ちょぴん先生の数学部屋

数学の楽しさを、現役メーカーエンジニアが伝授するぞ!

21世紀の奈良県立医大前期数学 -2005年-

このシリーズでは、奈良県立医科大学の前期の数学の問題を解いていきます。

 

18回目の今回は2005年です。

第1問

小問集合です。

 

(1)確率・期待値の問題です。

2つの目が一致する事象がk回起こる確率pkは2項分布となり、このときの賞金は1×4^k万円になるので、定義通りに期待値を計算すればよいでしょう。

 

(2)極限に関する問題で、この小問集合の中では一番難しい問題です。

 

一見区分求積法っぽいですが、Σの外に1/nがないので使えません。しかし、Σの中身はよく見るとkの単純な2次式なので、極限を取る前のΣは直接計算できます。

 

この結果を眺めると、分母分子をnで割れば分母は明らかに収束し、分子も一部の項は収束する形になっています。よって、全体が収束するには、残った「収束するか怪しい」部分が収束してくれればよいことになります。

 

その怪しい部分は、実質nの一次式の形になっていて、普通に考えれば発散しそうな式です。この式が収束するためには、n×(0に収束する式)の形になっていることが必要です。なので、nで割った式が0に収束するようにaを決めてあげれば、それが「必要条件」となります。

 

ただ、あくまで必要条件なので、実際に代入して収束する十分性をチェックする必要があります。

 

(3)関数の最小値を考える問題です。

これはf(a)の積分を実際に計算して、その結果をaで微分して考えればよいでしょう。

 

<筆者の解答>

 

第2問

集合論に関する問題です。全体的に大学でやるような純粋数学の趣が強く、慣れてないと難しいと思います。具体的な流れの把握は答案を直接見た方が早いと思います。

 

(1)AがBの部分集合の定義は、「xがAの要素ならば、xはBの要素である」です。

 

(2)Aの補集合の定義は、「Uの要素xのうち、Aの要素でないものの集合」です。

 

(3) AかつBが空集合とは、「xがAの要素ならば、xはBの要素ではない」と「xがBの要素ならば、xはAの要素ではない」が同時に成り立つことです。

 

ここから出発すると(1),(2)を使って「Bは、Aの補集合の部分集合」が示せます。

 

(4) 「Bが、Aの補集合の部分集合」から逆にたどると、「xがBの要素ならば、xはAの要素ではない」が示せます。

ここで、「Bが、Aの補集合の部分集合」と「Aが、Bの補集合の部分集合」は同じ意味なので、そこから、「xがAの要素ならば、xはBの要素ではない」も示せます。

 

<筆者の解答>

 

第3問

複素数平面に関する問題です。

 

(1)左辺を力づくで計算して、8になることを示していきます。具体的には絶対値の2乗を展開したうえで通分するとよいでしょう。

 

(2)当然ながら(1)の式を利用したい所です。

そのために、△ABCの外心を原点にするような複素数平面を考えてあげます。この時に、A,B,Cを表す複素数を、da/2, db/2, dc/2としてあげると、AB=|d(a-b)/2|などと表現できて、見事に与式が(1)の前半部分になると分かります。地味にdは直径なことに注意です。

 

そうなれば、最終的に(a+b) (b+c) (c+a)=0がわかり、例えばa+b=0は、ABが外接円の直径となることを意味します。これは円周角の定理からC=90°ですね。

 

<筆者の解答>

 

第4問

行列が2乗の形で書ける条件を調べる問題です。

 

やることが分かりにくいですが、目指すことはX,Yの各成分をa,b,cの式で表現することです。これができれば、「X^2=A, Y^2=AとなるようなX,Yが存在する」と言えたことになります。

 

(1)(2)共通で、X,Yを直接2乗して、それがAと一致する条件が計4つ求まります。

 

(1)では、zが最初にaの式で書け、そのzを使って、x,yがb,cの式で書けるので、それらが残りの式と矛盾しない条件を調べていけばよいです。(2)でも作業は殆ど同じです。

 

<筆者の解答>

 

第5問

点の移動に関する問題です。

 

(1)問題文の設定を式に落とし込むと時刻tでのP,Qの座標が求まり、Rの座標も求まるので、それをtで微分すると速度ベクトルが、もう1回tで微分すれば加速度ベクトルが求まることになります。

 

(2) (1)の結果で大きさを計算すればよいでしょう。

 

(3) dy/dx=1を計算しましょう。

 

(4) (2)で求めた速さをtで積分すると道のりLになります。ですが、この速さの式は直接計算できない形になっているので、速さの式を積分できる式で挟んで不等式評価する必要があります。1より大きいのは明らかなので左側の2π<Lはすぐに分かりますが、問題は右側についてです。

 

ここで、物理などでよく使う近似式 √(1+h)≒1+h/2が思い浮かべれば、√(1+h)<1+h/2と評価できるのでは?と勘が働きます。この発想が浮かんでくるかがカギになりました。

 

<筆者の解答>