2021年も大学入試のシーズンがやってきました。
今回は、慶應義塾大学の医学部に挑戦します。
※当日解いており、誤答があるかもしれない点はご了承ください。⇒河合塾の解答速報を確認し、2つほど計算ミスがあったので修正しました。
<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)
1. 小問集合
(1) 円に内接する三角形(15分)
(2) 回転体の体積の極限(15分)
(3) 2次方程式の解に関する、整数の数え上げ(30分)
2. 相関係数の最大最小(40分)
3. 仰角の等しい点の軌跡(40分)
4. 双曲線関数に接する円の中心の座標(40分)
<体感難易度>
1(1)<1(2)<4<3<1(3)<2
相変わらず物凄いボリュームですね。100分の試験時間なのですが、真面目に解くと倍近い180分くらいかかる分量です。
とはいえ、分量の多さに目を瞑れば手の付かない難問はほとんどないため、自分の解けそうな問題をミスなく解き切り確実にその問題を得点にする、という作戦で良かったと思います。統計学からの出題で目新しく馴染みのない大問2はいっそのこと丸ごと捨て、かつ数え上げの面倒な大問1(3)も捨てて、残りの問題を最後まで解き切る、でも悪くないと思います。
<個別解説>
第1問
慶応の第1問伝統の小問集合です。
(1)円に内接する三角形に関して、ベクトルの関係式をもとに長さや面積を調べる問題です。最も易しい問題なので、確実に仕留めましょう。
あ:
BCを調べたいので、△ABCか△OBCで余弦定理を使いたいです。OB=OC=1と長さの分かっている辺の多い△OBCを採用すると楽になります。余弦定理を使うために、ベクトルの関係式を使ってOBとOCの内積を調べましょう。
い:
Aを起点にして、AOベクトルが分かれば、係数の和=1の関係を使ってAPベクトルをAB,ACベクトルで書くことができます。
う:
△ABCのどれかの角度のsinを求めても良いですが、せっかく(あ)でOBとOCの内積を調べたり、(い)でAPとOPの長さの関係を調べているので、△OBCの面積との比の関係で△ABCの面積を考えると楽になります。
(2)回転体の体積の極限を調べる問題です。こちらも計算ミスにさえ注意すれば簡単に解けます。
セオリー通りにまずはVを直接計算します。すると、全ての項の次数がm^〇で一致することが分かります。α→+0の極限は、αに素直に0を代入するだけで事足りますし、m→∞の極限が有限値に収束するには、mの指数が0であればよいわけです。
(3)2次方程式の解について、条件を満たす整数kを数え上げる問題です。こちらはかなり分量の多い面倒な問題です。
か:これは判別式>0で十分でしょう。これだけでも得点しておきましょう。
き:2次方程式の2つの実数解が両方とも2より大きいので、2次関数の軸の位置と端点の符号を調べることで条件が求まります。
く:こちらは、2次方程式が「重解を持つ場合」と「虚数解を持つ場合」に分かれるので、場合分けしてそれぞれ検討しましょう。
け:2次方程式を解いたときの√の中身が平方数になることが必要ですが、実はそのとき分子が必ず整数になるので十分条件でもあります。なので、√の中身が平方数になるkを探しましょう。整数問題お得意の因数分解のテクニックを利用できます。
[2/22追記]計算ミスがあったので差し替えました。
こ:こちらも考え方は(け)と一緒ですが、kが偶数であるという条件が追加されます。こちらは因数分解が使えないので、虱潰しに全調査します。kの候補は数えるほどしかありませんので。
<筆者の回答>
第2問
相関係数の最大値最小値を調べる、統計学の問題です。慶応の医学部で統計学が出題されるのは非常に珍しく、受験生は大いに戸惑ったはずです。
とはいえ、平均、分散、共分散、相関係数といった概念の計算方法が分かっていれば、実質数列の問題に帰着できます。
(1)この設問がある意味、この問題の一番の核心部分です。xは順位を表す量なので、x1,・・xnは、1~nのn個の整数を並べ替えたものになります。なので、個別のxiは分からずとも、そのΣを計算することはできるわけです。
