ちょぴん先生の数学部屋

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平成の東大理系数学 -1997年-

このシリーズでは、平成の東大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。

東大の数学の問題は、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。

(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )

 

23回目の今回は、1997年の問題です。

第1問

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正方形の中に正三角形が収まる条件を考える問題です。

 

(1)は、どのような方法でもよいので、Cの座標を出しましょう。おそらく、回転行列を使うのが一番楽だと思います。

そして、A,B,Cのすべてのx座標とy座標が0から1に収まる条件を求めて図示すればよいです。

 

(2)正三角形の面積は、S=√3/4 (a^2+b^2) と書けるので、円a^2+b^2 = 4S/√3 と(1)の領域が共有点を持つSの条件を考えればよいでしょう。

 

<筆者の解答>

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第2問

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2次不等式が常に成立するaの条件を考える問題です。一見簡単そうですが、mが整数となっているせいで、非常に厄介な問題と化しています。。

 

まず不等式の左辺でmをxに取り換えたものをf(x)としましょう。

もちろん、全ての実数xに対してf(x)>0であれば、x=mが整数であっても当然f(m)>0が成立します。これは判別式<0で簡単にaの条件が出ます。

 

しかし、これだけでは不十分なのです。何が言いたいかというと、一部のxでf(x)<0となっていてもOKになってしまう場合があるのですよ。

 

たとえば、f(0.5)<0であっても、・・f(-1)>0, f(0)>0, f(1)>0, ・・・であれば、「全ての整数mについてf(m)>0」は正しくなってしまうわけです。

 

よって、f(x)=0の判別式が0以上のケースも考えないといけないのです。順に考えていきましょう。

 

f(x)=0が重解を持つときは、aは2通り求まるので、重解x=(a-1)/2が整数でないほうを選べばよいです。こちらはそんなに難しくないです。

 

問題は、f(x)=0が2つの実数解を持つ場合です。

 

このときは、k<(a-1)/2<k+1 となる整数kをとってきたとき、f(x)<0となる区間長さが1より小さくないといけないし、かつf(k)>0とf(k+1)>0が両方成立していないといけません。

 

前者の条件から、aの条件が2通り出てきます。(0<a<1/(2n+1)と2n+1<a<2n+1+1/(2n+1)の2つ)これらについてf(k)>0かつf(k+1)>0が成立するかを個別に検討します。

 

0<a<1/(2n+1)のときはk=-1ととることができ、この場合は幸運にしてf(-1)>0とf(0)>0が両方成り立っています。

 

2n+1<a<2n+1+1/(2n+1)のときは、k=nととることができて、かつn<(a-1)/2<n+1/2なので、f(x)の軸はx=n側に寄っているので f(n)<f(n+1)となりますから、f(n)の正負を確認すればよいでしょう。

 

ここで、aの条件を使ってあげると、f(n)<0が言えるので、このケースはNGであることが分かります。(ここのf(n)<0を言うところが、ある意味一番難しいところ)

 

これでaの条件が必要十分に揃ったので、これらをまとめれば答えになります。

 

mが「実数」から「整数」に変わるだけでこれだけの難問に化けるのですから、おそろしいですね。。。

 

<筆者の解答>

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第3問

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空間図形におけるrの条件と、rの関数の極限を考える問題です。

これは、どの文字を動かしどの文字を固定するかをきちんと考えながら解いていかないといけない問題です。

 

(1)は、P(x,y,z)として、与えられた方程式を書き下してみましょう。まず、PA=PBなのでy=xとなります。yを消去してrについて解いてあげると、

 

r^2 = 1- (1-2x)/(2x^2+z^2) となります。

 

今rの範囲が知りたいので、xとzを自由に動かしてあげたときに1- (1-2x)/(2x^2+z^2) の値がどの範囲をとるのかを考えればよいです。

 

まず、r<1なので1-2x<0でないといけないので、その条件のもとにx,zを自由に動かします。

xとzを同時に動かすと訳が分からなくなるので、ここは予選決勝法の考え方で片方を固定してもう片方のみを動かしてあげればよいです。数式の一か所にしか登場していないzを先に動かしたほうが楽だと思います。

 

(2)では、PA・PB = r^2*(2x^2+z^2)-1となるので、rを固定したときに2x^2+z^2の値がどの範囲を動くかが気になります。

 

(1)で出しているr,x,zの方程式を変形してあげると、xとzは楕円を作ることが分かります。ここで、2x^2+z^2 = k^2 としてあげるとこれもまた楕円となるので、この2つの楕円が共有点をもつkの条件を求めてあげましょう。

 

これにより、M(r)とm(r)が計算できるので、後は訊かれている極限を計算すればお終いです。

 

<筆者の解答>

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第4問

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正三角形の中で光がどのように反射するかを求める問題です。

この問題は正直、光の反射の問題の解き方を知らなければ、まず解けないと思います。

 

物理の問題で一度はやったことがあると思います。「Aから出た光が鏡に反射してBに到達するとき、反射する鏡の点Pはどこにありますか?」という問題。

これは、鏡に対してBと対称な点B'を取って、AとB’を直線で結んであげたときの交点がPになるのでした。「入射角=反射角」となることからこれが言えるのでした。

 

今回は、それの応用問題です。つまり正三角形をいくつも鏡に写していき、到達点と出発点を直線で結べばよい、という解き方です。

 

考えやすくするために正三角形の1辺の長さを2とします。

 

(1)は、tanθ=√3/4なので、正三角形1個分高さが上がるのに、正三角形2個分の横幅が必要になるわけです。これを念頭に、正三角形を並べてあげれば解くことができます。

 

(2)は、考え方は(1)と同じですが、最終的な到達点がA,B,Cどの点の鏡移しなのかを考えないといけません。図を描いてみると、A,B,Cの鏡移しの点たちは規則的に並ぶことが分かります。

 

反射回数は、図で光線が通過する辺の数と等しいので、これを数えましょう。

 

<筆者の解答>

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第5問

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お馴染み回転体の体積の問題です。

まず、条件式をみたすyが存在するには、右辺が0以上でないといけないので、これによりxの範囲に制限がつくことになります。

 

この下で、f(x)=√(x^2-x^4-a)の概形を調べてあげれば、問題文の領域を図示することができます。

 

今回は、y軸回転なので、f(x)の逆関数を調べる必要があります。x=1/√2を境に状況が変わるので、場合分けして求めてあげましょう。

 

ここまでできれば、テンプレ通りの積分です。

 

<筆者の解答>

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第6問

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2つの曲線の共通接線の条件と、放物線と2接線で囲まれた部分の面積を求める問題です。

 

(1)は、3次関数のx=tにおける接線を求め、それが2次関数にも接する条件という形で解きます。接する条件は2次方程式の方が考えやすいので、先に3次関数の接線を出してしまうと見通しがいいです。

 

するとtの4次方程式が出来上がるので、これがt=0以外に2つ解を持つ条件を求めればお終いです。

 

(2)は、(1)で求めたtの2次方程式の解をα<βとして、基本通り面積計算すればよいです。

αとβは後から解と係数の関係を使って消去できるので、とりあえずαとβのまま計算したほうが見通しが良いです。

 

<筆者の解答>

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