ちょぴん先生の数学部屋

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平成の京府医大数学 -2017年-

このシリーズでは、京都府立医科大学の数学の問題を解いていきます。

 

6回目の今回は2017年です。

第1問

 

正二十面体について考える問題で、この年のセットの中では突出した難問です(私自身、この問題だけで2時間くらいはかかりました)。正二十面体という見慣れない図形でもありますし、本番では捨てるないし後回しにするが勝ちだったと思います。

 

(1)正二十面体は、正三角形5個からできる上面と下面が、互いに180°回転した状態で向かい合い、その間を辺が繋いでいる、という感じの立体です。そこからおよその図が書けるので、そこから調べていきましょう。

 

ちなみに、頂点の個数をV, 辺の数をE, 面の数をFとすると、V-E+F=2が成り立つことが知られていて、「オイラーの多面体定理」と呼ばれています。

 

(2)ここからは計算地獄です。

立体そのままだと考えにくいので、適切に座標設定することが肝要です。

Qの中心Oを原点に据えるのは想像しやすいですが、その他の点はAがz軸上に、Bはy座標が0になるように設定すると見通しが良いです。A,Bの高さとBのx座標が未知なので、A(0,0,H), B(b,0,h)と設定することになります。

 

このとき、CはAの座標を符号反転したもの、DはBの座標を符号反転したものになるので、ベクトルを使うとBAベクトル=CDベクトルとなって、四角形ABCDが少なくとも平行四辺形であることが分かります。あとは、AB⊥ADが示せれば長方形だと言えます。

 

(3)(4)ここまでで使ってなかった「1辺の長さが2」という情報を利用して、b,H,hの値を具体的に求めていきます。その過程でcos36°の情報が必要になりますが、これはθ=36°としたときにcos3θ+cos2θ=0が成り立つことを利用するのが定番の求め方になります。b,H,hの全部が、そこそこ汚い式になります・・・・

 

ADは、2Hが(2)の長方形の対角線になっていることを利用して、Qの表面積は4πH^2で計算できます。

 

(5)正二十面体は、Oは頂点で底面が正三角形となる三角錐Yを20個分集めることで出来上がります。なのでYの体積を調べることに注力します。主な作業は、Yの高さaを調べることです。

 

(6)辺ABを含む2つの面について、H,Kがどんな位置関係になるかを図に描いて解明していきます。OHとOKの長さは(5)で調べたaなので、あとはなす角のcosが分かれば内積が計算できます。

 

<筆者の解答>

 

第2問

 

関数のグラフと面積を計算する問題です。

 

(1) f'(x)とf''(x)を順当に計算していきます。

 

(2)こちらも標準的な積分ですが、t=√xと置換するとよいでしょう。

 

<筆者の解答>

 

第3問

 

球面と平面の交線に関する問題です。

 

(1)z軸方向から見るとHは直線に見えるので、簡単な三角比でθが分かります。

 

(2)Cの中心をDとすると、ODがHと垂直で、DはH上にあります。この2条件から座標を計算していきます。

 

(3)円錐の高さは(2)の結果から分かるので、あとはCの半径が求まればよいことになります。すると円錐の体積がsinθの3次式で書けるので、t=sinθと変換してから微分するとよいでしょう。

 

<筆者の解答>

 

第4問

 

ロジスティック写像を題材にした数列の問題で、全体的に発想力が必要な問題となっています。

 

(1) 漸化式に従って順次計算していけばよいでしょう。この(1)の結果は、後に(5)で考える状況の一例になっています。

 

(2)y=4x(1-x)のグラフを使いつつ、数学的帰納法で証明すればよいです。

 

(3) y=4x(1-x)にy=3xのグラフを追記してあげると、グラフの上下関係から視覚的に示すことができます。

 

(4)ここからが難問ゾーンです。

直接am≧3/4となるmを具体的に探すのは大変そうなので、背理法で考えることにします。つまり、全てのnについてan<3/4となると仮定し、矛盾を導きます。

 

(3)の結果から0<a<1/4の場合はanは1/4以上の値になるまで単調増加していきます。はじめて1/4以上になった時alだったとすると、仮定から1/4≦al<3/4となります。

 

ところが、y=4x(1-x)のグラフを見ると、この範囲の時、必ずa1+1≧3/4となってしまい、仮定と矛盾してしまいます。

 

1/4≦a<3/4のときは、上記の議論を途中から始める状況と同じなので、結論は変わりません。

 

これで矛盾が示せました。

 

(5)「anが0に収束する」という状況は以下の2パターンがあります。

1. 途中で値が0になって、以後0になり続ける( (1)のような状況)

2. 0<an≦1でありつつ、限りなくanの値が0に近づき続ける

このうち、2.の状況がありえないことを証明すればOKということになります。

 

(4)の結果からam≧3/4となるmが存在して、y=4x(1-x)のグラフからその直後は必ず0≦am+1≦1/4となります。(4)で考察したように、このあとanは1/4以上になるまで増加し続け、1/4以上になった直後に、anは3/4以上になります。ここからループするというわけです。

 

なので、「限りなく0に近づき続ける」なんて状況は起こりえず、消去法で「anが0に収束するなら、それは途中でanの値が0になるとき」しかないことが分かります。

 

<筆者の解答>