なので、xの平均値は「1~nの平均」であり、xの分散は「1^2~n^2の平均ーxの平均値の2乗」で計算することができます。
(2) 共分散とは、(x - xの平均値)×(y - yの平均値)の平均値のことです。yの平均と分散はxのそれらと全く同じなので、(1)の結果を使って共分散をごりごり計算していきます。すると、4の倍数ー4で割り切れない数 が分子に来るので絶対に0にならないことが示せます。
(3) 分散の平方根を「標準偏差」とよび、相関係数rは、「共分散÷xの標準偏差÷yの標準偏差」で計算されます。(1)(2)の結果を使って相関係数を計算してみると、xiyiのΣが残ってしまいます。ここでdi^2の和を取ってあげることで、xiyiのΣをnの式とdiの式で書くことができますので、代入しましょう。
(4) これは記述式のタイプだと回答が難しく、穴埋め式ならではの問題と言えます。
まず、最大値の方は簡単です。diが全部0ならrが最大値1になるのは一目瞭然です。
問題は、最小値の方です。穴埋め式故、xとyの関係が傾き-1の直線になる時にrの最小値が-1になるという知識があれば即答できますが、これを知らなかった場合に、xiyiのΣがいつ最小になるのかを調べるのは事実上不可能です。
答案では、相加相乗平均を手掛かりにして、xiyiが常に一定の時最小、でもそうはならないから、それに一番近そうな関係、xとyが逆相関の直線になっていればいいのでは、という連想ゲームでr=-1を導出しました。この結果を見たときに、「あ、rは-1と1の間の数だから最小値は-1なのは当たり前じゃん、で-1になるのは、右肩下がりの直線の時じゃん」と納得しました。
統計学の用語説明は、以下の記事に記載していますので良ければご覧ください。
<筆者の回答>
第3問
仰角の等しくなる点の軌跡を考える問題で、慶応の大好きな2次曲線が登場します。
仰角が等しいという条件から、g/PQ=h/APという条件が常に成り立ちます。この関係式が全ての出発点です。P(X,Y)とします。
(1) この関係式にx=T, y=0を代入してごりごり式変形しましょう。半径を答えるときに、絶対値を忘れがちなので要注意です。
[2/22追記]計算ミスがあったので差し替えました。
(2)y軸との交点が1つだけと言う事は、関係式にX=0を代入したときにできるYの2次方程式が重解を持つことになります。よって、判別式=0を利用しましょう。(え)については、この不等式を満たしていないと、判別式=0となる点がAしかなくなってA=Qとなり問題設定と合わなくなってしまいます。
(3) (2)と同様に、今度はY=0を代入してできるXの2次方程式が重解を持つ条件を考えればよいでしょう。
y^2の係数は常に正なので、x^2の係数の符号でCの形状が変化することになります。焦点を計算するときは、x軸y軸のどっちの上に乗っかっているかに注意します。直角双曲線とは、漸近線が直交する双曲線のことです。
<筆者の回答>
第4問
双曲線関数に接する円の中心の座標について考察する問題です。
この問題に登場するCは、「双曲線関数」と呼ばれる関数です。
あ、い:
双曲線関数と円が接する条件を考えるので、x=tでのy座標が等しい、x=tでの微分の値が等しいという2つの関係式を連立してX,Yを求めます。
う:
X(t)を微分すると、t=0の時にX'(t)は最小値1-rを取ることが分かります。よって、0<r≦1ならX(t)は単調増加、r>1ならX(t)は極小値を持つことが分かります。
え、お:
Y(t)を微分して増減を調べるとよいでしょう。相加相乗平均を利用するともっと簡単に答えを出せます。
か:
ここまででdX/dt, dY/dtを計算しているので、それらの比を取れば(か)が (e^t +e^-t)/2の2乗で書けることが分かります。あとは、Yの式を利用して、(e^t +e^-t)/2をYの式で求めることを考えます。
え~かで共通して、2次方程式を解く場面が登場し、解が2つでてきます。が、値を吟味してうまいこと片方を排除する必要があります。
<筆者の回答>