2021年も大学入試のシーズンがやってきました。
今回は、東北大学の理系数学に挑戦します。
<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)
1. 2次方程式の解の条件の図示(15分)
2. 三角形の面積比と関連した整数問題(10分)
3. 条件を満たす三角形・四角形の数え上げ(20分)
4. 3次関数と直線の交点に関する軌跡・通過領域の面積(30分)
6. テイラー展開を利用したeの近似値(25分)
<体感難易度>
1<2<5<6<3<4
平易な問題から、計算が面倒な問題まで相変わらずバラエティに富んだ出題ですね。第1問と第2問はおそらく失敗の許されない点取り問題であり、第3問は抜け漏れない数え上げが、第4問と第6問は計算力が要求されるセットですね。飛び抜けた難問はないかと思います。
<個別解説>
第1問
2次方程式の解の条件を図示する問題で、これは落としたらマズい問題だと思います。
結局ax^2+bx+1=0という方程式が正の実数解を持たない条件を調べていけばよく、aの符号や判別式に注意すればよいです。最後の図示では、境界を含むか含まないかにはくれぐれもご注意を。
<筆者の回答>
第2問
三角形の面積比と関連した整数問題です。面積比だけ考えればよいので、ベクトルが登場しません。。
(1) △PQRの周りにある3つの三角形の面積をくり抜けばOKでしょう。各々の面積は、辺の比の関係から求まります。
(2) (1)の結果を因数分解すると、1/2-a, 1/2-bの積が登場してまことに都合がいいです。
(3) (2)の結果から、S/Tが整数になるケースがS/T=3しかないことが分かるので、そうなるp,qを調べていきます。因数分解で積の形を作る、という整数問題の典型問題ですね。
<筆者の回答>
第3問
条件を満たす三角形・四角形を数え上げる問題です。
この手の問題は、頂点や辺などを一旦固定して考えると間違いがないです。
(1) 円周角の定理から、直角三角形になる場合は、辺の一つが必ず外接円の直径になります。直径を一旦固定したうえで三角形が何個作れるかを考え、その後に直径が何通りとれるかを考えればよいでしょう。
(2) 題意を満たす三角形を直接数えにくいので、余事象を考えるとよいでしょう。直角三角形は(1)で数えているので、二等辺三角形の個数を今度は数えます。この時は、頂角を固定すると考えやすいですが、直角二等辺三角形はダブルカウントになるので除外することを忘れずに。
(3) (*)を満たす四角形は、辺か対角線の少なくとも1本が外接円の直径になっています。そして、2本以上該当するときは対角線になる場合のみで、3本以上は起こりえません。
ダブルカウントを防ぐために、直径が1本になる場合と、2本になる場合とで場合分けして考えましょう。
<筆者の回答>
第4問
3次関数と直線の交点に関する軌跡・通過領域の面積を求める問題です。
(1) まず、lの式は一般にy=x+bと書くことができ、3次関数と連立してできる3次方程式の3つの解がP,Q,Rのx座標となります。Rのx座標が分かっているのでこの時点でbをaの式で書くことができ、そのままこの3次方程式を解けばP,Qの座標が求まり、Sの座標が求まります。
(2) (1)の結果を使ってaを消去すれば、Sがどんな曲線上にあるかは容易に分かります。問題は、aの範囲に制限があるので、Sの軌跡がその曲線の一部に限られる、という点です。この範囲まで答えなければ大幅減点でしょう。
aの範囲は、(1)の結果を使って大小を代数的に調べるのもよいですが、y=x^3 - 3xのグラフを使って視覚的に調べれば一目瞭然に分かります。
(3) これは図形のイメージが必要ですね。
lが、y=x-2からy=x+2まで平行にグングン上に上がっていく状況を考えると、Pはy=x^3 -2x上を動き、Sは(2)の軌跡上を動いていくことが分かります。
このイメージをすることで、ざっくり線分PSの通過領域が把握できるわけです。今回の問題の場合は面積が求まればよいので、精密な図示は不要です。
あとは、お馴染みの積分計算によって面積が計算できますが、そこそこ面倒です。
<筆者の回答>
第5問
(1) O,A,Bが一直線上にある時、OBベクトルがOAベクトルの定数倍になっていることが必要十分です。これによりzが実数の時だと分かるのですが、O,A,Bがダブってはいけないという条件でz=0, z=1が除外されます。
(2) △OABの頂点のどれが頂角になっているかで場合分けして調べていきましょう。単純に「2辺の長さが等しい」という条件処理でOKです。ただし、(1)で調べた通り、zが実数の時はNGなので、実軸は除く必要があります。
(3) z=r(cosθ+isinθ)とおいてあげれば、△OABの面積がrとθの式で簡単に書けます。ここで、rはθの関数になるのですが、(2)の図を見ると複数候補が出てくることが分かります。とはいえ、面積を最大にしたいので、rが一番大きくなるように選んであげればよいです。
ここまでで面積をθだけの関数で書けたので、あとは微分して増減を調べればお終いです。
<筆者の回答>
第6問
テイラー展開を利用したネイピア数eの近似値を考察する問題です。
(1)で証明する式は、いわゆる「テイラー展開」と呼ばれるものです。証明には数学的帰納法を使うとよいですが、途中ゴツイ部分積分が要求されます。
(2) 不等式評価の問題で、毎度のこと発想が必要になります。
積分を挟んでいる左右の式の分母が(n+1)!になっていたり、aの指数がn+1になっていたりするので、どうやら(a-x)^nの積分はそのまま実行しそうです。すると邪魔なのは指数関数のe^xですね。だったら、「面倒くさいから定数で置き換えて積分から追い出しちゃえ!!」と考えればOKです。
(3) (1)(2)の結果を使ってa=1を代入すると、eとΣの差がe/(n+1)!で抑えられることが分かります。これが0.001未満になるようなnを見つけてくればOKです。
かなり小さいnの値で、小数点以下3桁の精度でeの近似値を調べれられたことになります。
<筆者の回答>