ちょぴん先生の数学部屋

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平成の京府医大数学 -2001年-

このシリーズでは、京都府立医科大学の数学の問題を解いていきます。

 

22回目の今回は2001年です。

(手書きでの問題文を提供して下さったせがわさん、ありがとうございます!)

第1問

恒等式に関する問題です。

 

f( g(x) )=f( h(x) )を実際に調べてみると、(g-h) {g^2+gh+h^2+p(g+h)+q}=0が任意の実数xで成立することが分かります。ここから直ちに(1)の場合は示せたことになります。問題は(2)の場合についてです。

 

g(x)-h(x)が恒等的に0にならないなら、g^2+gh+h^2+p(g+h)+q=0が常に成立しているはずです。

そこからh(x)をg(x)の式で表現することを試みるとルートが出現しますが、もしg(x)が定数でなければ、整式なのでx→∞で|g|→∞となり、ルートの中身が負となっておかしなことになってしまいます。

 

ここから、背理法でg(x)は定数関数でないといけないとわかります。

 

<筆者の解答>

 

第2問

複素数の集合に関する問題で、発想力が必要な難問です。

※特に断りはありませんが、この問題文のzとwは「等しくても構わない」、と解釈して解いています。

 

(1)類題経験があれば、「正n角形の頂点ならよいのでは?」と勘が働くと思います。

 

(2) (1)の答えを0から構築していく難問です。

zk=rk(cosθk+isinθk)としたときに、rk=1かつθk=2kπ/nであることを証明していくことになります。

 

まずrkについて。対称性から0<r1≦r2≦・・・≦rnと考えても問題ないので、rn≦1かつr1≧1であることを背理法で証明していきます。z=w=z1ないしz=w=znとしたときのzwの絶対値を考えるとよいでしょう。

 

次にθkについて、こちらも0<θ1<θ2<・・・<θn≦2πとして考えていきます。

 

問題文の条件から、z1の累乗は全てGの要素になりますが、もし数列{z1^l}に周期がなければGの要素数が無限大になってしまいます。なので、数列{z1^l}にはn以下の周期がないといけなくて、周期がT1なら、θ1=2π(m1/T1)の形にできます。

同様の議論で、θk=2π(mk/Tk)のように2π×有理数の形に限られることが分かります。

 

次が一番難しい所なのですが、「周期Tkを全てnにできる」ことを示していきます。

ここで、z1~znから適当に1つ要素を取ってそれをzkとすると、

z1zk, z2zk,・・・,znzkは全部相異なるN個のGの要素になっているので、これらの積がz1,・・・,znの積と一致します。

これを利用すると、zk^n=1が示せるので、Tkがnの約数だと分かります。この時、mk/Tkは「既約分数」とは限らないので、p*Tk=nなら分子もp倍してあげればθkは2π×整数/nの形にできます。

 

ここまでくれば、0<θ1<θ2<・・・<θn≦2πに代入することで、θk=2kπ/nが確定できます。

 

<筆者の解答>

 

第3問

場合の数に関する問題です。背景には「カタラン数」があると思われます。

 

(1)「1」の入る位置は左上だけであり、最大値である「N」の入る場所は、上段の右端か下段の右端の2パターンがあります。

 

なので、N-1の状態でマス目を1つ追加してそこに「N」を入れればよいことになります。

 

(2)この場合は「N」は右下にしか入りません。なので、k=n-1の状態で右下にマス目を追加してそこに「N」を入れればOKです。

 

(3)これは難問だと言えます。nとkが2つともが動く漸化式なので直接解くのは困難です。なので、帰納法で証明したいですが、どっちの文字に注目して考えればよいか?(2)を見るとkの方が動いているので、「kについての」帰納法を使っていきます。

 

k=1の場合は直接f(n,1)を計算して、それが与式の結果と一致することを確かめます。

 

次にn≧k-1でf(n,k-1)が与式を満たすと仮定して(1)の式を処理していきます。(1)はf(m,k)-f(m-1,k)=f(m,k-1)の形になるので、m=k+1,・・・,nを代入してmについて和を取るとよいですが、その際に2項係数をうまく間が相殺されるように変形していく必要があります。

 

具体的には分数を解消した上で「nCk=n-1Ck + n-1Ck-1 (センターを選ぶ方法の公式)」を利用していきます。

 

余談ですが、f(k,k)=2kCk/(k+1)のことを「カタラン数」と呼びます。

 

<筆者の解答>

 

第4問

立体の表面積に関する問題です。

 

(1)問題文が長いですが、Kの底面半径をrとして図に落とし込んで、r,d,a,kの関係式を調べていきます。S(h)については高さHの円柱の側面積なので計算は容易です。T(h)については相似をうまく利用して計算するとよいでしょう。

 

(2)あまりに曖昧模糊とし過ぎていて、何を答えさせたいのかがさっぱり分かりません。

(1)の結果が積分の準備段階っぽいので、積分で大小関係かな?とも思いましたが、表面積は体積と違って大小関係が視覚的にすぐにはわかりません。。。

 

ということで、問題文にある通りSのz≧bでの表面積を直接計算して何か面白い性質がないかを調べることにしました。

 

表面積の計算は2005年の第3問で解説した通り(平成の京府医大数学 -2005年- - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com))、断面の周長を「表面に沿って」積分することで計算でき、結果表面積σ(b)はbの1次関数になります。

 

1次関数ということは「差を取れば定数になりそう」と勘が働いたので、(1)と同じようにSのz=d-h/2とz=d+h/2で挟まれた部分の表面積U(h)を計算してみると、dに依存せず、球の半径aと平面の間隔hだけで決まる関数になり、さらに、なんと「S(h)と一致」します!!

半径の等しい球と円柱の同じ間隔の分の表面積を拾うと全く同じ値になる、、、非常に興味深い性質が分かりましたね。

 

もっとも、試験場ではそんな感嘆に浸ってる余裕はないでしょうけど笑

 

<筆者の解答>