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平成の京府医大数学 -2011年-

このシリーズでは、京都府立医科大学の数学の問題を解いていきます。

 

12回目の今回は2011年です。

第1問

(訂正:(3)は2/2ではなく3/2)

 

1次変換に関する問題です。

 

(1)与式全体にAをかけてあげればよいでしょう。

 

(2) (1)の結果を使うと(A^2+A+E)OP=0となりますが、ここから即座にA^2+A+E=0と言えないのが行列の式の難しい所です。

 

ここは、(3)を見据えてAを成分でおくことでQとRの座標を計算して、それが与式を満たすようにa+d, ad-bcの値を調べていくことにしましょう。ケーリーハミルトンの定理からa+d=-1, ad-bc=1ならA^2+A+E=0が言えます。

 

(3)PQ=√5も、△PQR=3/2も、(2)までの結果を使うとaとcだけの方程式で表現できます。ここからa,cを求めて、a+d=-1, ad-bc=1からb,dも決まっていきます。

 

<筆者の解答>

 

第2問

 

立方体の切り口に関する問題です。

最初に1頂点が原点、その頂点が端点となる辺たちが座標軸となるように座標を設定しておくと考えやすくなります。

 

(1) (a,0,0), (0,b,0), (0,0,c)を通る面で立方体を切断した結果、長さがp,q,rの三角形Tができたとしたときに、それが鋭角三角形になることを確かめます。

 

鋭角三角形になる条件は「(1つの辺)^2< 残り2辺の2乗の和」が3辺で全部成立することです。

 

(2) (1)とは逆にp,q,rが分かればそれに応じてa,b,c(つまりどの面で立方体を切ればよいか)が一意に決まることを言えばよいでしょう。

 

(3)正五角形の1つの内角は108°で鈍角となります。(1)の結果から、三角形で切り出してしまうと108°は切り出せないので、必然的に、最初の断面は四角形である必要があります。

最初の断面が108°, 72°の内角をもつ台形になるように切断し、その後に5辺の長さが等しくなるように2つの平面で切断する、とすればよいと思います。どこまで書くのが妥当なんですかね・・・・

 

<筆者の解答>

 

第3問

 

面積の差に関する問題です。

 

(1)普通に原始関数が分かるタイプの積分なので、難しくありません。

 

(2)S1(a)とS2(a)の式を調べてから微分していきます。積分の中身のxに積分区間を突っ込んでいきますが、積分の中身にもaが入っているので「積の微分」になることに注意します。

 

(3) x^2+2x>x^2となることを利用すればよいです。

 

(4)f(a)は、a→+0のときに0に収束し、(2)の結果から、そこから単調増加して極大値を迎え、以降は単調減少していきます。ということで、f(a)<0となる瞬間があることが言えてしまえばf(a)=0つまりS1(a)=S2(a)となるaが存在することになります。

 

ということで、f(a)<0となる瞬間があることの証明に注力していきますが、その際に役に立つのが(3)の評価式です。これを利用することでa→∞とするとf(a)が-∞に発散することが分かります。

 

<筆者の解答>

 

第4問

 

図形に関する極限の計算問題です。

 

(1)f(x)=cosx-(1-x^2/2)として、微分で増減を調べればよいでしょう。

 

(2)ここに登場する直角三角形がすべて相似であることに気付けるかがポイントです。そうすると、相似比がcos2π/nとなるので、rn=(cos2π/n)^nとなります。

 

このままだと1^∞の形の不定形になってしまうのですが、このタイプの極限は基本的に「ネイピア数(1+1/n)^n→e」が使えないかを考えるのが定石です。答案では直接計算していますが、(1)の結果を使ってはさみうちに持ち込んでもよいです。

 

(3)Ak-1Akは、(2)での考察からsin2π/n×(cos2π/n)^(k-1)という等比数列の形になります。しかし、この問題は難問です。

 

等比数列の和だからといってLnを直接計算しても、極限がうまく計算できないのです。

直接計算しにくいとなれば、はさみうちを考えたいですがどうやってLnを不等式評価すればよいか?この発想が非常に難しいです。

 

n≧5なら0<cos2π/n<1なので、(cos2π/n)^n<(cos2π/n)^(k-1)<1と評価できます。こう評価すれば、(2)の結果から左辺の極限が1だと分かっているので、はさみうちに持ち込めそうです。

こうすることで、結局Lnの極限値は、nsin2π/nの極限値と等しくなります。これはsinx/x→1の形のお馴染みのタイプです。

 

<筆者の解答>