ちょぴん先生の数学部屋

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2023年度 京府医数学 解いてみました。

2023年も大学入試のシーズンがやってきました。 今回は、京都府立医科大学数学に挑戦します。

<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)

1:  凸多面体の考察、体積(120分) ※体積が計算できてません→解けました。

2:  パラメータ表示された曲線における接線(30分)

3:  複素数の数列(30分)

4:  焦点を共有する楕円と双曲線(35分)

計215分

 

<体感難易度>

4≦3<2<<<1

 

第1問だけが飛びぬけて難しく、第2問以降は標準~やや難位だと思います。

第3問と第4問は完答したい問題ですが、第2問は「近似」操作に慣れてないと若干厳しいです。第1問は立体のイメージも難しく、そのあとの体積計算の工程も非常に長いため、最初の小問に少し手を付ける程度で捨てるのが安定です。

 

<個別解説>

第1問

 

凸多面体の考察と、それについての体積計算の問題です。

もう「凸多面体」というバリバリの空間図形でイメージするのが困難であり、なおかつ体積計算も過程含めて非常に重いため、ほぼ試験問題として機能していない超難問です。私自身2時間もかけたのに体積計算で詰んでしまった体たらくであり、安心して捨てて下さい。

 

(1)展開図の一部を切り出して考えてみることにします。1つの正三角形の面を中心にしてそれと絡む面たちを並べると、確かに1頂点に4つの面がくっ付いていることが分かります。

 

(2)(1)で考えた展開図を組み立てると、底面が正六角形のお椀のような立体ができます。このお椀を上下逆さまにして、60°ずらして接着すると凸多面体になります。(これ以降、答案では立体の絵が百花繚乱になってますが、絵心がないせいか歪な図になっちゃってます。そこは脳内補完お願いします。。。)

 

(3)これ以降は本当に難しいです。

正8面体を、面に平行で中心を通る平面で切断すると、断面が正六角形になります。(2)のお椀の底面が正六角形だったことを思い出せば、ここをとっかかりにして考えられそうです。この断面の上半分の立体からうまくお椀形状を切り出せるのでは?と勘が働きます。

 

この上半分の立体の上面は正三角形になっていて、3隅に突き出した形状をしているのですが、この突き出した部分から実は正四角錐を切り取ることができ、そうすると見事例のお椀形状になります。

 

正8面体に戻して考えてみると、各頂点がピラミッドのような形状になっているので、その半分のサイズのピラミッドを6つの頂点全てから切り出してあげれば完成することになります。

 

本番でここまで出来たら勲章ものだとおもいます。

 

(4)「多面体の体積」ではなく、「球との共通部分の体積」になっているのが嫌らしいですね。

とりあえず正8面体を使って座標設定をして、平面z=tで切った時のFとBの断面を考えていきます。

Fの正三角形の面は、元々の正八面体の面の一部なので、Bの半径は「正八面体の面と中心との距離」で計算できます。

 

F, Bの断面をそれぞれ考えて(Fについては相似を使っていく)、それをドッキングさせるわけですが、円のどの部分がFの断面から飛び出すかを検討する必要があります。このようにして、FとBの共通部分の断面の特定と、断面積は計算できました。

 

あとはこれを積分すれば答えなのですが、今年の東大第6問と同じ悲劇が起こってしまい、一部の積分が計算できずじまいで詰んでしまって終了しました(泣)。せっかくここまで頑張ったのに・・・

 

どちらにせよ、この第1問は本番で解いちゃダメですね。

 

[追記]

(4)を初等幾何を利用して再度解いた結果、体積が求まりました。

BはFの正方形の面から少しずつはみ出すので、このはみ出した分の体積をB全体の体積から引いてあげれば体積が求まります。何で初見でこれに気付かなかったんだか。。。

 

<筆者の回答>

 

(4)を解きなおしました。

 

第2問

 

パラメータ表示された曲線における接線に関する問題です。

(問題文の4-5行目の条件は、Cは2度Pを通らない=自己交差しない、という意味です)

