このシリーズでは、平成の東大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。
東大の数学の問題は、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。
(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )
15回目の今回は、2005年の問題です。
第1問
logx/xのn次導関数の一般式を求める問題です。
(1)は数学的帰納法で良いでしょう。
(2)は(1)で求めた漸化式を解くのですが、bnはhnを使わずとも漸化式を繰り返し使うだけで求められます。anについては、両辺をうまく割り算してあげると階差数列に帰着できます。
<筆者の解答>
第2問
複素数の条件を処理する問題で、難問です。
まず、問題文の意味が非常に分かりにくいです。wの条件が、「w=z^2-zならば|z|<5/4」なので、w=z^2-2zをzについての式に書き換えれば、厳密さには欠けますが、
条件は、「z-1=√(w+1)ならば|z|<5/4」と言い換えられ、つまり
「|z|=|1+√(w+1)|<5/4 となるようなwを集めたものがT」と言い換えられます。
ただ、ここで「複素数w+1の平方根」というのがピンとこないと思います。
こういうときは定義に立ち返ってみればよく、「2乗するとw+1になる複素数」となります。
こんな複素数の「1つ」をαとすると、-αも「複素数w+1の平方根」になります。
このあたりは、「1の3乗根のうち虚数のものをωとすると、ω^2も1の3乗根になる」と似ています。
ともあれ、w=z^2-zをみたすzは、z=1+αと、z=1-α の1つが存在することが分かります。
この2つが両方|z|<5/4を満たす必要があるので、Tは、
「|1+α|<5/4 かつ |1-α|<5/4 を満たすα (w+1の平方根の1つ)を全部集めたもの」
と言い換えることができます。
w=α^2-1 より、|w|は、|1+α|=5/4 かつ |1-α|=5/4 の時に最大値をとることが分かります。
ここまでくればこの問題を無事解くことができます。
複素数の平方根、のような概念は大学以降で習うので、その先取りのような問題でした。
<筆者の解答>
第3問
一般項で直接書けない数列の極限を調べる問題で、(2)が難問です。
(1)は、f(x)を2回微分すればf'(x)の増減が分かります。
(2)は、f(x)=xの解を何とか調べようという問題で、x=1が解であることはすぐに分かります。
よって、x0=1のときは、x0=x1=x2=・・・=1となるので、極限が1になるのは当たり前です。
さて、x0≠1のときにどうなるかです。
極限が1になることを言いたいので、最終的には、
|xn-1| < (1より小さい0以上の実数a)^n ×定数b
を証明してはさみうちに持ち込みたいです。
このときに「1より小さい0以上の実数a」をどう見つけてくるかが課題となります。
ここで発想が必要となるのですが、高校数学ではあまりなじみがない「平均値の定理」を使うと、
(xn+1 -1)/ (xn-1)をf'を使って表現することができ、(1)により、その最大値が1/2となります。
その根拠づけとして、
x0<1のとき、1/2<x0<x1<x2<・・・<xn<・・・<1
x0>1のとき、1<・・・<xn<・・・<x2<x1<x0
を証明して、(xn+1 -1)/ (xn-1)=f'(c)となるcが確かにc>1/2になっていることを言いましょう。
この問題の成果として、x>1/2では、f(x)=xはx=1しか解がない、ことが分かります。
<筆者の解答>
第4問
シンプルな整数問題です。a^2とaの下4桁が同じになるaを求める問題と言い換えることもできます。
a^2-aを因数分解すると、a(a-1)となり、aは奇数でa-1は偶数、かつaとa-1は互いに素です。
よって、最低限a-1は16の倍数でないといけません。
このとき、aとa-1が互いに素なので、次の2パターンに分けることができます
(1) a-1は16の倍数かつ625の倍数で、かつaは2でも5でも割り切れない整数
(2) a-1は16の倍数で、かつaは625の倍数
(1)の場合はaが10001以上になるので、9999以下という条件に反します。よって、(2)の場合だけ考えればよく、最終的に、
625p-16q = 1となる整数p,qを求める問題に帰着します。
<筆者の解答>
第5問
問題文が長くて分かりにくいですが、ギャンブルに使われる「ブラックジャック」というトランプのゲームを題材にした確率の問題です。
甲が勝つまでの道のりが何段階もあって非常に長いため、道筋をしっかり整理して解かないと収拾がつかなくなってしまいます。
b=0のケースが(1), b≠0のケースが(2)です。
いずれも場合も、甲が勝ち筋を残す条件を見極めたうえで、条件を満たす特定の番号b,cを引く確率、を次々に計算していくことになります。
ここで、bやcを一旦固定して考えるところがミソです。
(1)ではあまり気になりませんが、(2)では、「固定している」「固定していない」の差が無視できなくなります。
これができれば、あとはbとcについてΣを計算すればよいです。
余談ですが、問題文に「(ⅱ)の段階で、甲にとってどちらの選択が有利かをaの値に応じて考える」とありますが、実際に(1)(2)の大小を比較させる設問はないんですね・・・ちょっと肩透かしですね笑
<筆者の解答>
第6問
おなじみ体積計算の問題です。3つの円柱を直角に交差させて、2つの円柱の内側かつ1つの円柱の外側の体積を計算する、という状況です。
立体を平面で切って断面積を求めて積分という方針はすぐに立つでしょう。
まず問題になるのが、どの面で切るか、です。
問題文の不等式を眺めてみると、yとzは完全に対称な関係、xのみ仲間外れだと分かります。対称性はできるだけ維持したほうが良いので、今回はx=tで切るのが良いでしょう。
次に断面を実際に書いてみると分かりますが、断面がちゃんと存在するtの範囲が限られることが分かります。
断面積を求めるのに、扇形の面積が必要になるので、三角関数だけでなく、扇形の頂角そのものが必要になります。
あとは、少し大変ですが、断面積を積分して終了です。
<筆者の解答>