このシリーズでは、京都府立医科大学の数学の問題を解いていきます。
7回目の今回は2016年です。
第1問
統計学の問題で、相変わらず各種統計量の計算がエグいです。
(1)共分散の定義をそのまま計算すれば求まります。
(2)m=n=αl (α:自然数)とすると、xkは「1,2,・・・,l」をα回繰り返すという内容のデータに、ykはそのままストレートにkそのものとなります。
その上で、x,yの平均・標準偏差、そしてzの平均の計算が必要になります。この中では、zの平均が一番工夫が必要でしょうかね。
(3) (2)と同様に考えると、xkは「1,2,・・・,l」をl+1回繰り返す内容のデータに、ykは「1,2,・・・,l,l+1」をl回繰り返す内容のデータになります。
その上で同様の統計量を計算していきますが、zの平均計算で手が止まる人が多いのではないかと思います。
困った時は、具体的に書き下してみると何か見えてくるかもしれません。足し算の順番を変えると、(1+2+・・・+l)×1+(1+2+・・・+l)×2+・・・+(1+2+・・・+l)×(l+1)となることに気が付きます。
<筆者の解答>
第2問
複素数に関する問題です。
z=r(cosθ+isinθ)と極形式にして考えると見通しが良くなります。
(1)βを計算すると、β=0になることとcosθ=0になることが同値だと分かります。
(2)α, βが両方自然数になるとき、rcosθとcosθ/rの両方が「2/3の自然数倍」になることが分かります。なので、rcosθ=2a/3, cosθ/r=2b/3とおいてa,bを調べていく形になりますが、0<cosθ≦1の縛りからa,bの条件が制限されることになります。
(3) (2)の答えは3組の共役な複素数のペアなので、Cの中心が実軸上に来るのは明らかです。そのうち2組は実部が共通なので、より虚部が大きい方を通る円を考えてあげればよいでしょう。
<筆者の解答>
第3問
パラメータ表示された曲線の図示と、回転体の体積計算の問題です。
(1)加法定理を利用すれば容易に証明できます。
(2)x,yを全てsintの式に直して、sintを消去すればOKです。その時に(3)に備えてxの取りうる値の範囲を調べておくとよいでしょう。
(3)y=f(x)として、微分で増減を調べればよいです。
(4)標準的な積分計算です。s=x+a/2と置換すると、積分区間の下端を代入して0になる形にできて見通しが良くなります。
<筆者の解答>
第4問
直線が通過する正方形の区画の個数について調べる問題です。
(1)Lkが格子点(a,b)を通るとしたときに、kが無理数であることを使って(a,b)=(0,0)しかありえないことを示します。
(2)anは、k(n-1)とknに挟まれた整数の個数から1引いたものになります。ということで、k(n-1)より大きい最小の自然数mと、knより小さい最大の自然数Mの範囲を調べていけば、与式が求まります。
(3) (2)の結果そのままでは、はさみうちがうまくいきません。なので、anをより精度高く評価してあげる必要があります。
上記のm,Mは、ガウス記号を使うことでm-1=[k(n-1)], M=[kn]と書けるので、an=[kn]-[k(n-1)]+1とできます。その状態で和を取ると、間が相殺されて結局Σan=N+[kN]となります。
この状態にまでして、ようやく不等式評価によるはさみうちに持ち込めます。
(4) 0<k<1のときは、(2)の結果を利用すると「AN = N以下の自然数nでan=2となるものの個数」が分かります。
ここで、an=2となるのがどういう状態かを考察すると、k(n-1)からknにかけてで「整数を横切る」時だと分かります。つまり、knの整数部分がk(n-1)の整数部分に比べて大きくなった瞬間にan=2になる、ということです。
ということで、[k],[2k],・・・,[Nk]の中で相異なるものの個数(何種類の「整数部分」があるか)が、AN+1となります。(※+1は植木算と同じ要領です)
これを言い換えると、AN=[Nk]というシンプルな式にできます。ここまでくれば不等式評価からのはさみうちで、極限計算ができます。
<筆者の解答>