皆さん、こんにちは。
今回は、久々に図形ネタを取り上げます。
タイトルの通り、『三角形を1つ準備すると、その「重心」「外心」「垂心」がすべて同一直線(オイラー線)上に乗る』という性質があり、それを
1. 初等幾何を使う証明
2. 座標平面を使う証明
3. ベクトルを使う証明
の3通りで証明していきたいと思います。
0. 復習:「重心」「外心」「垂心」
まず、今回の登場人物である「重心」「外心」「垂心」をおさらいします。
0-1. 重心
重心は、各3頂点からの「中線」が交わる点です。中線は、ある頂点と、それに対する辺の中点とを結んだ直線のことです。
このとき、重心Gは中線を2:1に内分するという性質があります(ベクトルを使っても、メネラウスの定理を使っても簡単に証明可能です)。
0-2. 外心
外心は、三角形の外接円の中心で、各辺の垂直2等分線の交点でもあります。記号でしばしばOと書かれます。
0-3. 垂心
垂心は、各頂点から対する辺に下した垂線の交点です。記号ではしばしばHと書かれます。
0-4. オイラー線
これら重心G、外心O、垂心Hは、「同一直線上に載っていて、かつGがOHを1:2に内分する」という性質を持っていて、この直線をオイラー線と呼ぶわけです。これが今回証明したいことです。
以下、このことを3通りで証明していきます。
1. 初等幾何を使った証明
まずは、上記の知識があれば中学生でも証明可能な初等幾何による証明方法を紹介します。機械的に解くわけではないので、巧みな補助線が必要になります。
全体の方針としては、
外心Oと垂心Hを結んだ直線と中線の1つとの交点G'が、重心Gと一致する
を示していくことになります。
以後、図を使って説明していきます。
1.
まず、三角形の1頂点(下図ではB)とOを通る直線を引き、それと外接円との交点をFとします。つまり、BFが外接円の直径になるようにFをとるわけです。
そして、頂点Aとこの点Fを結ぶ線分を補助線として引いておきます。
2.
すると、直径BFを境にして2つの三角形ができますが、円周角の定理からそれらは直角三角形だとわかります。
3.
頂点Cから辺ABに下した垂線の足をEとすると、2の事実から下の絵の2組の線分がそれぞれ平行だとわかります。
緑のFC,AHについては、Hが垂心なので「AHとBCが垂直」という性質を使っています。
4.
3で示したことから、1つの平行四辺形が出来上がります。ここから、AHとFCが同じ長さだとわかります。
5.
ここで視点を変えて、下の青い2つの直角三角形に注目します。
すると、外心の性質からOから辺BCに下した垂線の足DはBCの中点になるので、この2つの直角三角形が、相似比2倍の相似の関係にあることが分かります。
6.
4で示した事実と5で示した事実を合わせることで、OD:AH=1:2が分かります。
7.
ここまでの議論では重心の情報を全く使ってないので、最後の補助線として中線ADを引きます。
このとき、直線OHと中線ADの交点をG'とします。このG'が実は重心Gそのものだと示すのが目標です。
8.
すると、下図のような相似な2つの三角形が浮かび上がります。
ODとAHの両方がBCに垂直なので、この2つの線分は平行であり、対角と錯角が等しいので相似だといえます。
9.
ここで6で示した事実からこの相似比が1:2だとわかるので、AG': G'D=2:1がわかります。
冒頭で述べた、「重心は中線を2:1に内分する」という性質から、このG'が実は重心Gそのものだとわかります。
10(最後).
以上の流れから、外心O, 重心G, 垂心Hはこの順に同一直線上に並んでおり、なおかつOG:GH=1:2となっていることが証明できました!!