 

(1) n=(a,b) (a^2+b^2=1)とでもおいてlの式を求め、lとQの距離を計算してあげればよいです。

 

(2)この小問では「近似操作」の知見が必要になってきます。

(1)の状況で、QがPに限りなく近づけばlは接線になっていきます。

 

とりあえずlが接線になった場合にlの式を計算することで、lが接線になる必要十分条件が、nの極限=( g'(t0), -f'(t0) )になることだと分かります。

 

さて、ここから「近似操作」をしていきます。

今回の問題ではt→t0の極限を考えるので、QHやPQは|t-t0|が十分小さいときでの近似式で考えれば十分なのです。

f'(t0)= lim(t→t0) { f(t) - f(t0) }/ {t-t0} で微分係数は定義されていましたが、これはまさに|t-t0|を無限に小さくした状況に対応します。

 

よって、「無限に小さい」という極限でなくとも、有限ではあっても「十分に小さい」という仮定の下では、

f'(t0)≒ { f(t) - f(t0) }/ {t-t0} 

と近似してよいことになります。これを変形すると、f(t) - f(t0) ≒ f'(t0) ×(t-t0)となりますので、これを使って、QHやPQを、f'(t0)やt-t0の式で近似してあげることを考えるわけです。

 

そうすると、|t-t0|が十分小さいときには、QH/PQの値は実質 |n・( f'(t0), g'(t0) ) |で決定されることが分かります。ここまでしてから、t→t0の極限を取ります。

 

前半で、lが接線になることのnの極限の必要十分条件を調べていたので代入してあげると、QH/PHの極限が0になることとlが接線になることが見事に対応関係にあることが分かります。

 

大学では特に物理や工学の分野でこの手の近似計算を頻繁に行うのですが、高校生がそれを体得してるかと言われると微妙な所ですね。

 

<筆者の回答>

 

第3問

 

複素数の数列に関する問題です。

 

(1)複素共役同士を足しているのでanが実数になることは当たり前です。が、(2)以降を見越すと、z=r(cosθ+isinθ)と極形式にして、ド・モアブルの定理で処理してanの一般項をrとθの式で求めておくのが良いと思います。

 

(2) r=√2, θ=π/4を代入してあげればよいですね。

 

(3) a(6k)=a(6k+2)を処理してできる式が、kの恒等式になるようにrとθを決めていきます。

式はcos6kθの項とsin6kθの項に分かれていてこのままでは考えにくいので、まずは特別な値であるk=0を代入してみましょう。kの恒等式ならk=0でも当然成り立ってないとおかしいですから。

これによって、「cos6kθの係数=0」、「sin6kθの項=0」が考えるべき条件になります。

 

ここで違和感を感じる人がいるかもしれません。「cos6kθの係数=0」はともかく、なんでsinの方は「sin6kθの『係数』=0」ではないのか?と。

 

もちろん係数=0の場合もOKなのですが、実は係数が0でなかったとしても抜け道があるのです。

もし、6θ自体が「整数×π」だったらどうでしょう?この場合も、kにどんな整数を入れようがsin6kθ=0になってしまいますね。なので、仮にsin6kθの『係数』が0でなかったとしても、6θ=「整数×π」であればkの恒等式になります。

 

以上が「sin6kθの項=0」を考察する理由です。kが整数値しかとらないという制限がある故に発生した特殊な場合になります。

 

ここをしっかり見落とすことなくrとθの組み合わせを調べれば、対応するzが全て求まります。

 

<筆者の回答>

 

第4問

 

焦点を共有する楕円と双曲線に関する問題です。

 

(1)まずはCの焦点が(±1,0)にあることがすぐに分かるので、そこからDの式がbを使って書けます。その後CとDを連立してyを消去すればsが求まりますね。

 

(2)Pの座標が(1)で求まったので、C,Dの接線の式を調べて直交することを確かめればよいです。

 

(3)(4)

図を描いてしまえば比較的簡単に体積が計算できます。極限計算も容易です。

 

<筆者の回答>