ちょぴん先生の数学部屋

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平成の東大理系後期数学 -2003年-

このシリーズでは、東京大学の後期の数学の問題を解いていきます。

 

5回目の今回は2003年です。

 

第1問

 

体積に絡んだ極限の計算問題です。

 

(1)これは典型問題です。各辺の差を微分して単調増加性を使えばいいんでした。当然ながら(2)を解くにあたってのヒントになる不等式です。

 

(2)

(a)回転体を偶数個に分割するので、左からn番目の立体はan≦x≦π/2の部分になります。こうでないと左右対称になりませんので。こうすることで、問題文の条件を積分の方程式の形で記述できます。

n→∞とすると、2n等分された体積は0になるので、an→π/2とならないと辻褄が合いません。このことに注意して、上記の方程式を変形して極限を求めます。最終的にはsinx/x→1 (x→0)を使うことになります。

 

(b) こちらも同様に方程式を作って変形していきますが、残念ながら(a)のようにsinx/x→1 (x→0)を使うだけだとうまくいきません。ここで(1)の出番です。

 

(1)を使ってsin2bnをbnの多項式で評価して、はさみうちが使える形に持ち込みます。

 

<筆者の解答>

 

第2問

 

双曲線と非常に近い位置にある格子点を見つける問題です。

 

(1) lについての帰納法で証明すればよいでしょう。(2)以降を見越してA=Al, B=Blと番号をつけてしまいます。

 

(2)格子点(X,Y)と直線y=√pxとの距離は|X√p-Y|/√(p+1)と書けます。分子が(1)を彷彿とさせる形をしていて、X=Al, Y=-Blと書けると嬉しいですね。

 

ここで(1)で調べたAl, Blをさらに深堀して考察すると、最初のいくつかの項を調べることで、lが奇数の時に、A2m-1は正で単調増加、B2m-1は負で単調減少となることがわかります(実際に帰納法によってこの事実は証明できます)。さらにA2m-1は単に単調増加するだけでなく、無限大に発散していくことも分かります。

 

となれば、A2m-1≧Nとなるようにmを決めてあげれば、「x座標がN以上」という条件をクリアできそうです。

 

X=A2m-1, Y=-B2m-1としてあげると、距離の分子は(1)の結果から(0より大きく1より小さい数)^(2m-1)とかけ、0に収束するものが分子に来たので、mを大きくしていけばいくらでも距離を小さくできると分かります。

 

なので、「A2m-1≧N」「(√p-[√p] )^(2m-1)/√(p+1)≦1/N」を同時に満たすような、十分大きなmを取ることができ、そんなmに対してQm(A2m-1, -B2m-1)が条件に合致する格子点となります。

 

どことなく考え方がε-δ論法に似ています。

 

(3) 双曲線の漸近線がy=√pxとなっていることに気付ければ(2)の結果が使えそうだと分かります。

 

(2)で求めた格子点Qmはこの直線の下側にあり、mが大きくなればなるほど直線との距離は縮まっていきます。一方、双曲線の方もx座標が大きくなればなるほど漸近線y=√pxに近づいていきます。

 

なので、双曲線と直線x=A2m-1との交点Pm(要は、Qmの真上にある双曲線の点)が、今回考える点Pなのではないかと想像できます。

 

PmQm≦1/Mとなるような十分大きなmが見つけられることを言いたいのですが、そのままではうまくいきません。ここで間に、漸近線と直線x=A2m-1との交点Rmを挟んであげて、より計算しやすいPmRmとQmRmがいくらでも小さくできることを言えば目的は達成できます。

 

(4) (3)の結果はPm(A2m-1, √(pA2m-1^2 +q) ), Qm(A2m-1, -B2m-1)というものでした。ここにp=5, q=2を代入して、PmQm≦1/100となるようなmを見つけてきます。

 

そんなmは直接求めることができないので、m=1,2,3・・と具体的に値を代入して調べていくことになります。

 

<筆者の解答>

 

第3問

 

数列の不等式評価の問題です。

 

(1)初っ端から考えにくい問題です。

試しにx0=0, x1=α(>0)としてx2以降を計算していくと、全部αの倍数でかつ単調増加しそうだと分かります。

 

これを帰納法で証明できれば勝ちです。そうなると、xm=1なので、m-1番目以前の項は全て0<xn<1を満たしていないと辻褄が合いませんし、xm=1から逆算すればαが求まることになり、x2以降も一意に全部決まります。

 

(2) (1)の一般化で、考え方は(1)と全く同じです。



(3)これは、xk+1>(c-1)xkという不等式が思いつければ勝ち、思いつかなければ詰みという発想力だけの問題と言えます。

 

この不等式を証明できれば、r=1/(c-1)で決まりとなります。

 

<筆者の解答>