補助線の引き方や着眼点に発想が必要なので、この証明を初見で思いつくのは中々厳しいところです。
ということで、次からは機械的に証明できる「座標平面」「ベクトル」での方法を紹介します。
2. 座標平面を使った証明
おそらく最も簡便に証明できるのが、ここで紹介する座標平面での証明方法です。
まず、辺BCがx軸上に、かつ中点Dが原点に来るように置き、Aをy座標が正になる位置に置きます。具体的にはA(a,b), B(-c,0),C(c,0),D(0,0) (a≧0, b>0, c>0)と座標設定します。
(※対称性から、Aのx座標は0以上として問題ないです)
このとき、重心Gの座標は、A,B,Cの各座標の平均なので、
となります。
次に、外心Oの座標を
とすると、(※原点と記号が紛らわしくてすみません。。。)
Oは外接円の中心だったので、OA=OB=OCとなっていなければなりません。座標の設定の仕方からOB=OCは自動的に成立してるので、OA=OCだけ考えればOKです。よって、
とdが求まります。
今度は垂心Hの座標を
と設定します。HはAから辺BC(x軸)に下した垂線の足なので、Aとx座標が一致します。
この状態でHのy座標hを調べていくのですが、それにはBH⊥ACを利用すればよさそうです。
まず、a=cの場合は、辺ACがy軸平行なのでBHはx軸平行です。なので、
となります。
a≠cの場合は、傾きの積=-1を利用することで、
とhが求まります。
途中で分母にa-cが登場するので、予めこれが0になる場合を例外扱いしたわけですが、結局この2つの場合分けの結果は1つにまとめられますね。
こうして重心G, 外心O, 垂心Hの座標がすべてa,b,cの式で求まったので、あとは直線OHの方程式を求めて、Gがこの直線上にあることを確かめれば終了です。
最初に、a=0の場合を先に扱ってしまいます。
このとき、3点の座標は
となるので、すべてy軸上にあることになり「同一直線上にある」という条件はクリアでき、さらに比の関係も容易に計算できます。
こうして、OG:GH=1:2だとわかります。
次にa≠0の場合について考えます。
直線OHの式は下のように求まり、
ここにGのx座標を代入すると、
Gのy座標が出て来ました。これで、Gもこの直線上にあることが示せました。
3点が同一直線上にあることが分かったので、比の関係は「x座標の差の比」に帰着して計算できます。
結局同じくOG:GH=1:2になります。
ちなみに、この証明方法では、「重心、外心、垂心が一致する条件」も併せて調べられます。
OG:GH=1:2という比の関係は一定なので、一致するなら3点が同時にすべて一致します。
その場合、まずx座標がどれも一緒なはずなのでa=0が必要です。これで2等辺三角形にまず絞られます。
それで、あとは点同士の距離が0になっているので、GH=0⇔b=√3cとなります。
以上の結果を使うと、AB=BC=CAが分かるので、結局3点が一致する必要十分条件は「正三角形であること」だと分かります。
いずれにせよ、この方法であればあまり発想もいらず機械的に証明できてしまいます。
3. ベクトルを使った証明
最後にベクトルを使った証明方法を紹介します。こちらも機械的には解けるものの、計算がかなり煩雑で大変です。
全体の方針としては、重心G, 外心O, 垂心HのAを始点とした位置ベクトルを、すべてABベクトルとACベクトルの和で表現して、OGベクトルとOHベクトルをAB, ACベクトルで直接計算する
というものです。
まず重心Gについては、容易に立式できます。
次に外心Oについて考えていきます。今回の場合は「外心=各辺の垂直2等分線の交点」という性質に着目すると見通しがよいです。ベクトルの世界では「垂直=内積0」となるので、垂直という性質はベクトルと相性が良いのです。
この内積の処理でAB・ACが必要になるので、先に余弦定理で求めてしまいましょう。
この条件の下で、OE⊥AC, OD⊥ABを処理していくと、次のように係数が求まります。
さらに垂心Hについても同様に、CH⊥AB, BH⊥ACを利用すると次のように位置ベクトルが求まります。
これで3点すべての位置ベクトルが求まったので、OGベクトルとOHベクトルを、ABベクトルとACベクトルの式で計算すると、下のようになります。
このように、OHベクトルがOGベクトルの3倍となるので、「外心O, 重心G, 垂心Hはこの順に同一直線上に並んでいる」「OG:GH=1:2となっている」という示したかった2つの事実が同時に証明できたことになります。
計算のごり押しで機械的に証明できるものの、結果がかなりごついものになり、座標平面の時のようには「3点が一致する条件」を調べるのは簡単ではありません(方針は、OHベクトルの各係数が0になる条件を調べる、です)ので、ここでは省略します。
以上のように、「初等幾何」「座標平面」「ベクトル」という3通りで証明してみましたがいかがだったでしょうか?このように、どのアプローチをとっても同じ結果が得られるというのが数学の凄いところですね。
他にも別解があるかと思いますので、もしあればコメント欄で教えてください。
ではでは。