ちょぴん先生の数学部屋

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平成の東大理系数学 -2019年-

このシリーズでは、平成の東大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。

東大の数学の問題は、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。

(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )

 

初回は、2019年の問題です。

第1問

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  この年のセットで、最も話題になった問題かと思います。こうした只の定積分を計算させる問題は東大としては前例がなく、面喰った受験生が多かったと思います。

 東大がわざわざ積分をするだけの問題を1問目に出したということで、見た目も威圧感たっぷりで、「なんかテクニカルな変換とかをしないと手も足も出ないのでは・・」と深読みしてしまいそうという意味でも恐ろしい問題です。

 

 しかし、この問題は実は見かけ倒しで、頻出テクニックを丁寧に使っていけば解けてしまう、このセットで完答すべき問題の1つとなっています。

 

 さて、まず何をしましょうか。ここで心得ておくとよいのは、「積分は、積の形と相性が悪く、和の形と相性がいい」ということです。というわけで、躊躇なく積分の中身を展開して、4つの積分に分けてしまいましょう。

 

最初の積分は、説明するまでもない簡単な計算です。

2番目の積分は、分母の微分が分子に乗っかっていることに気づけると計算できます。

3番目の積分も、2番目と同じ発想で計算ができます。

4番目の積分も同様で、最終的にx=tanθのお馴染みの置換が登場します。

 

以上4つを最後に足し上げて終了です。答えが汚いので、計算ミスには注意です。

<筆者の解答>

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第2問

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  第1問とは打って変わって、穏やかな最大最小問題で、この年では最易問と言えると思います。

  最終的にDRとAQの長さが知りたいので、それらを、r,qとおいて、さらにAP=pとおいて、与えられた条件を使って文字を消していくというのが常套手段でしょう。

  ただ、この問題には落とし穴があり、「それぞれの文字の変域を正しく出せるか」が問われています。これを怠ると最大最小がうまく出てきません。

  なので、定義した文字の変域を意識して解き進めていきましょう。

 

[訂正]

pの値域を求めるグラフにミスがありました。答案ではpq=1/3のグラフを誤って書いてしまっていますが、正しくはpq=2/3のグラフを描くべきでpの最小値は2/3となります。

それにともない、最終結果の最小値も2/3が正しいことになります。議論の大筋には影響ありませんが、ミスに気付けずすみませんでした。

 

<筆者の解答>

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第3問

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  頂点がずれた正八面体を平面で切った断面を考察する問題で、この年の最難問です。本番では後回しにして時間に余裕があれば手をつける、ぐらいで良いです。

  難しい点は、やはり空間図形である点で、図形を頭の中でイメージできないと厳しいものがあります。そして、解き切るのにかなり時間がかかります。

 

 (1)は、点Pが平面αに触らない、触る、貫通するで3通りの図が書けます。これだけは頑張って描きましょう。

 (2)は、平面と八面体の各辺との交点を考えることになります。

まずは、点Pの影響を受けない下半分を考えると、この時点で交点が5個あることが分かります。よって、断面が8角形になるためには、上半分で3個交わればよいことになります。そこで使えるのが(1)の図になります。

 (1)に、線分OPを付け加えてみるとよく分かってきます。Oの位置にはBとDがダブって存在しているので、OPはBPとDPがダブったものと考えられるわけですね。APやCPとαとの交わりは、図から一目瞭然なので、交点の個数が数えられることになります。

 

 (3)は、問題文の意味が分かりにくいです。どういうことかというと、

「(2)で考えた断面に、x軸に平行な光を当てた時、yz平面にできる影を考えてね」という意味になります。

ということは、(2)で求めた交点たちに対して、x座標を0にすればこの影が表現できることになります。これさえ見抜ければ難しくありません。

<筆者の解答>

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第4問

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 平方数に関する整数問題で、とても良い問題だと思います。難易度的には、合否を分けるような差がつく問題といったところです。

 

 (1)は、最大公約数を求めるので、ユークリッドの互除法を使いましょう。

  「ユークリッドの互除法:AとBの最大公約数=AをBで割った余りrとBの最大公約数」

 (2)は、「○○でない」を証明するので、背理法で証明します。

 ここで、平方数に関する2つの有名な性質が、この問題を解くカギとなります。

性質1「互いに素な自然数A,Bについて、ABが平方数⇒Aも平方数、Bも平方数」

性質2「平方数を4で割った余りは0か1」

  (1)から、n^2+1と5n^2+9は互いに素(もしくは最大公約数2)だと分かるので、性質1を使うと、両方とも平方数になってないといけない、ということになりますが、それから矛盾が生まれるという流れになります。

<筆者の解答>

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第5問

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  直接一般項を計算できない数列の極限を求める問題で、総じて発想力の必要な難しめの問題です。

  

      (1)は、0<x<1だけ考えればよく他は無視していいことを見抜けたでしょうか?そのもとでxの奇数乗と、cosのグラフを描けば一目瞭然です。

   (2)は、(1)ができれば当たり前に分かります。

問題は(3)です。グラフを描いたときに予想できるかと思いますが、anは1に近づきそうです。具体的に書けないanを不等式で挟む、はさみうちを考えてみましょう。このときに(2)がヒントとなっています。このaを出すところが一番発想の要る難所です。

bは、aがわかれば簡単に分かります。cは、微分の定義に戻って考えるとよいです。

<筆者の解答>

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第6問

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  複素数の問題ですが、条件整理が煩雑な難問です。

 

(1)実数係数の4次方程式の解は、以下の3パターンしかありません。

 [Ⅰ]4つとも実数

 [Ⅱ]2組の共役な虚数

 [Ⅲ]2つが実数、残り2つが共役な虚数

そのうえで条件3がかなり強力な制限となっているため、[Ⅰ][Ⅱ]はNG, 消去法で[Ⅲ]しか残らないということを示しましょう。

 

(2) (1)から、α、β、γ、δのうち2つが実数だと分かりました。このなかで好きな2つを実数にして、、とは問屋が卸してくれません。やはり条件3の縛りによって、(α、β)のペア、(γ、δ)のペアを実数にするのがNGだと分かります。逆に言えば、それ以外のペアであればOKなので、好きな組み合わせを選んで進んでいきましょう。

 

次は条件2の方程式を2通りで表現して係数比較すれば、b,aの関係が分かります。

 

(3)はα+β= x+ iyとしてx,yの関係式を求めるという流れです。このとき、x,yのとりうる値の範囲には注意を払いましょう。

<筆者の解答>

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