab+2cと2abcの最大公約数dは、ユークリッドの互除法を使うとac+2cと4c^2の最大公約数と等しいことが分かります。

 

ここでもcが仲間外れなのでcの値で場合分けしてd=1となるようにaとbを決めていきましょう。

 

<筆者の回答>

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第3問

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複素数平面上の正六角形の配置を考える問題です。個人的に解いてて楽しかった問題です。

 

(1) 2番目の方程式を解くことでβ/αが2つ求まり、1つ目の偏角の条件から1つに決まります。

 

大事なのはβ/αの値の持つ意味です。複素数の比というのは、「縮尺」と「回転」の両方の情報を持ってるんでした。今回の場合は、βは、αを長さ2倍にして原点の周りに60°回転したものになります。

 

この条件に当てはまる頂点の組み合わせは1つしかありません。

 

(2) 3つめの方程式は綺麗に因数分解出来て、γ=(α+β)/2かγ=α+1に絞られます。前者は(1)で求まった2点の中点ですが、残念ながらこちらは頂点になりえないのでNGです。よって後者一択になるのですが、後者はαを実軸方向に+1移動した点になります。

 

あとは、Oでもαでもβでもない残り3つの頂点のどれがγになるかで、3通りの正六角形が求まることになります。

 

[3/1追記] 答案の(α,β,γ)に一部誤植がありました。訂正内容は以下となります。

(i) βとγが逆になってます。

(iii) βの値にiを追加しします。

 

正六角形の図示には影響ありません。すみませんでした。

 

<筆者の回答>

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第4問

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積分の極限と不等式評価の問題です。抽象的な関数を取り扱っていることもあり、本セット最難問の地位は揺らがないと思います。

 

(1) f(x)が単調増加なので、積分区間の中ではf(0)≦f(x)≦f(2-1/n)が成り立ちます。これを利用して積分を不等式評価し、「追い出しの定理」を使えば良さそうです。

 

(2) 前半に関しては(1)とやることがほぼ一緒です。Fn(y)が単調増加で無限大に発散することが分かるので、Fn(y)はy>2+1/nで任意の正の実数値を取ることができますし、さらにyとFn(y)の値も1対1対応します。

 

(1)で考えた積分値は正の値なので、以上をまとめればFn(an)=(1)の積分、となるanが必ず1つ見つかるということになり、それを変形すると問題文の式になります。

 

(3)こちらは長考を重ねましたが、結局解けずじまいになってしまいました。

 

(1)の積分値はnを増やせば増やすほど大きくなっていくので、(2)の知見からanが単調増加になることは分かるのですが、これが4という上限値を持つことをどう示せばいいのか、さっぱりわかりませんでした。

 

(2)までで使った不等式を使えば何とかなるかとも思いましたが、結局うまくいかず。後日改めて考え直してみます。

 

[3/2追記]

ツイッターのフォロワーさんから「f(4-x)を考えてみて下さい」とのヒントを教えて頂いた結果、無事解くことが出来ました。

 

具体的には、Fn(y)の積分をx=4-tと変換することで、(2)の方程式に登場する積分区間を統一できる、という話で、その後各積分の符号の情報からan<4が示せるという流れです。

 

初見で、この変数変換は思いつきませんでした。。。誘導無しで試験場で解くのはやっぱり難しい問題でしたね、この(3)は。

 

<筆者の回答>

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