ちょぴん先生の数学部屋

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平成の京府医大数学 -1998年-

このシリーズでは、京都府立医科大学の数学の問題を解いていきます。

 

25回目の今回は1998年です。

(問題文を提供して下さったせがわさん、ありがとうございます!)

第1問

恒等式に関する問題です。完全に発想力勝負の問題と言えます。

 

np-1次の係数は〇〇で、np-2次の係数は〇〇で~それが一致するから~とやろうとすると完全に詰んでしまいます。

 

改めて考えてみると、np-1次~np-n次の係数は一致さえしていればいいので、それぞれの具体的な値には興味がないわけです。ということは、係数がよく分からないnp-1次~np-n次の項を消しちゃえばいいのでは?と思いつけば半分以上攻略出来たも同然です。

 

要するに、h(x) = { f(x) }^p - { g(x) }^pを考えてあげれば、np-1次~np-n次の項は全部消えて、h(x)はnp-n-1次以下の多項式となると分かります。

 

さらにh(x)は因数分解によって、h(x)={ f(x)-g(x) }×(np-n次式)とできます。

ここで、f(x)=g(x)じゃないと矛盾が発生することを証明する背理法を考えていきます。

 

f(x)=g(x)が恒等式にならないとき、f(x)-g(x)は0次以上の多項式になるので、{ f(x)-g(x) }×(np-n次式)はnp-n次以上の多項式となります。

 

最初に確かめたようにh(x)はnp-n-1次以下でしたので、これで矛盾しました。

 

このように「次数に着目して背理法で考える」という発想ができたか否かが明暗を分けるピーキーな問題でした。

 

<筆者の解答>

 

第2問

点の軌跡と面積を考える問題です。

 

(1)P(pcosθ, psinθ), Q(-qcosθ, qsinθ)とパラメータ表示して考えると見通しが良くなります。

PQ=2によってp,q,θの関係式が求まり、Mの座標(X,Y)がp,q,θの式で書けるので、逆に解いてあげることでp,qをX,Yで書くことができます。それらをPQ=2に代入すればよいです。

X,Yの範囲は、図を実際に描くことで判明します。

 

(2)典型的な積分計算ですが、何回か置換をすると見通しが良くなります。

 

<筆者の解答>

 

第3問

フィボナッチ数列を使って、黄金比の累乗の小数部分の極限を調べる問題です。

 

(1)典型的な3項間漸化式で、フィボナッチ数列のそれです。特性方程式x^2-x-1=0の解α,β(α<β)を使って等比数列の形に直していきます。このとき、βは黄金比となります。

 

(2)結局β^nの小数部分を考えるので、(1)の結果を使って考えたいです。(1)から、β^n =an -α^nとなり、anはもちろん整数で、α^nは絶対値が常に1未満です。

なので、α^nが正になるか負になるかで状況が変わり、それはnの偶奇によって決まるということになります。

 

<筆者の解答>

 

第4問

3次方程式の解の挙動と、点の軌道に関する問題です。

この問題の背景には、「万有引力の法則」「ケプラーの法則」といった天体の運動の話があります。どういうことかは後述します。

 

(1) F(x)=x^3 +12xが単調増加で、値域が実数全体であることを示せば、グラフから解が1個だけあることは一目瞭然です。

 

(2) f(t)の満たす式から、f'(t), f''(t)の符号を調べることで、f(t)の増減と凹凸を知ることができます。

 

(3)

(i)図を描けば、少し煩雑ではありますがSを計算でき(途中で(2)で調べたf(t)の方程式を利用して次数下げを行います)、結果h/24というtに依存しない値になります。

 

この結果はSを時間差hで割った値が、hによらずS/h=一定値になることを意味しています。S/hのことを「面積速度」と呼び(厳密にはh→0としたときの極限を考えます)、それが一定になっているので「面積速度一定の法則」を満たしていることになります。

 

面積速度一定の法則」と聞いて、物理を習った人はピンとくるかもしれません。天体の運動に関する法則「ケプラーの法則」の第2法則でしたね。

 

ということは、Pの動きは天体の軌道と見なせるので、この背景を知っていると、次の(ii)の定点が「Fなんじゃないか?」と想像できるというわけです。

 

(ii) Pの加速度はPの座標をtで2回微分することで計算できるので、そこからお目当ての直線ltの式を調べていきます(t=0だけ例外扱いすることに注意です)。

 

この時に(2)でf'(t)とf''(t)を調べていたのでltの式を簡単にできて、y切片が常に1になることが分かります。t=0のときはltはx=0となるのでやっぱりFを通ります。これで予想通り、ltはtによらずFを通ることが示せました。

 

Fは、Pの軌道となる放物線y=x^2/4の焦点となっています。ケプラーの法則によれば、「惑星は太陽を焦点とした楕円軌道を描く」んでした。とはいえ、それは惑星の速度が遅い場合で、速度が速い場合は太陽からの重力を振り切って、放物線や双曲線の軌道を描くことになります。いずれにせよ、「惑星は太陽を焦点とした2次曲線の軌道を描く」ことになります。

 

そして、万有引力の法則では、「惑星は、太陽から『太陽の方向へ』常に力を受ける」んでした。今回の(ii)の結果はまさにそれを表現しています。ltの向きが加速度の向きで、「加速度の向き=力の向き」というのがニュートン運動方程式の神髄でした。

 

以上のような背景が分かっていたので、(i)の結果を見た時点で、「(ii)の定点は、軌道の焦点、つまりFになっているはずだ」と予想できた、というわけです。

 

万有引力の法則やケプラーの法則については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご一読ください。

万有引力の法則から、ケプラーの法則を導く - ちょぴん先生の数学部屋 (hatenablog.com)

 

<筆者の解答>