私立最難関の一角、慶應義塾大学の医学部の問題を取り上げます。今回は2010年の問題です。
第1問
小問集合です。
(1) 三角関数の方程式の問題です。実質tanαの2次方程式なので、正負に注意して解けばよいでしょう。そこから芋づる式にcosα、sinαが求まっていきます。
(2) 微分方程式の問題です。f'(x)とf''(x)を計算して、足して0になるように係数を決めていきます。逆に、ここでゲットできた微分方程式の解はf(x)の形で書ける関数のみです。大学では、こうしたタイプの微分方程式の解き方を習うことになります。
(3)回転体の体積の問題です。素直に積分を計算すればよいのですが、V2は逆関数を調べておくと楽です。
<筆者の解答>
第2問
折れ線の長さの最小値を考える問題で、題意の把握が難しい難問と言えます。
「折れ線の長さの最小化」は、「直線にする」という発想で考え、よく出てくるのは「直線について対称な点を考えて、その点と線分で結ぶ」という考え方です。
この問題の場合は、Qがy=xより上にあるか下にあるかで大きく話が変わってきます。上にある場合はAQを素直に線分で繋いだときのy=xとの交点がPとなり、下にある場合は、Qのy=xについて対称な点Q'を作ったとき線分AQ'とy=xとの交点がPとなります。
(1) 上記のようにQがy=xの上と下のどっちにいるかを見極めてAと線分で繋ぎます。
(2) 問題文の解釈が難しい問題です。
分かりにくいのですが、この問題は「先にA(つまりaの値)を固定して、次にQをC上で動かしてr(Q)を最小にする」という設定で、その逆ではありません。なので、(1)のようにr(Q)をaの式として計算してからaを動かして最小化する、と考えるのは誤りです。試験場でも、このように誤読をして引っかかってしまった受験生が続出したと思われます。
(ⅰ)
(う)について
Qがy=xの下側にあるので、Q'を考えてあげる必要があります。このときQ'はCをy=xについて対象に折り返した双曲線C'上を動きます。このとき、Aを中心とする円とC'がちょうど接するとき、その接点がQであればr(Q)は最小となります。なので、そうなるaを調べます。
(え)について
Qがy=xの上側にあるので、直接Cを考えます。(う)と同じように、Aを中心とする円とCがちょうど接するとき、その接点がQであればr(Q)は最小となります。
(ⅱ)
(1,1)はちょうどy=x上にあり、かつC,C'上にもある特別な点になっています。ここまでの知見を総動員すれば、x>1ではCを、x<1ではC'を考えた合体曲線と、Aを中心とする円がちょうど1点で交わる条件を考えればよいことが分かります。合体曲線がx=1で微分不可能になっているので、左側の傾きと右側の傾きをそれぞれ考えます。
<筆者の解答>
第3問
確率の問題です。
玉の配置の仕方は、(回転を除けば)4個ある状態が2つ、5個ある状態と6個ある状態がそれぞれ1つずつあるので、計4状態の移りあい方を考えます。
(1) 状態図を描いて漸化式を立てて解きます。
(2) cn = 1/4bn-1で計算できます。
(3) l回目に初めてCになり、その後C状態を維持してn回目に初めてDになる確率を計算して足し上げることになります。
<筆者の解答>
第4問
曲線の接線によって作られる直角三角形の面積について考える問題です。
(1) 接線の方程式を出して、x切片,y切片を調べればよいでしょう。
(2)問題文の通りに対数を取って微分をひたすらに計算します。
(3) S'(x)の正負を知る必要があるのですが、(2)で計算したものはS'(x)/S(x)なので、(2)で求まった関数の正負とS'(x)の符号は一致します。符号に注意すれば、(え)は常に正になることが分かるので、実質(う)の正負だけ気にすればOKです。f''(x)<0が分かっているので、(う)のうちf''(x)以外の部分をg(x)としてg(x)の増減を調べます。
すると、g(x)が単調減少なことが分かるので、g(x)が符号変化する条件はg(0)>0かつg(a)<0です。
(4) f(x)はx>0で単調減少する上凸の放物線で、f''(x)<0をばっちり満たしているので、(3)の結果を使うことができます。
<筆者の解答>