ちょぴん先生の数学部屋

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21世紀の奈良県立医大後期数学 -2023年-

奈良県立医科大学の2023年度後期の数学の問題を解いていきます。

第1問

 

楕円と直線の交点に関する問題です。今回のセットでは最も簡単なため落とせない問題だといえます。

 

(1) 2つの方程式を連立したとき、それが2つの実数解を持てばOKです。

 

(2) (1)で作った方程式の解と係数の関係を使って、線分P(t)Q(t)の中点の座標をtで表現していきます。

 

<筆者の解答>

 

第2問

 

方程式の解についての問題です。(2)はひらめきが必要です。

 

(1) Enの左辺をf(x)としてx>0でのf(x)の増減を調べるのが主軸です。単調増加なことはすぐに分かりますし、f(0)<0, f(+∞)=+∞が分かればy=f(x)が必ずx軸を横切ることもわかります。

 

(2) anの式を直接求めることはできないので、f(x)の単調増加性を利用して「はさみうち」を使うのではないかと想像できます。

いくつかxに具体的な値を代入してみると、f(1)=-1<0, f(2)>0がわかるので、1<an<2であることが分かります。さらにf(3/2)>0もわかるので1<an<3/2まで範囲を絞れます。

 

ここでの実験から、anは1に収束するんじゃないかと予測できます。

 

anが1に収束することを示そうと思ったら、

bn>1, f(bn)>0, bn→1 (n→∞)

を全て満たすような数列bnを見つけて、1<an<bnと評価しはさみうちを適用すればよさそうです。

ということで、このbnをうまいこと見つけてくるのがこの問題のメインテーマとなります。ここで発想力が問われるわけです。

 

1より大きく1に収束する数列として、1+c/n(cは正の定数)がすぐに思いつきますが、これだとkが複数の項に渡って残ってしまうのでf(x)の符号判別が困難です。

 

ということで、kがなるべく消えるように工夫をします。すると、

bn = (1+c/n)^{1/(k-1)}

としてみてはどうでしょう?すると、f(x)の2項目からkが消え、さらに嬉しいことにnの1次式も消えてくれます。実際にcをc≧2となるようにとれば、f(bn)>0が必ず成立します。

 

<筆者の解答>

 

第3問

 

恒等的に不等式が成立する条件を考察する問題です。

今回の[r]は、よく出てくるガウス記号「ではない」ことに要注意です。たまにこういうヒッカケめいた設定が出てくることがあるので、日頃から問題文は注意深く読む必要がありますね。

 

今回の[r]は、問題文の設定からr≦[r]<r+1と不等式評価できることがポイントです。

 

(1) 不等式の形から、x^3+y^3+z^3-3xyz=(x+y+z)(x^2+y^2+z^2-xy-yz-zx)の因数分解を使うことを思いつきたいところです。(この式はx~zが全て正なのでx=y=zのときのみ0になります)

両辺から3xyzを引くことで「左辺の取りうる値は0以上1未満、右辺の取りうる値はa以上」という結果が得られます。

となれば、a≧1であればGの不等式は自明に成り立つことになります。

 

(2)要するにa<1ではGが成立しないことを証明すればよいわけです。つまり、a<1だと『[3xyz]≧x^3+y^3+z^3+aとなるようなx,y,zが取れてしまう』ことを証明します。

 

(1)で確かめたように、不等式は両辺を3xyzで引くと「左辺の取りうる値は0以上1未満、右辺の取りうる値はa以上」という状態になります。ここで左辺の範囲と右辺の範囲がオーバーラップしてはGが成立しないわけです。

 

a<0の場合は当然x=y=zのとき左辺>右辺となってダメなので、0≦a<1の場合について考えます。

f(r) = [r] -rという関数を考えそのグラフを描くと、このf(r)は0以上1未満の値を「隈なく」取ることができるので、右辺の値がaだと、f(r)=aとなるrが必ず存在してしまいます。ということで0≦a<1の場合もNGだとわかります。

 

<筆者の解答>

 

第4問

 

自然数を平方数の和に分解する問題で、本セット最難問です。

このシチュエーションを実際に実験してみると「できるだけ大きい平方数を先に使いつつ左から並べて和を取る」という操作をしてることが分かります。

 

niを次々求めていき、ルートの中身がi=lで平方数になったら、nl+1=0となって終了する、という仕組みになっていることに注意していきましょう。

 

(1) m=k^2のときはn2=0となるのでl(k^2)=1となる一方、m=k^2-1のときはn1=k-1でn2≠0となるのでl(k^2-1)≧2になります。これは実験すればすぐに分かるので簡単です。

 

(2)mが平方数の場合は(1)で調べたので、今度はmが平方数でない場合を調べます。この辺りから難しくなっていきます。

 

結論としては、(2)は背理法を使って証明します。つまり、l(m)=l(m-1)=Lとなるような平方数でない自然数mが存在すると仮定して、矛盾を導きます。

 

m=ΣMi^2 , m-1 =ΣNi^2 (項数はともにL個)と分解できたとします。今回mが平方数ではないので、√mと√(m-1)の整数部分は等しくなるはずです。よってまずはM1=N1が言えます。

次にi=2について考えますが、その際は√の中に入るm-M1^2, m-1-M1^2がそれぞれ平方数になるかどうかが関心事です。もし一方だけが平方数だとすると、平方数になる方のiの番号はそこで打ち止めになる一方、平方数にならない方はその後もiの番号が続いてしまいます。これはl(m)=l(m-1)の過程に反するので、「どっちも平方数」か「どっちも平方数でない」しかありえないことになります。

 

以上の操作を続けると1≦i≦L-1でつねにMi=Niとなることがわかります。

すると、ML^2 -NL^2 =1にならざるを得なくなりますが、こうなる自然数ML, NLは存在しません(因数分解すれば即座に分かります)。

 

これで矛盾が示せましたので、mが平方数でない自然数であってもl(m)≠l(m-1)が言えました。

 

(3) とりあえず、まずはm=1,2,3,・・・・で具体的に実験してl(m)の値を調べることが第一です。

すると、mが平方数の時はl(m)=1となり、それ以外の部分では、先頭のn1^2より後ろの和が規則的に循環することが分かります。(m=25あたりまで調べると規則が明瞭に見えてきます)

 

規則をまとめると、m=k^2 +j (0≦j≦2k)のとき、l(m)=1+l(j)となります。この規則性が読み取れれば大きく前進します。

 

m=25まで調べれば、a=23であることはすぐに分かります。

このとき、l(m)=6を実現しようと思えば、上の規則からj=23であればよく、0≦j≦2kからkの最小値が12だとわかるので、b=12^2+23=167と計算できます。

同じ要領でcも計算することが可能です。

 

<筆者の解答>