第11弾は、一橋大です。 今年度初の文系向け問題です。
<概略> (カッコ内は筆者が解くのにかかった時間)
1.10^nを2020で割った余り(31分)
2. tanの方程式の解の個数 (22分)
3. 内積の最大最小 (25分)
4. 積分を含む関数の最小値 (13分)
5. 合計点がn点になる確率 (19分)
合計110分 (参考:試験時間120分)
<体感難易度>
易レベル:なし 、標準レベル: 4,5 、やや難レベル:1,2,3 、難レベル:なし
難易度は、去年と同等かやや難化かと思います。
文系の受験生が解くという視点だと、着想が少々面倒な問題が多いです。
第1問
10^nを2020で割った余りを考える問題です。
大学入試あるあるですが、整数問題にはその年の西暦を使った問題が度々出題されますが、これはまさにその1つですね。
(1)は、まず10^10と2020の両方が20で割り切れるので、余りも20の倍数になることに注意しましょう。すると、余りが20r (0<r<101)で書けるので、今度は101で割ったときの余りがどうなるかをチェックすればよいわけです。
101が100にとても近い数だというのも嬉しいポイントですね。
(2)は、まず条件を満たす100桁の整数は、
・20000・・・000= 2×10^99
・1000・・1・・00 = 10^99+10^k (0<k<98)
の2種類しかないことが分かりますが、前者は101で割り切れないのでNGなことは一目瞭然ですね。よって、10^99を2020で割った余りと、10^kを2020で割った余りをそれぞれ調べて、余りが足して2020になるようなkの条件が分かればよいことになります。
(1)と同じようにして愚直に調べましょう。
<筆者の答案>
第2問
tanθの方程式の解の個数を数える問題です。
面倒くさいことが起こらないハッピーな状況であれば、tanθ=tとして、2倍角の公式を使ってtの三次方程式に持ち込むことができますので、最初にその面倒くさくなる条件を除外しましょう。
面倒くさくなる状況は何かというと、tanθとかtan2θが無限大に飛んでしまうケースですね。
まず、tan2θが無限大になってしまうのは、θ=π/4, 3π/4のケースですね。これはどうあがいても回避不可能なので、この2つは定義域から外してしまいましょう。
次に、tanθが無限大になってしまうのは、θ=π/2のケースです。これもダメかと思いきや、たった一つだけ回避方法があります。a=0であればtanθが消えて、面倒くさくなる爆弾が消えることになります。逆にa=0であれば、θ=π/2は問題なく方程式を満たします。
これで面倒事はすべて消えたので、最初に書いた通り、tの3次方程式に持ち込みましょう。この3次方程式はt×(tの2次式)=0の形になるので、t=0は必ず解になります。
よって、残った2次方程式が解をいくつ持つかを調べていきましょう。aの値による場合分けですね。
この問題の難しいポイントは、こうした特殊な状況を如何に除外できるか、という点でした。
[3/17追記]
θ=π/2のケースを最初から除外して、a=0のときも解一個とする解釈もokだと思います。θから先に決めるか、aから先に決めるかで解釈が別れる格好です。私は、aが定数と言っている以上、aありきで考えるべきだと解釈しました。
問題文で「aは0でない」としておけば、この解釈違いは起こらないので、より良い問題になると思います。
<筆者の答案>
第3問
内積の最大最小を求める問題です。
問題文そのままでは抽象的でよく分からないので、座標平面に落としましょう。
ここでは、原点中心の単位円を用意して、
A(1,0), B(cosα,sinα), C(cosβ,sinβ) (0<α<β<2π) とおいて進めるのが一番わかりやすいでしょう。
ここから内積の値を計算するのですが、文系の範囲で解こうとするなら、和積の公式や加法定理を駆使してまとめていく必要があります。
(三角関数の微分を使っていいのなら、この時点でいきなり予選決勝法を使うという手段がとれるのですが・・。それはそれで面倒くさくなりそうなので、下に書く方法がどっちにしろベストです。)
すると、cosの中に(β-α)/2が入ったものと、(β+α)/2が入ったものが作れますので、それぞれをx,yとおいて、予選決勝法を使いましょう。xについてはcosxの二次関数、yについてはcosyの一次関数とみなせる式が出来上がるはずです。
予選決勝法で固定する文字については、動かしたときの値域が簡単にわかる1次関数になっている、yを先に動かしたほうが良いでしょう。
最後の答えについて、最小値については異論なく求まりますが、最大値の存在については解釈の余地を残してしまっています。
3点のダブりを許してよいなら最大値は存在しますが、3点のダブりを許さないと解釈すると最大値が存在できなくなります。この辺は、しっかり問題文で明記すべきだと思います。(答案ではどっちに解釈されてもいいように両方書きました。)
<筆者の答案>
第4問
この問題は、初手がとにかく肝心で、初手さえできれば典型問題です。
まず積分の中を見てみると、絶対値が入っているので何とか外したいです。ところが絶対値の中身にt,xが混在していて、どうやって絶対値を外せばいいかが分かりにくくなっています。
「文字が2つあるから面倒だ。だったら絶対値の中を1文字で表現すればいいじゃん」という初手が思いつけるかが大きな分岐点です。
つまり、s=t-xと置いて、tの積分からsの積分に読み替えてあげればよいわけです。すると、積分の中にある関数が平行移動するので、積分区間も供ずれで(2-2x~2)にシフトすることになります。(理系数学で言う、「置換積分」をやっているわけです。)
これで第1関門は突破です。
次の課題は絶対値の外し方ですが、これは積分区間2-2x<s<2に0が入っているかそうでないかで場合分けすればよいわけです。
結局、xの値によってF(x)の形が変わることになります。(直線の部分と、比例と反比例を足したような部分に分かれる)
直線部分の最小値はさすがに大丈夫ですよね。問題は、直線でない部分の最小値をどう出すか?理系であれば微分すればよいのですが、文系範囲を超えてしまいます(1/xの微分をしないといけないので)。
そういったときはお決まりの方法がありました。相加相乗平均です。今回はx+a/xの形が登場するので相性抜群です。
最後に2つ出てきた最小値を比較してフィニッシュです。
<筆者の答案>
第5問
合計n点になる確率の問題です。
(1)で実験をさせ、(2)で一般の場合について考えろ、という構成のようです。
(1)については、言われたとおりに実験しましょう。どういう出方をすれば合計がnになるのかを個別で調べます。ですが、(2)を解く手がかりとして、(1)を解きながらpnの規則性に気づいてほしいですね。
(2)はpnの一般項を求めるのが第1ステップです。
このゲーム、最後に加算される点数は、1点か2点だけなのです。
これをよくよく考えると、合計点がn点になる状況は、最後の1回だけに注目すると
・合計点がn-1点 →表を出して1点加算
・合計点がn-2点 →裏を出して2点加算
の2パターンしかないことになります。
上の状況が見破れれば、pnの漸化式を立てることができて、pnの一般項を求めることができます。
あとは、|pn+1-pn|を計算して0.01と比較するだけのおまけのようなものです。
<筆者の答案>