ちょぴん先生の数学部屋

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2022年度 東工大数学 解いてみました。

2022年も大学入試のシーズンがやってきました。

今回は、東京工業大学の理系数学に挑戦します。

 

 

<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)

1. 2次方程式の解の存在範囲 (35分)

2. 対称式の最大公約数 (40分)

3. 直角三角形の軌跡 (65分)

4. 複素数平面での軌跡 (30分)

5. 確率密度関数をつかった極限計算 (45分)

計215分

<体感難易度>

4<1<5<3<2

 

数年前に牙をむいたような超難問は影を潜めています。とはいえ、簡単に解ける問題が一つもない、相変わらず手ごわいセットだと思います。

 

<個別解説>

第1問

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2次方程式の解の存在範囲を求める問題です。

 

f(z)=0の解はa,bによって実数になる場合と虚数になる場合とがあるので、まずはこれで大きく場合分けされます。いずれの場合も、一旦片方を固定して最大最小を考えると見通しがよくなります。

 

実数解になる場合は、zが実軸上に限定されるので、最大限どこまで存在できるかを考えます。

 

虚数解になる場合は、基本的にはzは円周上に存在するのですが、円周上のどの範囲にあるかを考える必要があります。

 

<筆者の回答>

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第2問

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対称式における最大公約数を考える問題です。

以後A=a+b+c, B=ab+bc+ca, C=abcとおきます。

 

(1)a,b,cはいずれもx^3 -Ax^2 +Bx -C =0 の解になります。もし、A,B,Cに2以上の公約数dがあるなら、dはa^3の約数でもあり、b^3の約数でもあり、c^3の約数でもあることになります。でもa,b,cは互いに素なので、そんなdは存在しません。

 

(2) 対称式の公式を使って、X=a^2 + b^2 + c^2とY=a^3 +b^3 +c^3 をA,B,Cの式で表現します。

 

すると、A,X,Yの最大公約数Dは2Bと3Cの最大公約数と一致することがわかります。B,Cがもし互いに素でないとすると、DはA,B,Cの共通の約数となって矛盾します。よってB,Cは互いに素だと分かります。

 

すると、A,Y,Yの最大公約数Dは、ユークリッドの互除法から、A,2B, 3Cの最大公約数と一致することが分かります。Dが5以上の素因数を持っているとA,B,Cが互いに素という(1)の結果と矛盾してしまうので、Dが素因数2,3いずれかだけでできた自然数に限ると分かります。

 

※B,Cは共通の素因数を持ちませんが、2,3を素因数に持っていることはあり得ます。

 

[3/2 追記] 実はその後、さらに深堀することができて、A,B,Cが2で割り切れるか、3で割り切れるかで細かく場合分けしていくと、Dが1,2,3,6にしかなりえないことが調べられます(この場合分けがあまりに長かったです・・・)

 

また上記の取り消し部が、ユークリッドの互除法の誤用でしたので、正しいものに記述を修正しました。

 

最大公約数の問題は、対象の整数が3つになった瞬間かなり面倒になりますね・・・

 

<筆者の回答>

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第3問

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直角三角形の軌跡を考える問題です。

 

(1) まずはPの座標(X,Y)を調べることに終始します。解答では回転行列を利用して求めています。このとき、tによらずXとYの比が一定になることが示せます。

 

(2) X,Yをtで微分して、公式通りに積分計算します。

 

(3) Dを極座標の形で表現して、そのときのrがOPよりも必ず小さくなることを示します。極座標は、y軸から偏角を取った形の方がαとの兼ね合いがよくなります。

 

<筆者の回答>

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第4問

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複素数平面での軌跡・領域を求める問題です。

 

(1) wの式をz=の形に直して、|z-1|=aに代入して変形すればよいでしょう。|w|^2の係数が0にならないことが円になる条件です。

 

(2) 直径の端点のうち虚部が正のものの軌跡を調べればよいでしょう。その点の座標はaの式で書けているので、aで微分して増減を調べます。

 

[3/2追記] 実は(2)の軌跡は双曲線であることが確かめられます。私は初見で、2次曲線の類のような簡単な軌跡にはならないだろうと考えたため、増減でざっくり概形を調べるに留めていました。でも、実は双曲線と言うよく知られた曲線になるんですね・・・

 

ということで、オマケでより精密化した図示を追記しました。

 

<筆者の回答>

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第5問

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確率密度関数を背景にした極限の計算問題です。

 

(1) 加法定理を使うとf(x)はもっとすっきりした式になり、積分計算が容易になります。(*)を同値変形するとaの方程式になるので、左辺の増減を考えるとよいでしょう。

 

(2) b≦x≦cでf(x)が単調増加であることに気付ければ瞬殺でしょう。

 

(3) ΣS = kとなることを利用すればよいでしょう。この場面におけるf(x)を、確率密度関数と呼びます。

 

(4) An,k = ΣiS/kとなるので、Anを積分のΣの形で表現できます。このまま処理しても先が見通せないので、(2)の不等式を利用して、区分求積法によるはさみうちに持ち込むべきでしょう。

 

<筆者の回答>

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