私立最難関の一角、慶應義塾大学の理工学部の問題を取り上げます。今回は2004年の問題です。
第1問
円柱の一部の体積、側面積を求める問題です。
前半: (イ)まで
円柱Aの断面と平面Pの断面をそれぞれ考えると、断面は長方形になります。
後半:(オ)まで
Bを平面z=sで切った時の円弧の長さを積分するとS1が求まります。S2はただの半円なので面積が簡単に求まるので、S1+S2=3πから、(イ)を一文字に統一して書くことができます。
<筆者の解答>
第2問
異なる平面上のベクトルのなす角を考える問題です。
まず、PQの向きは点Pの速度ベクトルと等しいので、Pの各成分をtで微分すればよいでしょう。その上で大きさを1にします。PをHに投影すると、z座標はx座標にtをかけたものになるので、それを利用しP'Q'を求めます。
あとは、内積を使うとsinθが求まるので、xを動かして取りうる値を考えます。
<筆者の解答>
第3問
折れ線グラフの周期に関する問題です。
(1)手始めにy=f(x)のグラフを描いて、幾重にも場合分けしてy=f2(x)とy=f3(x)を調べていくのですが、かなり大変な作業です。答案ではn=3については類推したうえで「同様に」で詳細を省いています(グラフだけ答えればよいので)。
これを描くと、nが奇数の時は、グラフが左上と右下に存在し、nが偶数の時は、グラフが左下と右上に存在するのでは?と想像できます。
(2)周期となる点は、y=fn(x)のy=xの交点になりますので、(1)のグラフを使って個数を調べます。
(3) (1)での予想は帰納法で証明することができ、それによって、mが奇数の時、y=fm(x)のグラフとy=xのグラフは(1/2, 1/2)以外に交点を持たないことが分かります。そして、唯一の交点(1/2, 1/2)は周期1の点なので、周期mの点は存在しません。
<筆者の解答>
第4問
(1) 条件を満たす多項式g(x)は、m-1次以下の係数が全て0になることを示しましょう。
(2)誘導に従って解いていきます。f(x)=r(x) (x-1)^pを一回部分してf'(x)を計算できて、f'(x)について(1)の結果を使うとf'(x) = h(x) x^(p-1)と書けます。
ここで、多項式としてみたとき、(x-1)^(p-1)とx^(p-1)が互いに素になるので、f'(x)の式のうち(x-1)^(p-1)に掛け算されている多項式がx^(p-1)で割り切れると分かります。あとは最高次に注意すれば、(ツ)が求まります。
こうして出来上がった微分方程式にf(x)=a0 +a1x+・・・+ap-1 x^(2p-1)の式を代入して係数比較します。Σがいくつも出てきますが、添え字に細心の注意を払う必要があります。
<筆者の解答>
第5問
不等式評価の問題です。
(1)意外と難しいです。y=1/x^2のグラフを使って面積を評価すればよいのですが、評価の仕方をしくじると、お目当ての不等式が手に入りません。今回は、y=1/x^2の
m-1≦x≦m+1の部分の面積を評価するとうまくいきます。思いつかなければ、(1)の結果ありきで(2)から考えればよいでしょう。
(2) (1)の結果を使うと、S(n) < S(k)+1/k-1/n < S(k)+1/k となり、k=3とすると、
S(3)+1/3 < 1.7 となるからn≧4では必ずS(n)<1.7となります。あとはn=1,2,3のケースを個別に調べればよいでしょう。
(2)の結果はS(n)がn→∞で収束することを意味しており、この収束値については、以前このブログで紹介しています。バーゼル問題ですね。
結果はπ^2/6という摩訶不思議なものであり、小数に直すと1.6449・・となって確かに1.7より小さくなっています。
<筆者の解答>