このシリーズでは、平成の東京工業大学の後期日程の数学の問題を解いていきます。
11回目の今回は2001年です。
第1問
tan11に関する問題で、全体的に難問だと思います。
(1)正直試験場では捨てるのが正解です。というのも、方針自体は中辺ー左辺、右辺ー中辺がそれぞれ正になることを確かめるだけなのですが、この不等式の近似精度があまりに高くて、πを小数点以下7桁までの精度で評価しないと、両者とも正だと示せません。
(2)以降はこの不等式ありきで解いていくので、この(1)を証明せずとも解き進めることができます。
(2) (1)の不等式を利用すると、11ラジアンは単位円で第4象限の位置に、22ラジアンは単位円で第3象限の位置に来ることが分かります。
(3) 最初、a2m+1 - a2m-1の符号を調べるという方針で攻めようとしましたが途中で頓挫してしまいました。なので、a2m-1自体を直接評価する方針で攻めることにしました。
(1)の不等式を使って11(2m-1)を評価していくのですが、ここで「πの整数倍を各辺から引く」というのがポイントになります。
tanxは周期πの周期関数で、かつ-π/2<x<π/2で連続で単調増加な関数です。なので、11(2m-1)が実質-π/2<x<π/2のどこに相当するのかが把握できればいいことになります。
この知見を使うと、1≦m≦354 (2m+1=709)の範囲では、-π/2<αm<11(2m-1)- πの整数倍<βm<π/2と評価出来て、ここからtanαm<a2m-1<tanβmと評価できます。あとは、βm<αm+1が言えてしまえば、a2m-1<a2m+1が言えます。
(4) a711<0, a709>0が分かるので、この部分で単調増加性が崩れています。
<筆者の解答>
第2問
三角形の面積を最大化し、その三角形の外接円半径を求める問題です。
(1)問題文を正しく把握することが肝要です。
問題文にあるA0, B0は、
「a,bを固定したときにAとBを色々動かしたら、A0, B0の位置で△ABCの面積が最大になった」
という意味です。「△A0B0Cの面積を、a,bを動かして最大にしていく」という趣旨の問題ではないことに注意しましょう。
(そうしてしまうと、aとbがいくらでも大きくできて、三角形の面積も際限なく大きくなってしまいます)
ということで、A(acosα, asinα), B(bcosβ, bsinβ)とおいて、△ABCの面積を表現して、「a,bを固定して、α, βを動かす」状況を考えます。
Sの式の絶対値の中身をFとして、Fの最大最小を考えていきますが、基本的な考え方は「片方の文字を固定して、もう片方の文字を動かす=予選決勝法」となります。が、Fが最大になるβをαの式でうまく書けない(逆もしかり)、という問題が発生してしまい、高校数学の範囲では行き詰まってしまいます。
ということで、申し訳ありません。大学数学の「偏微分」の知識を使わせてください。偏微分とは「片方の文字を固定して、もう一方の文字で微分する」という作業の事です。
このとき、Fが最大値・最小値になる必要条件は、dF/dα=0かつdF/dβ=0となることです。この2つの条件式がα=3π/4、β=4π/3で成立するので、ここからa,bの値が求まります。
これだけだと、Fが最大なのか最小なのかの判断ができません。そのときは、Fをαで2階微分した値とβで2階微分した値が両方0以下(つまりαについてもβについても上に凸になる)になっていれば、最大値だと言えます。
(2) 外接円半径を求めるので、使う道具は正弦定理です。
∠A0CB0をベクトルの内積から計算し、それとA0B0を計算してあげれば求まるのですが、とにかく計算が面倒極まりないです。ミスなく最後まで解き切るのはかなりしんどいです。
<筆者の解答>