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平成の名古屋大理系数学 -2008年-

大京大に引き続き、他の旧帝大の問題も取り上げていきます。この記事では、名古屋大学の2008年の問題を取り上げます。

第1問

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行列と多項式の融合問題です。

 

(1)ケーリーハミルトンの定理からA^2をAとEで表現できるので、条件式の次数を下げることができ、AはEで表せないので、αA+βE =Oのとき、α=β=0となります。

 

(2)f(x)が、x^2 + 2x +2 で割り切れることに気付ければ、2次方程式が正の解を持つ条件を求める問題に帰着できます。aを分離する方法でも解くことができます。

 

ここで、x^2 + 2x +2 で割り切れることは偶然ではなく、Aがケーリーハミルトンの定理でA^2 + 2A +2 = Oを満たすことから言うことができます。このような、ケーリーハミルトンの式でAをxに置き換えた多項式を、Aの固有多項式と呼びます。

 

この固有多項式=0 と解いて得られる解が、行列の「固有値」と呼ばれるものになります。

 

<筆者の解答>

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第2問

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三角形の辺の比、面積の比を考える問題です。

 

(1)は、QR:RAや、PR:RBを知る必要があります。これを求める方法としては、ベクトルを使うのもよいです(別解)が、初等幾何のメネラウスの定理を使ったほうが素早く求められます。sの式がやたら汚くなるので、ミスを疑ってしまいそうですね。。

 

(2) (1)ができていれば瞬殺です。

 

<筆者の解答>

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第3問

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対数関数のグラフの面積に関する問題です。

 

S, Tを素直に計算し、S=Tを整理すると、2a -aloga = 2b -blogbが得られます。こうして、2x- xlogx =Aが2つの実数解を持つ条件を求めることに帰着します。

 

<筆者の解答>

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第4問(a)

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第4問は(a)(b)の選択問題で、今回はどちらもヘビーなので難易度に大差はないと思います。お好みで選んでください。個人的には(a)の方がしんどかったです。。(a)は、不等式を満たす整数解の個数を求める問題です。

 

(1)いきなり、2008なんて大きな数字が登場して泣きそうになりますね。。しかも等号ならまだしも、不等号なので、解の個数がとんでもないことになるのは想像に難くないでしょう。

 

とにかく、解く方針としては、どちらかの文字を固定して数えて、最後に和を取るのが基本です。ここではあまり分数が登場しないようにxを固定するのが良いと思います。

 

xの偶奇により場合分けが発生します。どのみち、4桁×3桁の掛け算をしないといけないので、部分点狙いで十分でしょう。

 

(2) 今度は3文字が登場して厄介さが増しています。ここでも基本方針は変わらず、x固定です。この下でさらにyを固定してzの個数を数えるという方針で行きましょう。

 

<筆者の解答>

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第4問(b)

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選択問題の片割れで、(b)は確率の問題です。

 

(1)は基本問題でしょう。

 

(2)Aから取り出す赤の個数で場合分けして考えます。

 

(3)は、1回目に赤を何個取り出したかによって、Aに残っている赤の個数が変化します。A, Bに入っている玉の総数は等しいので、赤が多く残っている袋を2回目に選ぶことになります。

 

これを念頭に、赤を取り出す確率を個数ごとに計算していくことになります。

 

<筆者の解答>

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