ちょぴん先生の数学部屋

数学の楽しさを、現役メーカーエンジニアが伝授するぞ!

平成の東大理系数学 -2001年-

このシリーズでは、平成の東大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。

東大の数学の問題は、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。

(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )

 

19回目の今回は、2001年の問題です。

第1問

f:id:stchopin:20210902083359p:plain



四面体の外接球の半径を求める問題です。

 

今回の四面体はかなり対称性の高い形状をしているので、それをうまく利用して解いていきます。ABの中点をM, CDの中点、外接球の中心をOとします。

 

使う事実としては、次の2つです。

・△MCDはMC=MDの二等辺三角形 →Oは線分MN上にある

・△OABはOA=OB=r の二等辺三角形

 

三平方の定理を何度も使って、rの方程式を立てれば解くことができます。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200410213811p:plain

 

第2問

f:id:stchopin:20210902083421p:plain



積分方程式の問題です。

まず、積分の中にx,yが混在しているので、xしかないものを外に出してしまいましょう。積分はあくまでyでの積分なので、xだけの関数は定数扱いで良いわけです。

 

こうしてできるyの関数の定積分は、積分してしまえばyが消えてただの定数になります。これらをA,Bと定数で置いてしまいましょう。

 

A,Bを使えば、f(x)をスッキリとした形で書くことができるので、このf(x)をA,Bの式に代入して計算していきます。

 

すると、A,Bの一次の方程式が2本できますが、一般に、1次の連立方程式の解は、①ただ1組の解を持つ、②無限個の解を持つ (片方の式が、もう片方の定数倍)、③解がない(2つの式が矛盾する) の3通りです。

 

この問題は①でないといけないので、係数行列が逆行列をもてばOKです。つまり、行列式≠0が、a.bの満たすべき式です。

 

あとは、A,Bをa,bで表現してf(x)に代入すれば終了です。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200410213856p:plain

 

第3問

f:id:stchopin:20210902083440p:plain



面積比を表す関数の挙動を調べる問題です。

 

a(t), b(t)は簡単に計算できるので、c(t)の挙動調査が本題です。そのためには、c(t)を微分しないことには始まりません。

 

c'(t)を計算すると、分数の関数の複雑な式で、しかも正負の判断がすぐにはつきません。この式のままもう一回微分するのは、絶対にやりたくない形ですね。

 

逆に言えばc'(t)の正負さえわかればよく、分母は正だと明らかに分かるので、分子のみを微分して調べればよいことが分かります。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200410213940p:plain

 

第4問

f:id:stchopin:20210902083459p:plain



漸化式で定まる複素数が、複素数平面上で同じ円周上にあることを証明する問題です。

 

(1)はb1,b2,b3を漸化式から調べて、この3点を通る円の方程式を考えればよいです。

 

(2)は、数学的帰納法で証明します。

ここで、条件がbの絶対値を用いた形になるので、2乗して処理をすると楽です。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200410214017p:plain

 

第5問

f:id:stchopin:20210902083525p:plain

f:id:stchopin:20210902083543p:plain




今までに見たことのない、パズルのような証明問題です。

 

ルールを整理すると、

・ビーカーの水量ワースト2を決める

・水量ビリのビーカーからブービーに水を全部移して、空になったビーカーは消す

となるので、最初にxリットル入っているビーカーをAとすると、Aの行く末は、

1. 途中で消える

2. xリットルのまま生き残る

3. xリットルから水が増えて生き残る

の3通りしかありません。

 

(1)は、上の2のケースがありえないことを示します。その方法は背理法です。

 

(2)は、上の1か3になるためには、途中でAがワースト2になる必要があるので、そうなりえないことを示します。こちらも背理法です。

 

なお、筆者の証明ではx>1/3で2にしかならないということになっていますが、x>2/5はx>1/3を満たしているので、特に問題はないでしょう。。。別にx>2/5が必要条件であることを証明したいわけではないので。

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200410214057p:plain

 

第6問

f:id:stchopin:20210902083608p:plain



条件付きで1だけ進むすごろくを題材にした場合の数の問題です。

問われているのは場合の数ですが、より慣れ親しんでいる確率の話に焼き直してしまいましょう。

 

(1)は、このゲームを咀嚼すれば、a=b, a=b±1の3パターンしか状態がないことが分かります。

それぞれの確率を数列で表現することで、a=bとなる確率pnの漸化式を作ることができます。そして、pn = Xn/2^nなので、Xnの漸化式に焼き直すことができます。

 

(2)も、pnの漸化式のまま解いたほうが見通しが良いと思います。

 

(3)は、(1)(2)でもとめた確率たち、pn, qn (a=b+1となる確率)、rn (a=b-1となる確率)を使ってあげると、k回目からk+1回目に移る時にaが+1される確率、aが変化しない確率をそれぞれ計算できるので、k回目からk+1回目に移る時のaの変化量の期待値が求まります。

aの初期値は0なので、この期待値をk=0,・・,n-1でΣすればお終いです。

 

(qnとrnは、対称性から等しくなります)

 

<筆者の解答>

f:id:stchopin:20200410214140p:plain