ちょぴん先生の数学部屋

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平成の一橋後期数学 -2006年-

このシリーズでは、平成の一橋数学の後期入試の問題を1年ずつ遡って解いていきます。

 

一橋の後期は文系向けにも関わらず数Ⅲが出題範囲に含まれています。なので、どうしても数Ⅲの知識が不可避な問題については「※数Ⅲ必須」とコメントを付けておきます。数Ⅲやってないよ、という文系志望の方は、このコメントのない問題を中心に見ておけばよいと思います。

 

12回目の今回は2006年になります。

 

第1問

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整数の組数を調べる問題です。

 

(1) k=n-2lとなるので、lを決めてあげれば制限なくkの値が一意に定まります(kを先に決めると、lが整数にならない場合が出てきて面倒になってしまいます)。なので、kが0以上になるようなlの個数を数えてあげればOKです。

 

nの偶奇によって場合分けが発生することに注意です。

 

(2) (1)がヒントとして利用できることに気付けたでしょうか?正直「nが6の倍数」という縛りと(1)の誘導がなければ、この(2)はかなりの難問になったと思います。

 

nが6の倍数という縛りがあるのでn=6Nとできて、rを移行すると3(2N-r)=p+2qという形になります。rを固定してあげれば、(1)の結果をそのまま利用できる形になります。

 

rの偶奇によって場合分けが発生することに注意して、rを固定した場合の(p,q)の個数を調べ、最後に全部足し上げてしまえばOKです。

 

<筆者の解答>

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第2問

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不等式の成立条件と、2変数関数の最小値を求める問題です。

 

(1)大きく分けて2通りの解き方があります。

 

1つ目はいわゆる「定数分離」という方法です。

x=0のときは不等式が自明なのでx>0のケースを考えると、4x^2 +1/x ≧kとなるので、kがf(x)=4x^2+1/xの最小値以下であればOKです。f(x)の最小値の求め方は、素直に微分して求める方法(本解答)と、テクニカルですが相加相乗平均を使う方法(別解1)があります。後者は、経験がないと思いつきにくいと思います。

 

2つ目は、g(x)=4x^3 -kx +1の最小値が0以上になるようなkの条件を求める方法です(別解2で紹介)。

 

(2) これも先ほどの第1問と同様、(1)の誘導無しではかなりの難問になっただろう問題です。

 

(1)の結果から4x^3 +1 ≧3xが分かったので、分子のx^3とy^3にこの不等式を適用してあげると、なんと約分によってx+y+1がキレイさっぱり消えて定数になってしまいます。

 

関数を下から評価することができ、等号成立するx,yがバッチリ存在しているので、この定数がそのまま最小値になります。

 

あまりの誘導の華麗さに感動するとともに、うまく設計された問題だなぁと感じました。

 

<筆者の解答>

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第3問

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円に内接する四角形を題材にしたベクトルの問題です。

 

(1)円に内接する四角形の向かい合った角度の合計が必ず180°になる性質を使って、余弦定理で求めることができます。

 

(2)  (1)の結果を使うと、正弦定理から円の半径rが求まります。

 

そうすると正弦定理から円周角が、円周角の定理から中心角が求まるので、半径の情報も相まって、OA, OC, ODなどのO始点の内積が計算しやすい状況になります。これを変形することで、A始点の内積を計算していきましょう。

 

(3) (2)でAO・AC, AO・ADを調べているので、与式にAC, ADをかけてあげればx,yの連立方程式が出来てx,yが求まりそうです。その際AC・ADの内積が必要なので、それを(2)と同じ要領で計算する必要があります。

 

<筆者の解答>

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第4問

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積分を含んだ関数の増減を考察する問題です。

 

(1) (2)を見据えて、aのままの状態でh(x)の積分計算をやってしまいましょう。絶対値を含んだ積分になるので、中身の符号がどうなるかをaの値で場合分けして考える必要があります。

 

(2) ここでもaの値によって場合分けを行いますが、(2)の場合は2次関数の軸の位置による場合分けも生じるので、より細かな議論が必要になります。

 

<筆者の解答>

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第5問

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確率の問題です。

 

(1)1回目に引いたカードが、2回目以降に1回以下しか出ない確率を計算すればOKです。

 

(2)nが2以上というのがキーポイントになります。

 

k=3の場合は容易に確率が3/4以上だと分かりますし、k=4の場合はX=1/nと変換すればXの3次関数になるので、微分によって確立の取りうる値の範囲を調べることができます。

 

(3) k≧5の場合もk=4と考え方は同じで、X=1/nと変換したうえで微分をすることで確率の取りうる値を調べることができます。取りうる値の下限が1/2より下になるので題意が示せる、という格好です。

 

※答案では「積の微分」という数Ⅲ知識を使っていますが、それはt=1-Xとさらに変数変換することで避けることも出来ます。

 

<筆者の解答>

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