ちょぴん先生の数学部屋

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平成の京大理系数学 -1989年-

このシリーズでは、東大に引き続き、平成の京大理系数学の問題を1年ずつ遡って解いていきます。

京大の数学の問題も、難易度は高いですが良問の宝庫であり、演習価値が非常に高いです。

(時々、どうしようもなく難易度が高く、筆者の力量でも解けない問題が出てくることがありますが、どうかご容赦くださいm(_ _)m )

 

いよいよ最終回、1989年の問題です。

第1問

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辺の長さの極限を求める問題です。

 

(1)は、規則に従ってa3を計算しましょう。ここでsin(θ/4)をかけていることが、(2)へのヒントになります。

 

(2)は、(1)と同様に考えてanの漸化式を作ります。(1)では、sin(θ/4)をかけることによって、倍角の公式が次々に発生して式が簡単になることを確かめていました。このことの連想で、sinを両辺にかけると、等比数列に帰着できることが分かります。これを使ってanの一般項を求めましょう。

 

極限計算は、例のごとく、sinθ/θ→1 (θ →0) を利用します。

 

<筆者の解答>

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第2問

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条件を満たす実数の組を求める問題です。

 

そのままだと何をすればよいか分かりにくいので、a1≦a2≦・・・≦anとしてしまいましょう。こうしても一般性は失いません。

 

さて、問題文では、aiは、残りの平均以下だと言っているので、試しにanについて適用してみると、

an≦ (a1+・・・+an-1)/(N-1) ≦ (N-1)an-1 /(N-1) = an-1 となりますので、上記の設定と合わせると、an = an-1 が言えます。

 

同じようにすると、a1=a2=・・・・=an が言えます。厳密な証明には、数学的帰納法を使います。

 

<筆者の解答>

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第3問

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多項式の割り算に関する問題です。

f(x)=x^3 +ax^2 +bx +c とおいて一般性を失わないので、f'(x)で割った商をpx+q, 余りをrとして、a,b,c,p,q,rの満たすべき条件を、係数比較で求めましょう。

 

この条件をf'(x)に当てはめると、f'(x)>0となってf(x)が単調増加なことが言えます。

よって、f(x)=0の実数解は1個だけです。

 

<筆者の解答>

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第4問

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四面体を平面で切った断面を考える問題です。解く工程が非常に長く、捨て問にしてよいと思います。

 

まず、せっかくOA, OB, OCが垂直だと言っているので、xyz座標を作ってしまいましょう。つまり、A(a,0,0), B(0,b,0), C(0,0,c)と置きます。

 

このとき、Gを通ってOGに垂直な平面αの式は容易に立つので、αのx切片D, y切片E, z切片Fを求めましょう。

 

このD, E, Fが、四面体OABCからはみだすか否かで場合分けが生じます。

(ⅰ)全部はみ出さない →断面は三角形

(ⅱ)1個だけはみ出す →断面は四角形

(ⅲ)2個はみ出す →断面は三角形

ちなみに全てはみ出すケースは存在しません。

 

上の3つのうち、面積を一番計算しやすいのは(ⅰ)なので、a=7,b=8,c=9がそうであってくれ!!と願いつつ条件式に当てはめてみます。すると、無事(ⅰ)に該当することが分かります。

(後者2つのケースの場合、新たに交点を計算しないといけないので、難易度が跳ね上がります。。。)

 

面積を計算するうえでは、四面体ODEFの体積V、△DEFを底面としたときの高さhがあると便利で、hは、OGベクトルの大きさに一致します。

 

答えは非常に汚くなります。。。

 

<筆者の解答>

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第5問

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サイコロを塗り分ける確率の問題です。

 

まず、使う色が2色以下だと、必ず隣り合う面が同じ色になるものが出てきてしまうので、使う色は3色に限られます。

 

その前提で条件を満たすには、向かい合う面同士を同じ色で塗り分ければOKです。

 

塗分け方の総数がN^6 通り、条件を満たす塗り分け方がN(N-1)(N-2) 通りあるので、

確率P(N) は、P(N)= (N-1)(N-2) /N^5 と求まります。

(※すべての面を区別して数えます)

 

あとは、P(N)を微分してあげれば、Nが3以上の時P(N)が単調減少なことが分かります。

 

<筆者の解答>

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第6問

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微分方程式の問題です。

 

空の状態からt分後の水の量をV(t)と置いて、Vと水位yの関係式、tとの関係式を求めます。

 

まず、水を投入する速度の情報から、dV/dt = 10-y が分かります。

 

次に、相似の関係を使えば、10-yとVの関係式も求まります。このとき、容器の容積をV0と置いて考えます。

 

この2つからVに関する微分方程式が立つので、それを解きます。

t=0のときy=0, t=540のときy=2という情報から、積分定数と容積V0が求まります。

 

あとは、容器が満杯になる時のtの値を求めればよいです。

 

最後に、答えるべきは「y=2の時点から何時間後か?」なことに要注意です。

 

<筆者の解答>

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