このシリーズでは、平成の九大理系数学の後期入試の問題を1年ずつ遡って解いていきます。
11回目の今回は2009年になります。
第1問
(筆者注:fn(x)の積分区間は、正しくはe^(-x)~1)
関数列に関する問題です。
(1)積分の中にlogがあるのが邪魔なので、s=log(1/t)と変数変換するとスッキリします。
(2) (1)の結果を積分して戻してあげればよいでしょう。その際、fn(0)=0に注意します。
(3) fn(x)の式を一度部分積分して、fn-1(x)の形が出るように計算しましょう。
(4) 求める極限をαnとして、(3)の漸化式に代入すれば結果は出てきます。ただ、この解法だと果たしてαnがちゃんと収束しているかどうかはチェックできてないので、若干危ういです。
なので、より厳密に解くなら、(3)の漸化式からfn(x)の一般項を求めてから極限を飛ばすとよいです。
ちなみに、fn(x)の式で自然数nを複素数sに変えてx→∞とした関数を「ガンマ関数」と呼びます。今回の問題の結果がn!だったので、ガンマ関数は「階乗の一般化(複素数への拡張)」と解釈することができます。
<筆者の解答>
第2問
ベクトル列に関する問題です。
(1) Aの条件から、Aに関する行列の積の式が作れるので、成分を比較して地道に解いていきます。問題文の条件で、(1,v),(1w)をAの固有ベクトル、p,qをAの固有値と呼びます。
(2) いわゆる行列の対角化の作業です。Bを計算すると、固有値p,qを対角成分に持つ行列になります。
(3) (2)の結果を使うと(sn, tn)の一般項を求めることができ、等比数列の形になります。
このとき無限等比級数が収束するには、公比の絶対値が1未満になるか、係数が0になるか、が条件です。場合分けして条件を調べる必要があります。
<筆者の解答>
第3問
四面体の体積を計算する、ベクトルの問題です。
(1) Pの座標は(-p, p+1, p+2), Qの座標は(0,q,0)とかけるので、PQを最小にするp,qを求めていきましょう。
(2) (1)のPをSと見なして考えると、pがsの式で書けます。さらに平面P0Q0Cの式を求めることで法線ベクトルが求まります。そこから、垂線上の点Rがパラメータ表示できるので、平面P0Q0C上にRがあるという条件からパラメータを確定させます。
(3) 図形的にイメージがしにくい難問です。(2)までの知見をフル活用すると、△DEP0を底面とする2つの四面体の面積について考えればよいと分かります。その底面からの高さを求めるのに、(2)の結果が役に立ちます。
<筆者の解答>
第4問
確率の問題です。
(1)2秒間での座標の推移を図に起こして考えるとよいでしょう。
(2)T秒間に最も遅く動くとx=Tに到達し、最も遠くまで動くとx=2Tに到達するので、T秒後のjはこの範囲に収まることが分かります。
ただ、これだけだと途中の座標値を「隈なく」jが取れるかが明確でないので、それを帰納法で証明する必要があります。
(3)今回の試行は、x=2nからx=2n+2に移動するのに、A「+1ずつ動く」とB「一気に+2動く」の2通りの動き方があります。それぞれの動き方がa回,b回発生するときに、Tと2nがどうなるかを調べましょう。
<筆者の解答>
第5問
積分を含んだ不等式評価の問題です。
(1) g'(x)=f(x)に注意して、問題文の微分を愚直に計算していきます。
(2) (1)の結果を積分してあげると証明できます。
(3) y(x)-z(x)を実際に計算してあげましょう。
(4) h(x)は、定義からh(x)≧0は明らかで、(3)の結果から、a→0, b=1としたときのf(x)の不等式を見事に満たしています。そこから、(2)の結果を使ってh(x)を評価できるので、はさみうちに持ち込みましょう。
<筆者の解答>