2023年も大学入試のシーズンがやってきました。
今回は、日本医科大学の数学に挑戦します。
<概略> (カッコ内は解くのにかかった時間)
1. 放物線と確率の融合問題 (25分)
2. 2つの球面の交線 (55分)
3. 多項定理とΣ計算、極限計算 (40分)
4. 立体の体積(45分)
計165分
<体感難易度>
1<3≦2<4
昨年に比べても明らかに難化した印象です。特に第4問の体積の問題は、立体がイメージしにくく誘導もあまり丁寧ではないので解きにくいと思います。
第1問は確実に解き切って、第2・3問で部分点をできる限り稼ぐ、余裕があれば第4問に着手、そんなところでしょうかね。
<個別解説>
第1問
放物線と確率の融合問題です。
先んじてP,Qのx座標をp,q (p<q)として、解と係数の関係を利用してp+qとpqをa,b,kの式で表現しておくと見通しが良いです。
(1) PとQは原点になりえないので、△PQRが直角三角形になるとすれば∠R=90°となるしかありません。
そうなれば、内積=0の条件式からab=4であればよいと分かります。あとは、そうなる(a,b)の組の個数を調べればお終いです。
(2)△PQRがRP=RQの二等辺三角形になる条件は、p+q=0⇔k=a+bとなります。これと(1)の結果を組み合わせればkの値が求まります。
(3)p+q=0に加えて、辺の長さの比からb/2=q√3であれば△PQRは正三角形になりますね。あとは(2)と同様の考え方で解けます。
<筆者の回答>
第2問
2つの球面の交線に関する問題です。
(1)「πの法線ベクトル」「Eの中心Tの座標」の2つが分かればπの式が求まります。
S1, S2の中心をQ,Rとすると、前者についてはQRベクトルそのものであり、後者についてはEの半径rと合わせて三平方の定理を利用して求めることができます。
(2) (1)の結果でz=0とするだけです。
(3) lとmを実際にxy平面上に図示してあげればmの式が分かります。
(4)これは着眼点がやや難しい問題です。
Pの座標が(a,b,c)だとすると、△ABCの面積は(3)までの結果から簡単に求まるので、△ABCを底面としたときの高さ|c|が分かればVが計算できることになります。
よって、この問題は実質cの取りうる値の範囲を調べる問題となります。
さて、「Pが平面π上にある」「PT=rである」という2つの条件からa,b,cに関する関係式が2つ求まります。この2つの式からcの取りうる値の範囲を調べるのですが、どうするか?初見では、これにかなり悩んで時間を浪費してしまいました・・・
実は、この問題を言い換えてあげると「『cを固定したとき、2つの式を同時に満たすようなa,bが存在する。』そんなcの条件を求めよ」と同じです。
2つの関係式は、cを固定すると一方はab平面上の直線、もう一方はab平面上の円になります。
2つの式を同時に満たす(a,b)が存在するということは、この直線と円が交点を持つという事です。ここまで考えると、「直線と円の中心との距離≦円の半径」が考えるべき条件だと分かり、ここから無事cの取りうる値の範囲が求まります。
これでVの最小値とその時のPの座標が求まりますね。
<筆者の回答>
第3問
多項定理とΣ計算、極限計算の問題です。
(1)これはいわゆる「多項定理」の問題です。公式を覚えていれば瞬殺なのですが、あまりメジャーではないと思うので、解答では地道に解く方法を採用しています。
今回の式は、2次式がn+2個かけられたものになっています。この式を展開するときは、このn+2個の因数の各々から、2次の項、1次の項、定数の項を1つずつ選んでかけ合わせて、それらを最終的に足し上げることで出来上がります。
3次の項を作ろうと思ったら、(2次, 1次、定数)=(0個、3個、n-1個)か(2次, 1次、定数)=(1個、1個、n個)という組み合わせで選び出せばよさそうです。
あとは、それを選び方の場合の数だけ足し上げてあげればお終いです。
(2) ΣAkを地道に計算して極限を取るのが基本ですが、今回は極限だけ知りたいので少し楽をしましょう。
今回は分母が4次式で分子も4次式なので、分子の4次の係数だけ分かれば極限計算には十分です。
ΣAkを計算すると、Σk^3, Σk^2, Σk^1, Σk^0, が登場しますが、そのうちΣk^3以外の3つは計算しても3次式以下なので、極限の結果には影響しません。ということで、実質Σk^3だけ計算すれば十分になります。
(3)Akの形から部分分数分解が思いつくところです。k+4を除けて先に1/(k+1)(k+2)を部分分数分解してあげて、展開してさらに各々に部分分数分解してあげると、2つの「途中が相殺される」タイプのシグマにできます。
(4)極限の計算問題で、これはなかなか慣れてないと難しいです。
極限を計算する数列をSnとすると、Snは積の要素だけで構成されているので、「対数を取って和の形に直して極限を取る」という方針は立つと思います。
このときに、区分求積法が使えるように分母分子で因数の個数を揃えて分解してあげるとよいでしょう。そうすると、分子については3n+1~3n+7が余るのですが、それはヒントを利用すると極限を取って消えてしまいます。
<筆者の回答>
第4問
立体の体積に関する問題です。立体のイメージが付きにくいので特に(3)が解きにくいです( (3)ができないと(4)以降は解けず、逆に(3)ができてしまえば(4)以降は簡単です)
(1)これは流石に教科書レベルで説明不要ですね。
(2) (a,b,0)=(1-u)OP+uOQ (0≦u≦1)の形であれば、(a,b,0)は線分PQ上にあります。成分比較することで、tとuの連立方程式にして、uを消去することでtを求めていきます。
tの候補が2種類出て来ますが、0≦u≦1の縛りがあるおかげで1つに絞れます。
(3)この問題最大の山場です。
△PQRを実際に図にしてみると直角三角形になっています。この直角三角形がスライドしていくことでKができています。
直角三角形を平面x=aで切ると、z軸に平行な線分になるので、この線分の長さがどうなるかを調べていくと、最終的にイにたどり着けそうです。
この長さは相似の関係からtとaの式で表せ、(2)の結果からこの線分のy座標もtとaの式で表せます。
これで線分の上端の軌跡が、tを使った媒介変数表示で求まりましたので、tを消去してzをyの式で表現しようとすればよいわけです。
すると、zの式が2種類求まるのですが、y=0のときz=0であることに注意すると1種類に絞れます。
(4) イをy=0からy=a^2まで積分すればS(a)が求まります。
(5) S(a)をa=0からa=1まで積分すればVが求まります。
<筆者の回答>