このシリーズでは、東大に引き続き、平成の京大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。
京大の数学の問題も、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。
(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )
13回目の今回は、2007年の問題です。
2007~2010年の問題は、甲セットと乙セットの2種類がありますが、より難易度が高く受験者人口が大半を占めていた乙セットを解きます。
第1問
小問集合ですが、各小問が重めの出題です。
(1)はお馴染み定積分の問題ですが、計算練習の経験値の有無を問われた問題になっていると思います。
まず、分子の足し算を分解してみると、前半のx/√(x^2+4)の積分は、原始関数が√(x^2+4) だと比較的簡単に分かるので、置換積分などを使うまでもなく計算できます。
問題は、後半の1/√(x^2+4) の積分方法です。実は、これの原始関数がlog(x+√(x^2+4) )だと知っているとあっさり解けてしまいますが、これを即座に思いつける人はあまりいないでしょう。
上の原始関数を知らない場合は、x=2tanθと置換してチマチマ計算を進めましょう。
(2)は15段の階段の上り方の場合の数を求める問題ですが、2段飛びが連続しないという条件のせいで厄介な問題になっています。
1段昇る動作をA, 2段昇る動作をBとして、Aがa回、Bがb回起こるとすれば、a+2b=15となります。究極的には、この関係式を満たすように、Aをa個、Bをb個一列に並べる(ただしBは2つ以上隣り合わない)場合の数を数える問題になります。
まず、bが6以上あるとどう頑張ってもBが2個以上連続してしまうので、bを5以下の整数として考えます。bの値によって場合分けして、数え上げましょう。
数え方は、とりあえずBとAを交互に並べてしまい、その列の間か両脇に残りのAを挟む方法は何通りか、という形で数えます。
<筆者の解答>
第2問
数列が収束する条件を調べる問題です。
まず漸化式は解ける形をしているので、一般項を求めてしまいましょう。両辺をy^(n+1)で割り算して、bn = an/y^nとするとうまくいきます。
一般項を求めると、x^nとy^nの足し算の形になるので、xとyの値によって場合分けです。これを虱潰しにやるしかないですので頑張りましょう。
場合分けのカテゴリーは、「0より大きく1より小さい」「1」「1より大きい」の3つです。あと、x≠yを忘れがちなので、注意です。
<筆者の解答>
第3問
文字が4つあるのに条件式が3つしかないので、一見解けそうに見えないですが、pが素数、a~dが整数という条件が付いているおかげで解くことができます。
まず、真ん中の式に素数pが含まれていることに注目です。素数が出てきたら、とりあえず因数分解できないかを考えてみましょう。AB=pの形になれば、AとBの値の組は、1とp, -1と-pに絞ることができます。
これを念頭に置いてdを消してあげると、予定通り、(a+b)(a+c) = pとなります。
a~dの大小から、(a+b, a+c) = (p, 1), (-1, -p)の2択に絞ることができます。この2つの候補それぞれで場合分けします。
(a+b, a+c) = (p, 1)のとき、a~dの大小の式から、p/2 < a < (p+2)/2となります。ここで、pが奇数だったことに注意すると、これを満たすaは、(p+1)/2だけです。
(a+b, a+c) = (-1, -p)のときは、aとdの大小に矛盾が生じるので残念ながら不適です。
<筆者の解答>
第4問
とある性質をみたす三角形の正体を暴く問題です。
今回の問題では、Oが外心となっているので、Oを原点にした座標軸を設定してしまうのが見通しが良いでしょう。
△ABCが原点中心の半径rの円に内接しているとして、
A(r, 0), B(rcosα, rsinα), C(rcosβ, rsinβ) のように、角度を設定します。
このとき、ベクトルの処理によって、OP=OQ=ORを考えます。
最終的にcosα = cosβ =cos(β-α) となるので、α=120°、β=240°が求まり、最終的に△ABCが正三角形だと分かります。
まぁ、問題文を読んだ時点で十分想像できる答えではありますが笑。
<筆者の解答>
第5問
ベクトルの1次変換を題材にした問題で、難問です。
まず、ケーリーハミルトンの定理を使うと、A^mが、AとIの線形和で書けることが分かります。この発想が、この問題最大の難関ですね。
これを用いると、xmベクトルが、x1ベクトルとx0ベクトルの和で書けることが分かります。このとき、大きく2つに状況が分かれます。それは、x1ベクトルとx0ベクトルが1次独立かそうでないかです。
1次独立であれば、係数比較により、A^m = I が言えます。
1次独立でないとすれば、x1 = r × x0 のように、x1ベクトルをx0ベクトルの定数倍で書くことができます。
このとき、xm = (r^m) × x0となり、xm = x0となるので r^m = 1になります。
こうなってしまうと、必ずx2 =x0となってしまい、mが3以上であることと矛盾してしまいます。
以上から、A^m = I で確定です。
<筆者の解答>
第6問
(筆者注: 誤f'(x) = 1 正f'(0) = 1)
関数方程式の問題で、これまた難問です。
最初に断っておきますが、おそらく京大の出題者は(1)と(2)を個別になんやかんやして調べてほしかったんだと思いますが、その方法を私は思いつくことができませんでした。
それよりも、与えられた条件からf(x)の式を直接求めてグラフを描いてしまえば(1) (2)も同時に一目瞭然でわかるので、f(x)の式を求めることに終始することにしました。出題者の意図からは外れるとは思いますが、この方法が一番楽だと思います。
さて、f(x)の求め方ですが、f'(0) = 1の情報があるので、微分方程式として処理したいです。
まずbを固定して、aの関数とみなして両辺を微分しましょう。
すると、f'(a+b)とf'(a)の2種類が登場するので、a=0として片方を消去します。
f(b)の微分方程式が出来上がったので、これを解き進めていくと、
f(x)=(e^2x -1)/(e^2x +1)が求まります。
これの増減と凹凸を調べれば、(1)(2)が同時に証明できます。
このf(x)は、「ハイパボリックタンジェント」と呼ばれる関数で、tanxの親戚にあたる関数です。その証拠に、問題文の方程式は、tanの加法定理とよく似ていますよね。
<筆者の解答>